30 / 66
にじゅーきゅう
しおりを挟む「しばらくは王城で寝泊まりして欲しい」
そう言った殿下に固まったのは数秒の話だった。すぐに我に返った私は慌てて殿下に言う。
「ど、どうしてですか?」
嫌な予感がした。殿下がこう言うということはきっと、私の身に危険があるからだろう。だけどなぜ、危険がある?それをどうやって把握したーーー?
あの後、殿下は一度帰宅したのち、私に登城するよう命を出した。陛下がなき今、暫定的とはいえ玉座についてるのは殿下ということになる。そんな彼の言葉を無視するわけにもいかず、私は固唾を飲んで登城し、謁見の間に通された訳だがーーー。
会ってすぐに言われた言葉がそれだった。
私の狼狽えた様子に、殿下が難しそうな顔をしながらため息をついた。
「………これは、まだ正式な発表ではないんだが」
そう前置きしてから殿下が私の方に視線を合わせた。苦悩が混ざった瞳だ。恐らく私に告げるかどうかも悩んだのだと思う。
「…………陛下は暗殺された」
ーーーやっぱり
言われて、抱いた感想は、やはり、というも思いだった。殿下が突然私を王城に住まわせるというのがまずおかしい。
そして陛下は特に持病持ちというわけでも、体が弱いというわけでもなかった。なのに突然亡くなったということに驚きが隠せなかった。
陛下が亡くなったということは国民に混乱を招きかねないため、まだ伏せられている。現状この事実を知っているのは私と、私のお父様、そして一部の大臣たちのみ。
「………それは、私が狙われるという可能性が、」
「ないとはいえない。……すまない、まだ犯人も見つかっていないんだ。せめてきみの安全が確保されるまでは城で寝泊まりして欲しい。ーーーいや、寝泊まりしてもらうことになる」
すなわち、それは命令。
私が断ることは出来ないのだと知った。私は少し黙った後、謁見の間に取り付けられている窓を見た。空はどんよりしていて曇天模様だ。いつ雨が降り出してもおかしくない。
「……わかりました。では、いつから王城に参ればよろしいでしょうか」
「……今日からだ」
「今日から?」
「そう。もう用意はできているから、シャーロットは僕の隣の部屋を使って。侍従と侍女は後で紹介する。とりあえず………ラーセル」
呼ぶと、傍らでずっと控えていた男がすっと前に踏み出した。
そして私の前まで歩くと恭しく頭を垂れる。
「ラーセルは腕がきく。しばらくの間は、ラーセルをつけるから。何かあったらラーセルに言って」
「わかり……ました」
目まぐるしく動く内実にさすがにたじろわずにはいられない。だって私はこんな展開を知らない。
44
あなたにおすすめの小説
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました
奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」
妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。
「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」
「ど、どうも……」
ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。
「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」
「分かりましたわ」
こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる