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3.伯爵令嬢リンシアは共同戦線を張る
13話:誇りなさい
翌日、帰国の挨拶をするためにマリア先生の研究室を訪れると、彼女はいつものように椅子に座り、猫を膝に乗せていた。猫は、私を見ると「にゃあん」と鳴いた。まるで祝ってくれているようだわ……と思いながら、結果を報告する。それに、マリア先生は満足気に頷いた。
「よい結果を得られましたね、リンシア」
「ありがとうございます、マリア先生のおかげですわ」
本心からそう答えると、彼女はにっこり笑うだけだった。それから、彼女は「あら」と何かに気がついたように私を見る。
「リンシア。私がなぜ、ルーズヴェルトさんをあなたに勧めたのか分かりましたか?」
「え?あ、はっ……」
ルーズヴェルト卿の名前に、思わず戸惑った。狼狽える私に、全てを見透かすかのようにマリア先生が微笑んだ。
「彼、エルフでしょう。黙っていて欲しいと言われましたが……もう、あなたも知ったのでしょう?」
……なるほど。
エルドラシア魔法学院に到着した初日、マリア先生と何か話していると思ったら、それを伝えていたのね……。つまり、マリア先生は早い段階で彼がエルフだったことを知っていた、というわけだ。いつ知ったのかしら?気になった私は、そのまま彼女に尋ねた。
すると、マリア先生はトントン、とモノクルを指で示した。
「これは、精霊を視認する魔道具なんです」
「……えっ!?」
「去年開発したものなのですが……これをつけていると老眼が酷くなるのですよ。ですから封印していたのですが、最近改良化に成功しましてね。つけていたわけです」
「……それで見えていたのですか?あの、ルーズヴェルト卿の、お耳?」
決め手はそれかしら?
そう思って、耳に手をやってエルフ特有の尖った耳を表してみせる。そうすると、マリア先生がにっこりと笑った。否定しないので、その通りなのだろう。
彼女は椅子の背にもたれると、ゆっくりと言葉を続けた。
「リンシア。精霊の愛し子でもないのに、精霊に愛されている不思議な子。あなたの周りには、常に精霊がいます。楽しそうで幸福に満ちて溢れている。あなたの周りは賑やかですね」
「私には見えませんわ……」
心底残念である。私も見たくてたまらない。
私の周囲には二人も、精霊を視認できる人たちがいるというのに……。二人とも規格外ではるのだけど。でも、私だって見てみたいわ……!!
そう思っていると、マリア先生が微笑んで言った。
「見たいのなら、ご自分で作りなさい。今のあなたにならできるはずですよ」
今の私になら──というのはつまり、そういうこと、よね?
一人なら無理かもしれない。だけど、ルーズヴェルト卿の協力があれば無理では無い……と思う。難しい魔道具造りには、相応の魔法が使える人間の協力が不可欠だ。
まあ、マリア先生は1人で出来てしまうのだけど。
それからふと、私は気になったことがあって、顔を上げて彼女に尋ねた。
「もしかして、マリア先生が在学中、私を気にかけてくださっていたのは精霊が理由ですか?」
いつも精霊が私の近くにいたから、気にしていてくださった……ということ?そう思って尋ねると、彼女は朗らかな笑みを浮かべた。
「ふふ。どうかしらね。でも、リンシア。精霊に愛されるのは、紛れもなくあなたの力の証明よ。誇りなさい。あなたの、魔道具造りの才を」
マリア先生は否定しなかった。正解なのだろう。
私は、ちら、と自身の足元あたりに視線を向ける。当然だけど、カーペットしか見えない。だけど今も……いるのだろうか。
(……いつか、私も見てみたいものだわ)
いつも私の近くにいるという、精霊の姿を。
「よい結果を得られましたね、リンシア」
「ありがとうございます、マリア先生のおかげですわ」
本心からそう答えると、彼女はにっこり笑うだけだった。それから、彼女は「あら」と何かに気がついたように私を見る。
「リンシア。私がなぜ、ルーズヴェルトさんをあなたに勧めたのか分かりましたか?」
「え?あ、はっ……」
ルーズヴェルト卿の名前に、思わず戸惑った。狼狽える私に、全てを見透かすかのようにマリア先生が微笑んだ。
「彼、エルフでしょう。黙っていて欲しいと言われましたが……もう、あなたも知ったのでしょう?」
……なるほど。
エルドラシア魔法学院に到着した初日、マリア先生と何か話していると思ったら、それを伝えていたのね……。つまり、マリア先生は早い段階で彼がエルフだったことを知っていた、というわけだ。いつ知ったのかしら?気になった私は、そのまま彼女に尋ねた。
すると、マリア先生はトントン、とモノクルを指で示した。
「これは、精霊を視認する魔道具なんです」
「……えっ!?」
「去年開発したものなのですが……これをつけていると老眼が酷くなるのですよ。ですから封印していたのですが、最近改良化に成功しましてね。つけていたわけです」
「……それで見えていたのですか?あの、ルーズヴェルト卿の、お耳?」
決め手はそれかしら?
そう思って、耳に手をやってエルフ特有の尖った耳を表してみせる。そうすると、マリア先生がにっこりと笑った。否定しないので、その通りなのだろう。
彼女は椅子の背にもたれると、ゆっくりと言葉を続けた。
「リンシア。精霊の愛し子でもないのに、精霊に愛されている不思議な子。あなたの周りには、常に精霊がいます。楽しそうで幸福に満ちて溢れている。あなたの周りは賑やかですね」
「私には見えませんわ……」
心底残念である。私も見たくてたまらない。
私の周囲には二人も、精霊を視認できる人たちがいるというのに……。二人とも規格外ではるのだけど。でも、私だって見てみたいわ……!!
そう思っていると、マリア先生が微笑んで言った。
「見たいのなら、ご自分で作りなさい。今のあなたにならできるはずですよ」
今の私になら──というのはつまり、そういうこと、よね?
一人なら無理かもしれない。だけど、ルーズヴェルト卿の協力があれば無理では無い……と思う。難しい魔道具造りには、相応の魔法が使える人間の協力が不可欠だ。
まあ、マリア先生は1人で出来てしまうのだけど。
それからふと、私は気になったことがあって、顔を上げて彼女に尋ねた。
「もしかして、マリア先生が在学中、私を気にかけてくださっていたのは精霊が理由ですか?」
いつも精霊が私の近くにいたから、気にしていてくださった……ということ?そう思って尋ねると、彼女は朗らかな笑みを浮かべた。
「ふふ。どうかしらね。でも、リンシア。精霊に愛されるのは、紛れもなくあなたの力の証明よ。誇りなさい。あなたの、魔道具造りの才を」
マリア先生は否定しなかった。正解なのだろう。
私は、ちら、と自身の足元あたりに視線を向ける。当然だけど、カーペットしか見えない。だけど今も……いるのだろうか。
(……いつか、私も見てみたいものだわ)
いつも私の近くにいるという、精霊の姿を。
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