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第一話
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「まさか、僕を殺そうとしているとは……。シェリル、君のことを信じていたのに……」
私は蔑んだ目をされている彼の顔を見て呆然としています。
彼はヴォルフ――この国の第二王子であり、私の婚約者でした。
土産に地元で一番美味いと評判のワインを持ってきましたら、私は拘束されて、ワインを調べられました。
そして、中には毒が入っていたらしく私はまさに今、王子暗殺の容疑者として扱われております。寝耳に水とはこのことです。
「殿下、進言しましたとおり……これこそ、彼女の正体でございます。同じ聖女として……エミルの愚行を止められずにいて責任を感じておりますわ……」
ヴォルフ殿下に寄り添いながら、彼に声をかけているのは親友のクレアです。
彼女は私と同じく聖女として共に国を守護してきた、いわば戦友とも呼べる存在でした。
そんな彼女から殿下が最近ワインにハマっていると聞いて私はこの土産を選んだのですが……。
これが私の正体とはどういうことでしょう……? それでは、まるで私が計画的に殿下のことを殺そうとしたみたいではないですか。苦楽を共にした親友にそんなことを言われるなんて……。
「殿下、これは何かの間違いです。聖女たる私が人を殺そうなどと――」
「ええい! 口を開くな! 前々から暗い奴だと思っていたが、まさか僕を殺そうとするとはな! だから僕は父上に婚約者はクレアが良いとあれほど言ったのだ!」
兵士たちは私を乱暴に引きずりながら、部屋から出そうとしました。
暗い奴……? クレアの方が良かった……? それならクレアと婚約すれば良かったじゃないですか……。
そのとき、私は二人の顔を見ます……。
――わ、笑ってる?
とっさに私は嫌な予感がしました。ま、まさか……、全部この仕打ちは二人が……?
「殿下! クレア! 私は何もしてません! 潔白です!」
「……お可哀想な殿下。でも大丈夫です。私があなたの側でずっと慰めて差し上げますわ」
クレアはさり気なく抱擁するように殿下に触れます……。殿下は彼女の手を握りしめ――二人の関係はすでにかなり親密なように見えました。
そして、私はその光景を目に焼き付けながら……薄暗い地下牢に投獄されてしまいます。
ああ、なぜこのような事になったのでしょう……? 私が何をしたというのです……?
疑問が沸々と湧き上がり、混乱と動揺がまったく収まらずにいました――。
――――――――――――――――――――
「……無様ね。シェリル……」
牢に入っている私を満足そうな笑みを浮かべながらクレアは見ています。
絶世の美女として名高い彼女の美しい容姿が今はとてつもなく醜く見える。感じられるのは私に対する猛烈な敵意でした。
「クレア……。全部あなたと殿下が仕込んだことなのですか?」
「さぁ、それはどうかしら……? ただ一つ言えることは私はあなたが憎たらしくて仕方がなかったってことよ」
無二の親友だと思っていた彼女から明かされたのは、限りない憎悪。私が彼女に対して憎まれることを知らずに行っていたとでも言うのでしょうか……。
「……あんたなら、良い引き立て役になるって思ったから友達になってやったのに。私のほうが人気があるのに……。国王は……、ちょっとばかり術が得意なあんたを気に入って、ヴォルフ殿下とあんたを婚約させた――!」
クレアは拳を震わせながら、いつもの穏やかな彼女からは想像できないような低い声で私への心情を吐露します。
彼女は確かにその美貌で人気者だったし、同じ聖女の私と比べても特別待遇を受けていました。護衛の数も三倍は居たし、この国の大臣が彼女用に大邸宅をプレゼントしたとも聞きました。
私はそもそも、考古学者の家系で古代術式の研究をしていた傍らに結界魔術なども覚えていたら、いつの間にか国で一番の使い手だと言われるまでになっていたのですが……。
見た目はというと残念ながらクレアほどの華やかさはありません。
ゆえに、聖女としての人気は圧倒的にクレアが上だったのでした。
この国には三人の聖女がおりまして、一人は老齢の皇后様で残りの二人は私とクレアです。
クレアは人懐っこい性格で彼女の方から良い友として共に頑張ろうと言ってくれました。人見知りで友人が少なかった私はそれが嬉しくて、彼女のことを親友だと思っていました。
だから、私は……国王陛下に実績を褒められて、ヴォルフ殿下との婚約を進められたことが、そこまで彼女のプライドを傷付けていたとはまったく想像していなかったのです――。
「いいことを教えてあげる。ヴォルフ殿下、私と婚約したの。当然の帰結よね」
「――っ!?」
勝ち誇ったようなクレアの一言で私の心は崩壊寸前となります……。
「もう一つ、朗報があるわ。あなた、国家追放されるらしいわよ。砂漠のど真ん中にだってさ。干からびて、ミイラになっちゃうでしょうね~。この私をバカにしたんだから、いい気味だわ」
そう言い残して、親友だった彼女は去っていきました。
砂漠の真ん中に国家追放――これは追放とは名ばかりの死刑ですね……。
「暑いのは苦手です……」
このまま死ぬなんて、到底受け入れられませんが、囚われた私はどうすることも出来ません。
