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1章
思い出
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く、くりす?
くりすー!?
え?
どういうこと?
もう勝ちそうだったじゃん。
勝ったんじゃなかったの!?
双眼鏡から見えるのは、バラバラに散らばった骨。
その周囲にはクリスの着ていたローブと、いつも持っていた杖が転がっている。
く、クリスが死んじゃった!
もともと死んでたけど。
アンデッドだったけど。
こんなに突然いなくなるなんて思わないじゃん!
クリスとの思い出が走馬灯のように脳裏をよぎる。
この世界に来てからはずっと一緒だった。
最初は怖かったけど、テイムしたら主と慕ってくれた。
最初の頃は私のために毎日買い出しに行ってくれた。
本当は凄いアンデッドなのに、私のためにパシリのようなことまでやってくれたのだ。
魔法だって教えてくれた。
半年くらい掛かったけれど、クリスがいなかったら絶対に魔法なんて使えなかった。
遊びにも付き合ってくれた。
一緒にトランプだって、オセロだってやった。
オセロはあんまりにも勝てないから、もうクリスとはやらないって逆切れしても怒らなかった。
一緒にダンジョンに潜ったり、ディノスをテイムするために旅だってした。
この前は私が音楽を聞きたがってたからって、練習したピアノを披露してくれた。
たった半年だけれど、たくさんの思い出があって、見た目は骨で、ローブと杖がなければ他のスケルトンと区別がつかないような相手だったけれど、私にとっては大切な家族で……。
「うぅ……うぐっ! うえぇ……!」
涙がボロボロと零れて、鼻水がズピズピと溢れる。
滲んだ視界、双眼鏡の先では、クリスのローブがパタパタとはためいて、骨がゆらゆらと揺れている。
ゆらゆら、ゆらゆら。
かたかた、かたかた。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ!
っひ!?
ほ、骨が蠢いてる!?
クリスの骨が、物凄い勢いで振動を始めた。
風に揺れてるなんてもんじゃない、不自然な震動。
そのまま骨は移動して、散らばっていたのが一か所に集まると、かちり、かちりと組み上がり、人の姿を形作る。
く、クリス!?
クリスが復活したー!?
倒したと油断していた人たちは、突然の事態に目を白黒させてパニックに陥っている。
クリスの手の先から黒い影のような物が飛び出して、一人の心臓を貫いた。
ぶぉん!
クリスの周囲に魔法陣が広がる。
巨大な魔法陣だ。
クリスは魔法陣を使う時は、省エネのために光らないようにしていたけれど、クリスの前方に、巨大な魔法陣が、眩しいくらいに光っている。
「ぐぎょおおおおおおおおお!」
びりびりと、ここにいると震動は伝わってこないのだけれど、大気を震わせるような雄叫びが響き、地面から大量の骨が溢れ、一つの塊を形作る。
出来上がったのは巨大な、
骨の巨人よりもずっと大きな恐竜のような骸骨。
見るからに強そうで、これなら負けないだろうと思えた。
けど、さっきそれで手痛い反撃を食らったから、油断しないように注視する。
すると……。
どっかーん!
案の定、というべきか、絶望的にも、というべきか、骨の恐竜を粉々に粉砕するレーザー光線のような物が放たれ、爆発した。
骨が視界いっぱいに広がる。
なんなんだろうか、あの光線は。
たぶん、あれがクリスを粉々にしたんだろうけど、さっきの回復魔法部隊なんて比較にならないほどの攻撃力だ。
クリスがまた死んでしまう。
慌てて双眼鏡を覗くが、クリスの姿が見つからない。
どこに行ったの……?
まさか骨の恐竜と一緒に粉々になってしまったのだろうか。
心配しながら双眼鏡を覗き込んでいると……。
「主よ!」
「っひ! ば、化けて出た!?」
「化けてはおらぬ。幻影魔法を使う余裕もない故な」
「く、クリス?」
「うむ、目くらましを作って逃げてきた」
目くらまし?
目くらましって、あの恐竜?
あれ、目くらましだったの?
「うむ、ただ図体がでかいだけのハリボテよ。目くらましにはなったであろう」
う、うん、まあ。
私もクリスが城に戻って来たの気付かなかったし。
でも、クリス粉々になってたよね?
大丈夫なの?
「大丈夫ではない。今も死霊魔法で無理やり骨を繋げているだけだ」
死んじゃうの?
「もともと死んでおる。放っておけばそのうち再生するが、死霊魔法を切ったらまともに動くことも出来なくなる。しばしの休養は必要であろう」
な、なるほど……。
「悪いが主よ、今回は勝てぬ。城を放棄して逃げてもらうぞ」
う、うん、それは良いけどさ。
戦場の方も、あの恐竜のせいで混乱しているようだ。
クリスがいなくなったことにも戸惑っている。
まあ、一度倒したと思ったら復活した相手だから、また倒したかもしれないと思っても復活してくるんじゃないかと思ってしまうのだろう。
実際、クリスはやられたわけじゃなく、ここにいるわけだし。
ってわけでまだ時間がある内に、さっさと逃げよう。
城に攻めて来られたら困るからね。
くりすー!?
