すれ違いのその先に

ごろごろみかん。

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最後の夜 2

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「リーフェ、今日は少し違うね。酔ってるからかな」

「………分からない。でも、少し酔ってるのかも」

最初から、あなたに酔ってる。そんなことを言ったらどうなるだろうと思って、そんな陳腐なセリフを思いついた自分に苦笑する。
レイルは相変わらず太陽の光が反射した海面のようにキラキラした瞳で、私のまぶたにキスを落とした。やがてその唇がゆっくりと落ちてきて、私のものに重ねた。
啄くように舌が私の下唇に触れるから、私は控えめな手つきでレイルの首筋に触れた。サラサラとしていて、やはりきめ細かい。
レイルはやっぱり綺麗だ。とても同じ人間とは思えない神秘的な美しさがある。リネンのような金糸の髪は右耳にかかっていて、その耳には国を継承するものの証として国家が刻まれたピアスを嵌められている。
どこか冷たそうに見えて落ち着いて見えるレイルがピアスを開けているのは、結構驚いたものだ。私は彼の首筋をそっと撫でると、レイルを少しだけ引き離した。

「リーフェ?どうかした?」

レイルは優しい。すぐに唇を離して私を見る。私は、その言葉を口にするのはかなり勇気のいることだったけれど、最後だから。最後だからと、その言葉を理由にして何とか口にした。唇にキスをされたら、舌を絡めるキスをしたら口内の怪我に気づかれてしまう。きっと優しいレイルは気にしてくれるだろう。だけど私はそれよりも早くレイルに抱かれたかった。自分の傷一つでこの行為を中断したくなかった。

「レイル………あの、もう、して……」

それだけで私が何を言いたいか理解したのだろう。だけど眉をしかめたレイルは、すぐに私の頬にキスを落とした。

「分かったよ、愛しい人。俺はリーフェにはとことん弱いんだ。そう言われたら、いてもたってもいられないくらいにはね。だけど、リーフェ。まだいれない。今いれたら辛いのはリーフェだから。だから………少しだけ我慢してくれる?」

そう言いながらレイルは私の首筋に唇を落とし、軽く吸った。ぴくりと体がはねる。レイルの手がするすると足を撫で、膝を撫で、太ももに触れる。レイルの手は熱かった。

「んっ………うん。大丈夫、だから」

何を我慢するのかよく分からないままに言うと、レイルは少し笑って「ありがとう」と私の胸元に吸い付いた。吸いつかれた後に少し舐められて体がはねる。その弱い刺激に、私は弱い。目を開けるといつもは冷たそうに見える切れ長の瞳が見えて、しかも彼は私の胸元をぺろぺりと舐めていて、頭が沸騰する。未だにこの行為には慣れない。

「んっ、や、レイ………っ」

「ん。ごめんね、でもほんっと、どうしようかな。毎度の事ながら時間が足りないと思うんだよね。こうやってリーフェを不安にさせちゃうくらいだし?やっぱり無理を押してでも休暇作るか………」

レイルが私の薄布を軽く押し下げる。それだけで胸が衣服から零れて、自分の視界にも入ってきた。それに羞恥心を抱く暇もなく、レイルはかぷりと胸の先に吸い付いてきた。ピリリとした快感が駆け巡ってきて足がはねる。声が漏れる。おさえようがない。

「んっ………ぁっ………あぁ、やッ………ぅ、んん…………ッ」

「ん、可愛い。本当、どこをとっても可愛いから困る。ねぇ、リーフェ。今日は朝まで一緒にいようか。昨日、少しは区切りついたんだよね。だから明日は少しゆっくりしてても大丈夫。というか何がなんでもゆっくりする。ここ最近は働き詰めだったし、俺が休暇とってもテオバルトも文句は言わないだろ」

乳頭を口内に含んで、吸って、すいついて、思うように触れるレイルに私は何とか言葉を返そうとする。だけどそれは震えて上手く声にならなかった。

「テオッバル、ト、さ………?」

「………今のは俺が悪かったけど。だけど抱かれてる最中にほかの男の名前呼ぶのは禁止ね」

そう言ったレイルの声は、いつもより少し低くて掠れていた。その声音に背筋がぞくりとする。
レイルの声は男性にしては少し高い。甘めな雰囲気があって、柔らかくて、優しい。見た目が冷たそうに見えて怜悧そうに見えるからこそ、その声の優しさと柔らかさにギャップを抱く。
レイルが言うと、不意にがばりと足を開かれた。いきなりの事に驚く。

「きゃっ………!?」

「あーあ、この前俺が着けた跡、すっかり落ちたね。これは思った以上に最悪だな………やっぱ無理を押してでも休めばよかった。目的と理由が混ざっちゃったんだな。何やってんだろ」

レイルが嫌そうにぼやく。私はレイルがなんの話しをしているか分からず、彼を見上げた。
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