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緑LEDは点めつする(4)
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理科室は暗幕におおわれ暗闇を作っていた。その中で、緑色のイルミネーションが明るく点めつする。
「先生……これって……」
リュウジ君が何かを言いかけたけれど、山口先生は「しっ」とくちびるの前に右手の人さし指を立てた。
「見たところ、これは緑色のLEDね。イルミネーションなどで使うもの。あそこのコンセントから電源を取っているだけ。何も、変なところはないわ」
山口先生の声色は明るい。きっとそれは、わたしを思ってのことなんだろう。
「なんで、緑色、なんでしょうね?」
つい、わたしは聞いていた。イルミネーションであれば、もっといろんな色を光らせればいいのに。
「なんでだろうね。緑色が好きだったとか、たまたま緑色のものしかなかったとか、かな? あまりにもきれいだから、私たちに見せたかったのね、きっと」
そういう考えは嫌いじゃない。山口先生の明るい言葉で、わたしの心もふわっと軽くなった。
きっと、これが有名税なのだ。
きっと、わたしよりも山口先生のほうが怖いと思っている。
「先生。写真、お願いします」
「あ、そうね……」
「先生……。元気、出してください」
思わずわたしはそう言っていた。すると山口先生は、きょとんと目をまん丸にしてから、くすりと笑う。
「先生は、大丈夫よ」
「ですが……ほら、教頭先生に報告をするんですよね?」
「うっ……そう、そうね……それが一番、辛いかな」
スラックスのポケットからスマートホンを取り出した山口先生は、リュウジくんにあれこれ言われながら、理科室内の写真を撮っていた。
「昨日の今日、かぁ……」
それが山口先生の本音なのだろう。
「先生、応援してますから」
わたしはほっぺたのとなりに両手で拳を作って脇を締め、ファイティングポーズと呼ばれる姿勢を作ってみた。
「そうですよ、先生。骨は拾いますから」
リュウジくんのひとことに、山口先生はぷっと噴き出す。
「そうやってあなたたちに励まされたんじゃ、先生もやるしかないね」
そこで、山口先生は腕時計に視線を落とす。
「あと十分で『朝の会』が始まるね。片づけは先生がしておくし。教頭先生の報告もしっかりとするから。あなたたちはもう戻りなさい」
「「はい」」
「このことは……」
「先生から言うまで、ボクたちから他の人に言うことはしません」
リュウジくんがビシッと口にした。
「榎木君のそういうところが、小学生らしくない」
そう言った山口先生は、からりと笑っていた。
理科室を山口先生に任せたわたしたちは、六年一組の教室に向かって廊下を歩いていた。
「なんでイルミネーションだったんだろうね」
それが素朴な疑問である。最初のうさぎの死体に見せかけたものから比べると、紫水晶を散らかして、イルミネーションを光らせるというのは、いたずらの難易度としては下がってきているようにも思える。
「なんでだろうね。でも、きっとそれにも意味はあると思うんだ」
そうつぶやいたリュウジくんの眼鏡はキラリと何かの光をとらえて、反射していた。
理科室へのいたずらに意味がある。意味があるとしたら、わたしたちを理科嫌いにさせることだろう。わたしたちが理科室へ足を向けないようにさせるため。そうとしか思えない。
だけど、怖かったのは最初のうさぎのぬいぐるみだけで、昨日の紫水晶、そして今日のイルミネーションは時間が経つと共に、気持ちは落ち着いてきた。
変ないたずらに、絶対に負けない。
わたしは固く心にそう誓った。
「先生……これって……」
リュウジ君が何かを言いかけたけれど、山口先生は「しっ」とくちびるの前に右手の人さし指を立てた。
「見たところ、これは緑色のLEDね。イルミネーションなどで使うもの。あそこのコンセントから電源を取っているだけ。何も、変なところはないわ」
山口先生の声色は明るい。きっとそれは、わたしを思ってのことなんだろう。
「なんで、緑色、なんでしょうね?」
つい、わたしは聞いていた。イルミネーションであれば、もっといろんな色を光らせればいいのに。
「なんでだろうね。緑色が好きだったとか、たまたま緑色のものしかなかったとか、かな? あまりにもきれいだから、私たちに見せたかったのね、きっと」
そういう考えは嫌いじゃない。山口先生の明るい言葉で、わたしの心もふわっと軽くなった。
きっと、これが有名税なのだ。
きっと、わたしよりも山口先生のほうが怖いと思っている。
「先生。写真、お願いします」
「あ、そうね……」
「先生……。元気、出してください」
思わずわたしはそう言っていた。すると山口先生は、きょとんと目をまん丸にしてから、くすりと笑う。
「先生は、大丈夫よ」
「ですが……ほら、教頭先生に報告をするんですよね?」
「うっ……そう、そうね……それが一番、辛いかな」
スラックスのポケットからスマートホンを取り出した山口先生は、リュウジくんにあれこれ言われながら、理科室内の写真を撮っていた。
「昨日の今日、かぁ……」
それが山口先生の本音なのだろう。
「先生、応援してますから」
わたしはほっぺたのとなりに両手で拳を作って脇を締め、ファイティングポーズと呼ばれる姿勢を作ってみた。
「そうですよ、先生。骨は拾いますから」
リュウジくんのひとことに、山口先生はぷっと噴き出す。
「そうやってあなたたちに励まされたんじゃ、先生もやるしかないね」
そこで、山口先生は腕時計に視線を落とす。
「あと十分で『朝の会』が始まるね。片づけは先生がしておくし。教頭先生の報告もしっかりとするから。あなたたちはもう戻りなさい」
「「はい」」
「このことは……」
「先生から言うまで、ボクたちから他の人に言うことはしません」
リュウジくんがビシッと口にした。
「榎木君のそういうところが、小学生らしくない」
そう言った山口先生は、からりと笑っていた。
理科室を山口先生に任せたわたしたちは、六年一組の教室に向かって廊下を歩いていた。
「なんでイルミネーションだったんだろうね」
それが素朴な疑問である。最初のうさぎの死体に見せかけたものから比べると、紫水晶を散らかして、イルミネーションを光らせるというのは、いたずらの難易度としては下がってきているようにも思える。
「なんでだろうね。でも、きっとそれにも意味はあると思うんだ」
そうつぶやいたリュウジくんの眼鏡はキラリと何かの光をとらえて、反射していた。
理科室へのいたずらに意味がある。意味があるとしたら、わたしたちを理科嫌いにさせることだろう。わたしたちが理科室へ足を向けないようにさせるため。そうとしか思えない。
だけど、怖かったのは最初のうさぎのぬいぐるみだけで、昨日の紫水晶、そして今日のイルミネーションは時間が経つと共に、気持ちは落ち着いてきた。
変ないたずらに、絶対に負けない。
わたしは固く心にそう誓った。
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