離婚しましょう、私達

光子

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27話 誰にも渡しません

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 ◇◇◇


「――リーゼは浮気者ですね」
「え?」

 ジークが帰宅し、ティアが部屋に戻った後、庭を散歩していた私に、フェルナンド様は声をかけた。

「私、浮気なんてしていませんけど」
「そうですか? 随分、聖女の幼馴染と仲良くしているみたいですが」
「ジーク? ジークはただの友達です」

 言い掛かりを付けてくると思えば、見当違いもいいところです。ジークが好きなのは、ティアなんだから。

「フェルナンド様も、ティアと一緒にお祭りに行くじゃないですか」
「あれは、ティアが貴女を誘おうとしていたのに、ジークと行くと言い出したからでしょう。だから俺が代わりに誘ったんです。聖女の望みを叶えるのは、俺の義務なので」
「そうなんですか?」

 全く気付かなかった。
 だって、小説ではフェルナンド様と一緒に行くから、そうなるものだとばかり思い込んでいた。考えてみたら、今までだって小説の内容が変わることはあったのにね。

 私とフェルナンド様が、未だに離婚していないように。

「あの幼馴染のような男が、貴女は好きなんですか?」

 一歩一歩、距離を詰められる。

「ですから、私は別にジークが好きなワケじゃありません。他に好きな人を作るなら、ちゃんと、離婚してからにしますから、安心して下さい」

「……はい?」

「離婚すれば、私が誰を好きになっても、気にならないでしょう? あれでしたら、今すぐにでも離婚しますか?」

 私が浮気することで、グリフィン公爵家の体裁が悪くなるのを気にしているのなら、離婚すればすむ話。そう思って提案したのだが、返ってきた答えは、以前と同じだった。

「離婚はしません」

(もう……何なのよ)

 当初はすぐ離婚出来ると思っていたのに、気付けば、半年も離婚出来ずに夫婦を続けている。それもこれも、フェルナンド様が拒むからなのに……!

「覚えていて下さい、貴女の夫は俺です。他の誰にも――貴女は渡しません」

「……っ」

 髪にキスされ、妖艶に微笑みながら告げられる言葉。
 微笑んでいるのに、怖くて、喉が詰まり、背筋が凍った。

「わ、私……本当に、浮気なんてしていませんから!」

「そうですか、なら良かった。これからもしないで下さいね、貴女は俺の妻なんですから」

 私達が夫婦であることは、フェルナンド様にとって一番嫌なことだったはずなのに、どうしてそんなに強調するの?

(私の夢は、普通に恋愛して、結婚して、幸せになること)

 離婚しないと、新しい恋も始まらない。
 この星祭りで、フェルナンド様はティアに想いを伝える。そしたら、私とも、離婚したくなるはずなの。だから――――私を見るフェルナンド様の目に、執着のような強い感情が見えたなんて、気の所為に決まってる。




 ◇◇◇



 星祭り当日――結婚生活六ヶ月十日目――


 私の格好は、アルルに頼んで、以前、市民に扮した時と同じ、楽な服装にしてもらった。

「リーゼ様、本当に市民の格好でいいんですか? 貴族の方は、専用の閲覧場所が用意されているって聞きますけど」
「いいの、そーゆー場所苦手だし、普通に屋台とか楽しみたいから」
「以前、平民と同じ扱いをされることを心底嫌がられていた気がするのですが」
「うん、えーーっとね、心の中では、平民みたいに過ごしてみるのも悪くないんじゃないかなー? って、思ってたの」

 皆の話を聞いてて分かった、昔のリーゼって、平民への見下し方がやばかったんだな、っと。

「あ、ティア!」
「リーゼ様……」

 玄関に向かう途中、同じく玄関に向かっていたティアと鉢合わせた。
 私と違い、ちゃんと綺麗に着飾っているティアの姿はとても素敵で可愛くて可憐で、流石は小説のヒロイン! と思わざるを得なかった!

「すっごく素敵! 可愛いよ、ティア」
「あ、ありがとう……ございます。リーゼ様に褒められるのが、一番……嬉しいです」

 頬を赤らめてそんな可愛いこと言うのも可愛い!

(褒められて一番嬉しいのはフェルナンド様でしょうに、嘘が上手ね、ティアは)

 玄関先には、既に、私を迎えに来たジークと、ティアを待っているフェルナンド様の姿があった。

「お待たせ……してしまい、申し訳ありませんでした、フェルナンド様」
「いいえ、そんなに待っていないので、気にしないで下さい、ティア」

(相変わらず、フェルナンド様は格好良いことで)

 ティアに似合うよう、正装されているフェルナンド様は、いつも以上に格好良くて、流石はヒロインの恋人! と思わざるを得なかった。

「おはようリーゼ、いつも可愛いけど、その姿も可愛いね」
「ありがとうジーク。ジークも素敵だよ」

 こういうことをすんなり言えちゃうのが、ジークの素敵なところだよね。
 一瞬、冷たいフェルナンド様の視線にゾクッとはしたけど、気にしないことにした。


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