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にじゅうなな
しおりを挟む復讐したいだとか、ひどい目にあえばいいだとかそんなことは思わない。そんなことを思ってもどうしようもないし、意味もない。復讐は何も生まないとはよくいったものだと思う。ただ、爽快感はあるのだろう。自分のためにもなるのかもしれない。もし殿下が私を苛み、ひどい扱いをしていたのならその選択肢もあっただろう。だけど良くも悪くも殿下は私に無関心なだけだった。
ーーーいや、私の処刑を命じたのは殿下だったわね
そうしたら私は恨むべきなのだろうか。殿下を。でも私、恨みよりも怖い。
関わりたくない。だってこの人と関わったら私に未来はないのよ。
制限時間付き爆弾みたいなものだし、殿下は私の嫌な過去そのものだった。
「………シャルロット?」
「いえ、何でもありません」
答えて周りを見渡す。そうすると、美しい湖が見えてきて抱いた感情は歓喜より苦い思いだった。
ここに、シアときたのよね………。私ではなく、彼女と。私の思いを知っていたのに。じわじわと侵食する暗い思い。今すぐ逃げ出したいと思った。
私はふと隣を歩く、何も知らない殿下に聞いた。
「殿下は、あの娘が好きなのかと思っておりました」
聞くと、殿下は意外そうな顔をした。
ぐ、と拳を握る。帽子があることをいいことに軽く俯き、唇を引き結んだ。
「きみは前もそんなことを言っていたね」
「違うのですか?」
「前も言ったと思うけどーーー好きじゃないよ。いや、人間としては好きなのかな。でもそこに恋愛感情はない」
それなら、なぜ彼女をこの湖に連れて来たのですか。
既で出そうになった言葉を飲み込む。
代わりに私は視線をさまよわせて殿下に聞いた。いい機会だ。殿下が何を考えてるのか聞いてみたいと思う。
「この湖に彼女を連れてくる予定は無いのですか?」
殿下が訝しげな顔をする。だけど、すぐに首を振って答える。
「いや、ないよ」
「………そうですか」
まだ、前なのか。
私が知ってるのはあとからシアがこの湖に来ていたと。それだけだ。そのまま私たちは湖畔に向かって歩き、二人並んで湖を眺めた。
「……手を握ってもいい?」
突然殿下が聞いてきた。驚いてそちらを見れば、やはりというかなんと言うか。殿下の頬はうっすらと赤くなっていた。
断るべき、なのだろうか。ここは断っていいのかしら。少し悩んだ私はちらりと後ろを確認する。殿下の侍従も私の侍女も、すぐ近くに控えている。
そして私の侍女は今も私のための日傘をさしている途中だ。つまり、私たちの会話は丸聞こえ。
ここで殿下の言葉を断れば、厄介なことになりそうだ。人の口に戸は立てられない。この婚約は破棄することになるが、そこに私の瑕疵があってはならない。悪いのは王家であり、殿下側ということを明確にしないと、今後まともな人生は歩めない。貴族というのは外聞を酷く大切にする。
私はそっと殿下に手を差し伸べた。
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