そして、翌朝――私は砂漠へと追放されることとなったのでした――。
私は蔑んだ目をされている彼の顔を見て呆然としています。
彼はヴォルフ――この国の第二王子であり、私の婚約者でした。
土産に地元で一番美味いと評判のワインを持ってきましたら、私は拘束されて、ワインを調べられました。
そして、中には毒が入っていたらしく私はまさに今、王子暗殺の容疑者として扱われております。寝耳に水とはこのことです。
「殿下、進言しましたとおり……これこそ、彼女の正体でございます。同じ聖女として……エミルの愚行を止められずにいて責任を感じておりますわ……」
ヴォルフ殿下に寄り添いながら、彼に声をかけているのは親友のクレアです。
彼女は私と同じく聖女として共に国を守護してきた、いわば戦友とも呼べる存在でした。
そんな彼女から殿下が最近ワインにハマっていると聞いて私はこの土産を選んだのですが……。
これが私の正体とはどういうことでしょう……? それでは、まるで私が計画的に殿下のことを殺そうとしたみたいではないですか。苦楽を共にした親友にそんなことを言われるなんて……。
「殿下、これは何かの間違いです。聖女たる私が人を殺そうなどと――」
「ええい! 口を開くな! 前々から暗い奴だと思っていたが、まさか僕を殺そうとするとはな! だから僕は父上に婚約者はクレアが良いとあれほど言ったのだ!」
兵士たちは私を乱暴に引きずりながら、部屋から出そうとしました。
暗い奴……? クレアの方が良かった……? それならクレアと婚約すれば良かったじゃないですか……。
そのとき、私は二人の顔を見ます……。
――わ、笑ってる?
とっさに私は嫌な予感がしました。ま、まさか……、全部この仕打ちは二人が……?
「殿下! クレア! 私は何もしてません! 潔白です!」
「……お可哀想な殿下。でも大丈夫です。私があなたの側でずっと慰めて差し上げますわ」
クレアはさり気なく抱擁するように殿下に触れます……。殿下は彼女の手を握りしめ――二人の関係はすでにかなり親密なように見えました。
そして、私はその光景を目に焼き付けながら……薄暗い地下牢に投獄されてしまいます。
ああ、なぜこのような事になったのでしょう……? 私が何をしたというのです……?
疑問が沸々と湧き上がり、混乱と動揺がまったく収まらずにいました――。
――――――――――――――――――――
「……無様ね。シェリル……」
牢に入っている私を満足そうな笑みを浮かべながらクレアは見ています。
絶世の美女として名高い彼女の美しい容姿が今はとてつもなく醜く見える。感じられるのは私に対する猛烈な敵意でした。
「クレア……。全部あなたと殿下が仕込んだことなのですか?」
「さぁ、それはどうかしら……? ただ一つ言えることは私はあなたが憎たらしくて仕方がなかったってことよ」
無二の親友だと思っていた彼女から明かされたのは、限りない憎悪。私が彼女に対して憎まれることを知らずに行っていたとでも言うのでしょうか……。
「……あんたなら、良い引き立て役になるって思ったから友達になってやったのに。私のほうが人気があるのに……。国王は……、ちょっとばかり術が得意なあんたを気に入って、ヴォルフ殿下とあんたを婚約させた――!」
クレアは拳を震わせながら、いつもの穏やかな彼女からは想像できないような低い声で私への心情を吐露します。
彼女は確かにその美貌で人気者だったし、同じ聖女の私と比べても特別待遇を受けていました。護衛の数も三倍は居たし、この国の大臣が彼女用に大邸宅をプレゼントしたとも聞きました。
私はそもそも、考古学者の家系で古代術式の研究をしていた傍らに結界魔術なども覚えていたら、いつの間にか国で一番の使い手だと言われるまでになっていたのですが……。
見た目はというと残念ながらクレアほどの華やかさはありません。
ゆえに、聖女としての人気は圧倒的にクレアが上だったのでした。
この国には三人の聖女がおりまして、一人は老齢の皇后様で残りの二人は私とクレアです。
クレアは人懐っこい性格で彼女の方から良い友として共に頑張ろうと言ってくれました。人見知りで友人が少なかった私はそれが嬉しくて、彼女のことを親友だと思っていました。
だから、私は……国王陛下に実績を褒められて、ヴォルフ殿下との婚約を進められたことが、そこまで彼女のプライドを傷付けていたとはまったく想像していなかったのです――。
「いいことを教えてあげる。ヴォルフ殿下、私と婚約したの。当然の帰結よね」
「――っ!?」
勝ち誇ったようなクレアの一言で私の心は崩壊寸前となります……。
「もう一つ、朗報があるわ。あなた、国家追放されるらしいわよ。砂漠のど真ん中にだってさ。干からびて、ミイラになっちゃうでしょうね~。この私をバカにしたんだから、いい気味だわ」
そう言い残して、親友だった彼女は去っていきました。
砂漠の真ん中に国家追放――これは追放とは名ばかりの死刑ですね……。
「暑いのは苦手です……」
このまま死ぬなんて、到底受け入れられませんが、囚われた私はどうすることも出来ません。
そして、翌朝――私は砂漠へと追放されることとなったのでした――。
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