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1章

隠し通路

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 逃げるための準備をしようと思ったけど、その必要はなかった。

 部屋を出ると、スケルトンたちがたくさんの荷物を抱えていたのだ。

 城に残っていたスケルトンたちで前もって準備していたらしい。

 クリスが指示を出したのだろう。


 そして、逃亡用の隠し通路に向かう。

 驚いたことに、隠し通路は音楽室にあった。


 音楽室の真ん中で、クリスが杖でトントンと地面を叩くと、床板がゴゴゴゴと動いて階段が出てくる。

 すごいね、これ。
 どういう仕掛けなの?

 こういうのドラマとか映画ではよく見るけど、実際作ろうと思うと大変じゃない?

 電気じゃないよね?

 やっぱ魔法で動いてるんだろうね。


 楽器も持って行きたいけど、さすがに置いて行くことになった。

 あまり物を抱え過ぎても身動きがとりづらくなってしまうし、すでに荷物結構あるしね。

 楽器を持てる余裕がない。

 新しい拠点でもクリスがまた作ってくれるっていうから、それを楽しみにしておこう。

 ピアノとか、グランドピアノだから、持って行けるわけないしね。


 スケルトンたちと、あと何体かレイスも一緒について来た。

 総勢二十人くらいで階段を降りると、再びクリスが杖で地面をトントンと叩く。

 すると……。


 ゴゴゴゴゴ!


 床板は元通りに閉まり、地面から岩が持ち上がって床下の空間を完全に埋めた。

 すごい仕掛けだね、これ。

 視界が閉ざされ、真っ暗になったので、クリスが光魔法で先を照らしてくれる。

 私以外には暗闇でも見えてるんだけどね。


 ただ細いだけの、岩肌の道が続く。

 地下だからか少し肌寒くて、なんか不気味だね。

 周り、骸骨とか幽霊ばっかだしね。

 カタカタ、カタカタ、という骨の擦れる音が尚更気味悪く感じさせるよ。


 二時間か、三時間か。
 結構歩いたと思うけど、意外と疲れてない。

 LVが上がったからだろうか。

 ただ真っ直ぐなだけの道って、自分がちゃんと進んでるのか不安になるよね。

 なんか十分くらいごとに、壁に白い線が引かれていて、その上にちっちゃく数字が書いてある。

 その数字が増えて行ってるから進んでいることは分かるけど、それがなかったら永遠に辿り着かない道でも歩いてる気分になったかもしれない。

 壁の数字が十七になったところでクリスが立ち止まる。

 そこでトントン、と杖を地面に打ち付けると、ゴゴゴゴ、と天井が開き、階段が下りてくる。


「おおぉ!」


 すっごい仕掛け。

 魔法の世界って感じがするよ。

 クリスが最初に階段を上り、その後を私が続く。

 外に出ると、どこかの茂みだった。

 森ってほど大きくないけど、木々が連なった場所だ。

 時刻はまだ夕方の四時とか五時くらいだったと思うけど、空は暗いから城からそんなに離れていないだろう。

 どこ、ここ?
 城の北側?

 方位で言われても分かんないよ。

 村の方?
 村って、レニちゃんのいた村?

 城の正面側か。

 ってことは、今は敵の背後にいるってことになるのかな?
 まあ、背後にいるからって、この人数で奇襲掛けたりしないけどね。

 クリスも本調子じゃないし。

 それで、どこに逃げるの?
 スノーリーフ?

 ディノスのいるとこ?

 あ、ディノスは戦争に来たから今はあの町にはいないか。

 ディノスたちは大丈夫かな?

 他のスケルトンと違って、替えが利かないから死なないでほしいけど。

 一応、まだテイムのスキルで繋がってるから、死んではいないようだけど。


「我以外のアンデッドは日が落ちなければこの常闇から出ることは叶わぬ。主は我と二人で先行する」


 うん、それは良いけど、歩くの……?

 あの町、結構遠かったよね?


「心配する必要はない」


 そう言って、クリスに促されて茂みから出ると、そこには……。

 あー!

 馬だ!

 馬がいるー!


 しかもこの子、あの時の馬だよね!?

 なでなで。

 うふふ。
 もふもふー!


「どうして馬がいるの?」


 この子、うちの子じゃないし、レンタルする予定もなかったよね?


「戦争が始まるのだ、いざという時の足くらいは用意しておくものだ。まあ、我が主だけだから、我が背負っても良いのだがな」


 負ける時を想定して、準備しておいたらしい。

 こういうとこ、抜け目ないよね。

 戦争の準備は結構大変だったから、普通なら勝った時の事とか、勝つためのこととかばかり考えちゃうけど、ちゃんと負けた時のことも考えてる辺り、大人だなって思うよ。

 実際、クリスって私には考えられないくらい年上だろうし。

 私はクリスと一緒に馬に乗る。

 クリスのローブがいつもと違った。

 杖はちゃんと持って帰ってきたみたいだけど、ローブはあの攻撃で破けちゃってたんだよね。

 だからいつもと違うローブを着ている。

 まあ、デザインはほとんど変わんないから、違和感もないんだけどね。

 それじゃあ、スノーリーフに向けて出発だ!


 聖光教会の追っ手とか、来ないよね?
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