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俺が、怖い? 2
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私の話など聞いていないかのようにレイル様が呆然とした声でつぶやく。本当に驚いているのかレイル様とは視線も合わなかった。
どうして驚いているのだろう。愛していると叫ぶように言っていたのは彼なのに。私は、少し困惑しつつもレイル様を見た。
「レイル様、ご安心くださいませ。私は、お二人の味方です。確かに最初は驚きましたし………悲しくもありましたが、けれどレイル様からいただいた毎日はとても幸福でした。それをお返しする………いえ、そのお礼をさせていただけるのですから。私は、喜んでおります」
余計なことが口からぺらぺらとこぼれ落ちる。心にもないことを。本当は悲しくて辛くて、ショックだったのに。なのに今の私はまるで心から二人の仲を賛同するような発言をしている。
わかってる。これは下心だ。最後くらいレイル様にいい女だと思われたくて言っている、ただの見栄。本当はそんなこと思っていないのに。なのに私の口はペラペラとまるで決められたセリフをなぞるように動いていく。
「私は実家に戻って私なりの幸せというものを探してみようと思います、ですからレイル様は」
「なるほどね」
不意にレイル様が私の長話を遮った。それと同時に彼は立ち上がり、私から視線を外す。
その張り詰めたような空気にどきりとする。
レイル様の声音は感情が乗っていなく、少し怖い。私は、不安になりながらもレイル様を見た。
………怒らせてしまった?
余計なことを言いすぎたかもしれない。
出すぎた真似だったかもしれない。
でも、この話をしないと何も進まないのだ。何も変わらない。押し付けがましいかもしれない。お節介かもしれない。それでも、私は。これが一番いい、最善だと思ったのだ。
レイル様はやはり私の方を見ずに呟いた。
「どうりで昨日からリーフェの様子がおかしいわけだ。そんなくだらない勘違いをしてるんだから」
「くだっ………!………え?勘違、い………?」
くだらないと一言で切り捨てられて思わず立ち上がりかけた私は、しかしその次に続いた言葉に思わず言葉を失った。
レイル様はじっとどこか遠くーーー窓の外を見るようにしていたが、不意に私に向かって微笑みかけた。その笑みは優しいのに、どこか冷たくてぞくりとした。
「レイル………様?」
「なぁに。リーフェ。やだな、様、とか。俺言ったよね。そういう余計なものはいらないしその口調だってそう。リーフェは何を考えているの?俺から離れて、実家に帰って、リーフェの幸せを探す?じゃあリーフェの幸せって何?リーフェは何があれば幸せなのかな」
「レイル様…………?」
どこか様子のおかしいレイル様に思わず後ずさる。だけどそれを見たレイル様が僅かに瞳を細めるから、それだけで私はまるで猛禽類に睨まれたかのように動けなくなった。
かつん、と音がしてレイル様が近づく。息を飲んでそれ見ていると、そっと、本当にそっと。レイル様は私の頬に触れた。彼の長く細い指が私の輪郭をゆっくりとなぞる。ぶわりと産毛がたつような感覚に陥った。
「俺がほかの女をすき………ね。この際相手が誰かはどうでもいい。問題は、リーフェがそれを信じてるってこと」
「あの…………」
「俺が、怖い?」
レイル様の夏の青空のような瞳は、底が見えなくてどこか怖かった。何をいえばいいか分からない。
どうして驚いているのだろう。愛していると叫ぶように言っていたのは彼なのに。私は、少し困惑しつつもレイル様を見た。
「レイル様、ご安心くださいませ。私は、お二人の味方です。確かに最初は驚きましたし………悲しくもありましたが、けれどレイル様からいただいた毎日はとても幸福でした。それをお返しする………いえ、そのお礼をさせていただけるのですから。私は、喜んでおります」
余計なことが口からぺらぺらとこぼれ落ちる。心にもないことを。本当は悲しくて辛くて、ショックだったのに。なのに今の私はまるで心から二人の仲を賛同するような発言をしている。
わかってる。これは下心だ。最後くらいレイル様にいい女だと思われたくて言っている、ただの見栄。本当はそんなこと思っていないのに。なのに私の口はペラペラとまるで決められたセリフをなぞるように動いていく。
「私は実家に戻って私なりの幸せというものを探してみようと思います、ですからレイル様は」
「なるほどね」
不意にレイル様が私の長話を遮った。それと同時に彼は立ち上がり、私から視線を外す。
その張り詰めたような空気にどきりとする。
レイル様の声音は感情が乗っていなく、少し怖い。私は、不安になりながらもレイル様を見た。
………怒らせてしまった?
余計なことを言いすぎたかもしれない。
出すぎた真似だったかもしれない。
でも、この話をしないと何も進まないのだ。何も変わらない。押し付けがましいかもしれない。お節介かもしれない。それでも、私は。これが一番いい、最善だと思ったのだ。
レイル様はやはり私の方を見ずに呟いた。
「どうりで昨日からリーフェの様子がおかしいわけだ。そんなくだらない勘違いをしてるんだから」
「くだっ………!………え?勘違、い………?」
くだらないと一言で切り捨てられて思わず立ち上がりかけた私は、しかしその次に続いた言葉に思わず言葉を失った。
レイル様はじっとどこか遠くーーー窓の外を見るようにしていたが、不意に私に向かって微笑みかけた。その笑みは優しいのに、どこか冷たくてぞくりとした。
「レイル………様?」
「なぁに。リーフェ。やだな、様、とか。俺言ったよね。そういう余計なものはいらないしその口調だってそう。リーフェは何を考えているの?俺から離れて、実家に帰って、リーフェの幸せを探す?じゃあリーフェの幸せって何?リーフェは何があれば幸せなのかな」
「レイル様…………?」
どこか様子のおかしいレイル様に思わず後ずさる。だけどそれを見たレイル様が僅かに瞳を細めるから、それだけで私はまるで猛禽類に睨まれたかのように動けなくなった。
かつん、と音がしてレイル様が近づく。息を飲んでそれ見ていると、そっと、本当にそっと。レイル様は私の頬に触れた。彼の長く細い指が私の輪郭をゆっくりとなぞる。ぶわりと産毛がたつような感覚に陥った。
「俺がほかの女をすき………ね。この際相手が誰かはどうでもいい。問題は、リーフェがそれを信じてるってこと」
「あの…………」
「俺が、怖い?」
レイル様の夏の青空のような瞳は、底が見えなくてどこか怖かった。何をいえばいいか分からない。
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