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ろくじゅーいち
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ヒールというのはどうしたって音が響く。
暗闇の中カツカツと音を鳴らしながら約束の場所に向かうと、既にフロックコートが待っていた。いや、待っていると言うよりこれはーーー。
「あれ?帰ってきたんだ。来ないかと思ってたよ」
「………随分優雅なお茶会ね」
ため息混じりに言うと、目の前のフロックコートは楽しそうにゆらりと揺れた。相変わらずフードを深く被っているせいでその顔は見えない。そしてフロックコートは私が戻ってこないと思っていたのだろう。先程までがらんとしていたパーティ会場のような場所で、ティータイムを楽しんでいたらしい。丸テーブルの上にはエクレア、マドレーヌ、クッキー、マフィン、マカロンといった甘そうな菓子があちこちに並んでいる。
フードが深すぎて顔が見えない状態でどうやって食べるのかしら………。そう思っていると、おもむろにフロックコートの裾がマカロンに伸びる。そして裾の中にマカロンが消えると、彼は腕をおり、菓子を口元に持っていく。
そして、ふわりとフードがめくれる。
顔が見える………!
そう思ってどきりとしたが、しかし次の瞬間またしても息を飲む。それは、フードの中が空洞だったからだ。真っ黒の空間には、何も無い。フロックコートの先がマカロンをその先に投げ込むと、まるで食べるようにマカロンは消えていった。
「それでそれで?ネックレスは手に入ったのかな」
「……これでいいかしら」
しゃらり、とドレスのポケットから赤いネックレスを取り出す。銀細工があしらわれた華奢なネックレスを差し出すと、フロックコートが動く。
「どれどれ?」
そして、突然フロックコートの裾が揺れ、気持ち悪いほどに伸びる。とてもではないが人間の腕の長さではない。
やっぱりこいつ…………。
私の手の上に置いてあるネックレスをフロックコートの裾が掠める。妙な感覚だった。衣擦れしかしない。なのにフロックコート野郎はネックレスを視認したらしかった。
「んー?」
「どうかしら。あなたがご所望のガーネットのネックレスよ」
「んー………んん~~~?
………いや、これ違うよね。確かに僕が指定したのはガーネットのネックレスだ。だけどこれさぁ……あの女の子のネックレスじゃないだろ」
やっぱり気づかれたか。
もとよりこうなることは予想済みだった。パキッと軽い音がして、そちらを見るとネックレスは既に破壊されていた。あっ、ちょっと。高かったのに。
………そう、このネックレスは私が露天で買った紛い物。だけど、本物の宝石を使ってるのでその価値は本物にも劣らない。
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