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胡蝶蘭の花束
離縁を提案する。
ここに至るまで、とても沢山考えた。
だけど私の至らない頭ではこれ以上の方法を見つけるのは難しかった。
最初は私が不貞を働いて強制的に離縁をしていただくべきかとも思った。
そうすれば、レイル様は何の呵責もなく愛する人と結ばれるから。私が離縁を提案すれば、きっとレイル様は引き止めてくださるだろう。
彼は優しい。きっと、自分の何がいけなかったのか、足りなかったのか。そう尋ねてくださるだろう。レイル様は私にとっていい夫であろうとしてくださるから。
きっと、彼は誠意を持って尽くしてくれる。
だけど。だからこそ、それじゃダメなのだ。だからそれ以外の方法を、と思ったのだけれど他の方法も上手くいくとは言いにくいものばかりだった。ただでさえ能力の足らない私が誰にも相談せずに一人で上手くやるなんて無理のある話なのだ。すぎた考えは持たない方がいい。私は王太子妃で、公人なのだから。自分のとった行動がどう影響してくるかを知らなければならな。
万が一私の不貞で離縁となった場合、迷惑を被るのは私だけではない。
私の生家である伯爵家にも当然迷惑をかけてしまう。
私の婚姻の時、幸せになれるようにとまじないを組んでくれたお母様。何か困ったことがあったらすぐに頼るようにと少しばかりの涙目になったお父様。
いつもは口が悪いけれどその時だけは「幸せになれ」と仰ってくれたお兄様。
私は彼らを巻き込みたくなかった。私で足りることであれば、何でもする。何でもしよう。それが彼にできる、私の精一杯の恩返しだ。
だけど、家族は巻き込んではならない。
あの人たちを不幸に陥れるなど、私の身勝手でしていいことではない。
そうなると、穏便に離縁するのがいいだろうと思った。
すこし考えて、ヴィヴィアナ様に会いに行って彼女を説得し、第二妃に迎え入れるのもどうかと思った。
だけどそれでは完全体な愛の形ではないだろう。絵本で見る幸せの形は、1人の王子様に1人のお姫様と相場は決まっている。であれば、第一妃の私は不要だ。
要らない悪役。愛を誓う2人を引き裂く嫌な役。それが私に課せられた役目。
きっと、ヴィヴィアナ様は私を恨んでいる。憎んでいるだろう。何よりも大切な人を奪われて,彼女には怒る資格がある。
レイル様だって、私を恨みはせずとも空しくはあるだろう。彼は優しいからきっと私を憎んだりはしない。きっと、我慢しているだけ。
彼の気持ちに思いを馳せた。
ーーー本当に好きな女性は地下牢で、好きでもない女性を抱く。
それは、とても辛いことなのだろうと思った。私は、レイル様が好きだ。幼い時より彼に憧れと、敬愛を抱いていた。この婚姻は私にとって思ってもみない話だった。すぎた話なのだ。できすぎた話。私には、もったいなかったのだ。彼と、結婚するだなんて。
好きだから。愛しているから。お慕いしているからこそ。
レイル様には、彼には。
心からの笑顔を浮かべて欲しいーーー。本当に愛する方と幸せになって、幸せを感じて欲しい。そう思うのは私のわがままだ。自分に課せられた妃の役目を果たそうとせず、自分の願いを遂げようとする私の、生涯最大のワガママ。自己満足だということも、押し付けがましいことも理解している。
だけど、それでも私はレイル様に笑っていて欲しかった。そのために私に出来ることがあるのであれば、なんだってするに決まっている。
ヴィヴィアナ様のことを思うと未だに複雑ではあるけれど。だけどそれは私が口出しすることではない。
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