え?
どういうこと?
もう勝ちそうだったじゃん。
勝ったんじゃなかったの!?
双眼鏡から見えるのは、バラバラに散らばった骨。
その周囲にはクリスの着ていたローブと、いつも持っていた杖が転がっている。
く、クリスが死んじゃった!
もともと死んでたけど。
アンデッドだったけど。
こんなに突然いなくなるなんて思わないじゃん!
クリスとの思い出が走馬灯のように脳裏をよぎる。
この世界に来てからはずっと一緒だった。
最初は怖かったけど、テイムしたら主と慕ってくれた。
最初の頃は私のために毎日買い出しに行ってくれた。
本当は凄いアンデッドなのに、私のためにパシリのようなことまでやってくれたのだ。
魔法だって教えてくれた。
半年くらい掛かったけれど、クリスがいなかったら絶対に魔法なんて使えなかった。
遊びにも付き合ってくれた。
一緒にトランプだって、オセロだってやった。
オセロはあんまりにも勝てないから、もうクリスとはやらないって逆切れしても怒らなかった。
一緒にダンジョンに潜ったり、ディノスをテイムするために旅だってした。
この前は私が音楽を聞きたがってたからって、練習したピアノを披露してくれた。
たった半年だけれど、たくさんの思い出があって、見た目は骨で、ローブと杖がなければ他のスケルトンと区別がつかないような相手だったけれど、私にとっては大切な家族で……。
「うぅ……うぐっ! うえぇ……!」
涙がボロボロと零れて、鼻水がズピズピと溢れる。
滲んだ視界、双眼鏡の先では、クリスのローブがパタパタとはためいて、骨がゆらゆらと揺れている。
ゆらゆら、ゆらゆら。
かたかた、かたかた。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ!
っひ!?
ほ、骨が蠢いてる!?
クリスの骨が、物凄い勢いで振動を始めた。
風に揺れてるなんてもんじゃない、不自然な震動。
そのまま骨は移動して、散らばっていたのが一か所に集まると、かちり、かちりと組み上がり、人の姿を形作る。
く、クリス!?
クリスが復活したー!?
倒したと油断していた人たちは、突然の事態に目を白黒させてパニックに陥っている。
クリスの手の先から黒い影のような物が飛び出して、一人の心臓を貫いた。
ぶぉん!
クリスの周囲に魔法陣が広がる。
巨大な魔法陣だ。
クリスは魔法陣を使う時は、省エネのために光らないようにしていたけれど、クリスの前方に、巨大な魔法陣が、眩しいくらいに光っている。
「ぐぎょおおおおおおおおお!」
びりびりと、ここにいると震動は伝わってこないのだけれど、大気を震わせるような雄叫びが響き、地面から大量の骨が溢れ、一つの塊を形作る。
出来上がったのは巨大な、
骨の巨人よりもずっと大きな恐竜のような骸骨。
見るからに強そうで、これなら負けないだろうと思えた。
けど、さっきそれで手痛い反撃を食らったから、油断しないように注視する。
すると……。
どっかーん!
案の定、というべきか、絶望的にも、というべきか、骨の恐竜を粉々に粉砕するレーザー光線のような物が放たれ、爆発した。
骨が視界いっぱいに広がる。
なんなんだろうか、あの光線は。
たぶん、あれがクリスを粉々にしたんだろうけど、さっきの回復魔法部隊なんて比較にならないほどの攻撃力だ。
クリスがまた死んでしまう。
慌てて双眼鏡を覗くが、クリスの姿が見つからない。
どこに行ったの……?
まさか骨の恐竜と一緒に粉々になってしまったのだろうか。
心配しながら双眼鏡を覗き込んでいると……。
「主よ!」
「っひ! ば、化けて出た!?」
「化けてはおらぬ。幻影魔法を使う余裕もない故な」
「く、クリス?」
「うむ、目くらましを作って逃げてきた」
目くらまし?
目くらましって、あの恐竜?
あれ、目くらましだったの?
「うむ、ただ図体がでかいだけのハリボテよ。目くらましにはなったであろう」
う、うん、まあ。
私もクリスが城に戻って来たの気付かなかったし。
でも、クリス粉々になってたよね?
大丈夫なの?
「大丈夫ではない。今も死霊魔法で無理やり骨を繋げているだけだ」
死んじゃうの?
「もともと死んでおる。放っておけばそのうち再生するが、死霊魔法を切ったらまともに動くことも出来なくなる。しばしの休養は必要であろう」
な、なるほど……。
「悪いが主よ、今回は勝てぬ。城を放棄して逃げてもらうぞ」
う、うん、それは良いけどさ。
戦場の方も、あの恐竜のせいで混乱しているようだ。
クリスがいなくなったことにも戸惑っている。
まあ、一度倒したと思ったら復活した相手だから、また倒したかもしれないと思っても復活してくるんじゃないかと思ってしまうのだろう。
実際、クリスはやられたわけじゃなく、ここにいるわけだし。
ってわけでまだ時間がある内に、さっさと逃げよう。
城に攻めて来られたら困るからね。
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