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お前に言われたくないな
しおりを挟む思えばリヴェルト様は無能以前に人間性に問題のある人だった。
あまり深く考えていなかったが、何を言っても斜め上の発言が帰ってくるのだ。
しかも、なぜか上から目線のアドバイスつき、という。最初話した時はあれっ………話が噛み合ってない………!?と盛大に混乱したものだった。だけど慣れてくるともうこの人はデフォルトでこれなのだと納得した。いや、慣れた。
だから時々違う男の人と話すと、スムーズに会話が成り立つことに驚きを感じ、涙を禁じえなかったほどだ。
例えば。
「あと2年すればお前も社交デビューか、早いな」
「そうですわね。わたくし、少し不安ですの………。わたくしは口下手なものですから、うまく出来るかしら」
「もう13歳だろ、いつまでも甘えてるなよ」
「…………!?え、あ、はい。申し訳ありません、精進いたします」
あれっそういう話してたっけ!?
思わずすごく驚いた。いや、本当に。
傷つくとかそれ以前にびっくりしたもの。今、私注意された?えっ。注意されるようなこと言ったかしら………?口下手だから………って言っただけよね?すごい。このひと、謎の次元で生きてる。発想も発言も斜め上だわ………。数日は引きずった。その驚きとリヴェルト様の謎の思考回路に。
またある日は、
「俺さ、もう18なんだよね」
「おめでとうございます、リヴェルト様」
「ルティは16歳か、若いな」
「リヴェルト様とそう変わりませんわ」
「いや、変わるよ。俺もうおじさんだから」
「お、おじ………?」
「ルティのように若い子から見たらおじさんだろ」
「そんなことごさいませんわ。まだ18歳ではありませんか」
「ルティは若いからそう思うんだよ」
「……………」
ちなみにこの後も延々と自分はおじさんだからという謎の枕詞が増え、その度に私がそんなことございません、と否定する会話が続いた。もっといえば否定せず黙ったりするとさらに機嫌が悪くなるので、とっても扱いにくいひとだなと私は改めて思った。
社交デビューを終え、16歳になった頃には流石にリヴェルト様の人間性というものがわかってきた。
リヴェルト様は無能で何も出来ないミスの多い人間のくせして、プライドだけは天より高い。あと褒められたがりである。
馬鹿にするような発言でもしようものならその場では黙り込んで終わるものの、永遠に引きずる。死ぬまで引きずる。
ものすごく根に持つタイプなのだ。そして相手には会う度に嫌味を連発させる。粘着質である。蛇か………。隣にたちながらその嫌味トークを聞いていた私は思った。相手の人間はリヴェルト様に苦手意識を抱くものの、相手は王族。表立って何か出来るはずもなく、そのままフェードアウト。フェードアウトできるって羨ましい。私も出来ることならリヴェルト様の視界からフェードアウトしたい。
またある日。恒例となった交楽会でつい私が先日あったマナーレッスンでの失敗の話をした時の事だった。
「わたくし、それで足をくじいてしまったんです。もっと注意しなければと思います。頑張りますわ」
「うん、そうだな。頑張れよ」
その頑張れよ、が励ましの言葉なら良かった。
しかしイントネーションは「頑張れよ」と語尾が下に下がる形だった。つまり何が言いたいかと言うと。ちょっと馬鹿にした感じで上から目線のお小言的イントネーションだったわけである。ちょっと笑いを含んでいる感じの。
その時私はふと思った。
お前に言われたくないな…………と。リヴェルト様付きの補佐官なら誰でも知っているだろう。リヴェルト様のあまりの仕事のできなさを。ほとんどが、補佐官がそのミスをリヴェルト様の気を損ねないようなニュアンスで指摘し、修正し、持って言っているというのだから涙が出てくる。補佐官にそんな要らぬ労力を強いるリヴェルト様はやっぱり棚の角にでも頭をぶつけて欲しいと思った。
私が16歳を迎えた夏。
いよいよ本格的に私とリヴェルト様の婚姻の日取りが決められつつあった。
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