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ろくじゅーに
しおりを挟む『お嬢さん、おひとつどうだい?』
軽快な声をかけてきたのは露天の店主だった。どうやらものを買わせたいらしい。見れば、売りものは宝石類が多い。中にはルビーのネックレスもあった。
そこで、私はぴんときた。そうだ。本物のーーーミリニアが持っていたネックレスは壊されてしまった。それなら、違うものを買えばいい。幸いにして所持金にはまだ余裕がある。私は店主を見てから、言った。
『ありがとう、ではこれと…………』
そうして購入したのが、このガーネットのネックレスだ。ルビー以外にもあまたの宝石を取り付けたネックレスを売っているらしい。少し根は張ったが、悪くない買い物だったと思う。買ったばかりだと言うのに壊されてしまってはあの店主に合わせる顔がない。
呆気なく壊されたネックレスはそのまま硬質な床におち、軽い音を立てながら滑る。
それと同時に、フロックコートがゆらゆらと左右に揺れた。
「僕さぁ………。騙すことは好きでも、騙されるのって大っ嫌いなんだよねぇ………!」
なんてクズ発言。
ぶわりと暗い魔力が湧き上がる。なるほど、あれが彼の魔力ね………。
視認できるということは、それほど強い魔力ということ。魔力が強ければ強いほどそれは色となって現れ、彼の場合闇魔法が得意なのだろう。だからこそ、深淵のような色合いが漂う。
それに多分、アイツは私がネックレスを持ち帰れないってわかっていた。わかっていてこの話を持ち出したんだわ。………ということはアイツ。何か知ってる。
そう思いながら見ていると、フロックコートの先が揺れた。
………来る!
とはいえ、私の魔力はすっからんだ。まともに相手をしたら即殺されるのが見えている。私はもう一度ポケットを探り、露天で購入したもうひとつの品を取り出した。
水晶。それは何の変哲もない水晶だった。私が水晶を取り出したのを見て、フロックコートの手がピタリと止まる。そして、バカにしたような笑いが聞こえてきた。
「何それ。そんなので僕をどうにかできるとでも思ってるの?」
「そうね。出来ると思うわ」
「あっはは、馬鹿にしてんの!?」
怒りを滲ませながらフロックコートの先が伸びる。というか、それで攻撃するの!?
てっきり魔法系かと思ったけど………!
ここまできたら覚悟を決めなければならない。私はしっかりと水晶を持ったままフロックコートを見据える。フロックコートの、もはや黒い触手と化したそれが私を貫こうとする。
瞬間。フロックコートの先が水晶に触れた途端、ジュウウッ!と凄まじい音が響いた。まるで何かが焼ける音だ。それを聞き、ばっとこれまた凄まじい瞬発力でフロックコートの先がもどる。見れば、その裾は溶けかけているようだった。
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