悪女だと言うのなら、その名に相応しくなってみせましょう

ごろごろみかん。

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悪女 2

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「もう頼めるのはあなたしかいないの!」

ミレイユは震えた声で手で顔を覆った。
声が震えたのは、演じることに慣れていないためだし、顔を覆ったのは泣き顔を装うためだった。

(まずは、同情だけでいいの。同情だけで……)

失敗は許されない。失敗は、すなわちミレイユの死を意味しているからだ。ミレイユは顔を覆って泣き姿を演じると、ユンヴィーノは困惑した声を隠さずに問いかけてきた。

「ミレイユ様が俺を?」

「前に見かけたことがあるわ。あなた、とても優しい声をしていたわ……。あなたの目に映りたいと私がいくら思ったのか、きっとあなたは知らないわ。そうでしょう?だってあなたは!私の事なんて……」

泣き真似を演じるのはとても屈辱的で、どうしても違和感がつきまもう。ともすればそれは滑稽だ。
だけど、ミレイユはこの演技をどうしてもやめるつもりはなかった。滑稽がなんだ。ミレイユはすでに一度、死した身である。その時のことを思えばこればかりの屈辱や芝居など滑稽とも取れない。ミレイユが鼻を啜れば、ユンヴィーノは息を飲んだようだった。
ミレイユのプラチナブロンドは色味が薄くてあまり目立たない。絢爛豪華なパーティ会場では派手な髪型や髪色の招待客が大勢いるし、ミレイユもまた消極的な性格のためより埋もれる原因となった。
ミレイユはふと涙を流す素振りをやめて、ユンヴィーノを見た。彼はあからさまな困惑を見せていたが、ミレイユは彼から顔を隠すようにして言った。

「ごめんなさい。突然こんなこと……あなたが困っていることは分かっているの。だけど、許してちょうだい。どうしても言いたかったの……。もう、隠しておけないと思ったのよ」

「ミレイユ様……」

「私はいずれ婚姻してこの家を出るわ。それまでの我慢だもの……」

「………」

「ねえ、ユンヴィーノ。私、幸せになれるかしら」

その答えは、ほかでもないミレイユ自身が知っている。
ユンヴィーノは答えに窮したようだ。

(突然だわ。誰だって表立って王族の悪口など言えやしないのだもの)

報告されればすぐさま処分が下されるだろう。平民は銃殺、貴族は身分や状況にもよるが周りから非難を浴びるのは察してあまりある。国王の覚えも当然悪くなることだろう。

「それは……」

「……ごめんなさい。なんでもないの。本当よ」

ミレイユはそれだけ何とか早口で言うと、さも哀れな令嬢を演じてするりとその隣を抜け出した。ユンヴィーノがミレイユを
呼び止める声がしたが、ミレイユは振り返ることはしなかった。その変わり、心臓がバクバクと、握りつぶされるのではないかというほど強く打っていた。

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