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緑LEDは点めつする(3)
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朝の早い時間に学校にいるのは、校長先生、教頭先生、あとは用務員さんくらいで、先生たちはわたしたちが登校するのと同じ時間くらいにやってくる。
「あ、山口先生。おはようございます」
「あら、おはよう。どうしたの?」
山口先生は、国彩小学校の教師ではないため、職員室に机はない。いつも、理科室のとなりの理科準備室に常駐している。
担任ももたない。授業もしない。となれば、学校の先生たちから異端の目で見られても仕方ない。山口先生が言うには、小学校の教員免許を持っていないから、授業は教えられないらしい。
その代わり、お休みの先生がいると、自習時間の付き添いをしたり、給食の準備の手伝いをしたりしている。学校の運営にかかわることはできないけれど、お手伝いはできると言っていた。
「昨日、理科室に下敷きを忘れてしまって。多分、机の中に入れっぱなしだと思うんですよね」
「わかったわ。今、理科室を開けるね」
山口先生のその言葉に、リュウジくんが首をかしげた。
「理科室。いつから鍵をかけるようになったんですか?」
「ああ、あれよ。うさぎの事件があってからよ。そもそも理科室って危険なものが多いのよね。薬品もあるし、アルコールランプなんかもあるからね。もちろん戸棚にも鍵をかけているけれども、あの事件があってから、教室にも鍵をかけるようにしたのよ。やっぱり、何かあってからでは遅いでしょう?」
わたしたちはその言葉に納得する。理科室には危険なものが多いのは、理科室を最初に使用したときに担任の先生から教えてもらった。
だから、絶対に教室内を走らない。戸棚の前で遊ばない。ガスの元栓はしめる。家庭科室と理科室は、各教室の中でも、先生たちが神経を使う場所。
「ちょっと待っててね。鍵を持ってくるから」
山口先生が理科準備室に消え、すぐさま手に鍵を手にして現れた。
「ん? 今日は、この小窓に暗幕が引いてあるね」
鍵穴に鍵を差して、くるりと回す。カチャッと鍵の開く音がひびいた。
ガラガラと引き戸になっているとびらを開ける。教室の前のとびらは先生が出入りするためのとびらだけど、今は特別。
「……」
とびらを開けた瞬間、先生がヒシッと固まったように見えた。まるで、正門の脇にある銅像みたいだ。
「先生、どうかしましたか?」
リュウジくんはわたしをかばうようにして、理科室へと入る。
「やられた……」
山口先生の悔しそうなつぶやきが聞こえてきた。
「何があったんですか?」
わたしも背伸びをして、リュウジくんの肩越しに理科室をのぞき込む。
そこはまるで、クリスマスのイルミネーションのように、キラキラと光っていた。
理科室の床の上に、きれいに緑色の電飾が並んでいる。それがピカピカと瞬いているのだ。
怖くはないけど、怖い。きれいだけど、怖い。
「イチカ。下敷き、ボクがとってくるよ。イチカはここにいて。先生は、これ、写真に撮っておいてください」
「あ、うん」
教室が緑色に点めつしている。変な気分。
きれいなんだけど、それを見ていると心がふわっとどこかへ行ってしまうような、そんな気持ちになった。
「はい、イチカ。机の中に下敷き、あったよ」
リュウジくんの声で、わたしの心が自分の場所に返ってきた。
「ここは、先生が片づけるから。あなたたちは教室に戻りなさい」
理科室はいまだに緑色の世界を作っている。ピカッと緑色になって、ピカッと消える。
暗幕のカーテンがこうやって輝く光を、外にもれるのをふせいでいたのだろう。とびらのガラス窓部分にも暗幕の小さなカーテンがあり、今はそれも引かれていた。そして廊下側の壁にある高窓と地窓にもカーテンが引かれている。
つまり、窓という窓にはすべて暗幕のカーテンが引かれていたのだ。
「あ、山口先生。おはようございます」
「あら、おはよう。どうしたの?」
山口先生は、国彩小学校の教師ではないため、職員室に机はない。いつも、理科室のとなりの理科準備室に常駐している。
担任ももたない。授業もしない。となれば、学校の先生たちから異端の目で見られても仕方ない。山口先生が言うには、小学校の教員免許を持っていないから、授業は教えられないらしい。
その代わり、お休みの先生がいると、自習時間の付き添いをしたり、給食の準備の手伝いをしたりしている。学校の運営にかかわることはできないけれど、お手伝いはできると言っていた。
「昨日、理科室に下敷きを忘れてしまって。多分、机の中に入れっぱなしだと思うんですよね」
「わかったわ。今、理科室を開けるね」
山口先生のその言葉に、リュウジくんが首をかしげた。
「理科室。いつから鍵をかけるようになったんですか?」
「ああ、あれよ。うさぎの事件があってからよ。そもそも理科室って危険なものが多いのよね。薬品もあるし、アルコールランプなんかもあるからね。もちろん戸棚にも鍵をかけているけれども、あの事件があってから、教室にも鍵をかけるようにしたのよ。やっぱり、何かあってからでは遅いでしょう?」
わたしたちはその言葉に納得する。理科室には危険なものが多いのは、理科室を最初に使用したときに担任の先生から教えてもらった。
だから、絶対に教室内を走らない。戸棚の前で遊ばない。ガスの元栓はしめる。家庭科室と理科室は、各教室の中でも、先生たちが神経を使う場所。
「ちょっと待っててね。鍵を持ってくるから」
山口先生が理科準備室に消え、すぐさま手に鍵を手にして現れた。
「ん? 今日は、この小窓に暗幕が引いてあるね」
鍵穴に鍵を差して、くるりと回す。カチャッと鍵の開く音がひびいた。
ガラガラと引き戸になっているとびらを開ける。教室の前のとびらは先生が出入りするためのとびらだけど、今は特別。
「……」
とびらを開けた瞬間、先生がヒシッと固まったように見えた。まるで、正門の脇にある銅像みたいだ。
「先生、どうかしましたか?」
リュウジくんはわたしをかばうようにして、理科室へと入る。
「やられた……」
山口先生の悔しそうなつぶやきが聞こえてきた。
「何があったんですか?」
わたしも背伸びをして、リュウジくんの肩越しに理科室をのぞき込む。
そこはまるで、クリスマスのイルミネーションのように、キラキラと光っていた。
理科室の床の上に、きれいに緑色の電飾が並んでいる。それがピカピカと瞬いているのだ。
怖くはないけど、怖い。きれいだけど、怖い。
「イチカ。下敷き、ボクがとってくるよ。イチカはここにいて。先生は、これ、写真に撮っておいてください」
「あ、うん」
教室が緑色に点めつしている。変な気分。
きれいなんだけど、それを見ていると心がふわっとどこかへ行ってしまうような、そんな気持ちになった。
「はい、イチカ。机の中に下敷き、あったよ」
リュウジくんの声で、わたしの心が自分の場所に返ってきた。
「ここは、先生が片づけるから。あなたたちは教室に戻りなさい」
理科室はいまだに緑色の世界を作っている。ピカッと緑色になって、ピカッと消える。
暗幕のカーテンがこうやって輝く光を、外にもれるのをふせいでいたのだろう。とびらのガラス窓部分にも暗幕の小さなカーテンがあり、今はそれも引かれていた。そして廊下側の壁にある高窓と地窓にもカーテンが引かれている。
つまり、窓という窓にはすべて暗幕のカーテンが引かれていたのだ。
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