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スティール公爵
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ミレイユは馬車の中で考えていた。
それは、この後に起きる騒動をどう収めようかということだった。
ミレイユは、ロザリアの連れてきた男爵に強く勧められて断れずに酒に口をつけてしまう。だけどその酒はレディキラーと名高いアルコールが高いもので、ミレイユはすぐに前後不覚となってしまうのだ。思うに、酒以外にもなにか混ぜられていた可能性がある。
ロザリアの思うままにことを進める気は毛頭ない。巻き戻り前に王太子に体を奪われているミレイユとしては、貞操にこだわるつもりはないが、ここで関係を持ちでもしたらロザリアはここぞとばかりにふしだらだと糾弾してミレイユを牢獄と名高い修道院に閉じ込めることだろう。それではミレイユもやるせない。
やがて馬車は王城前に横付けし、御者の手を借りて夫人、ロザリアが降りていく。ロザリアと夫人の視線に晒されて、御者は申し訳なさそうな顔をしたが、帽子をとって礼をすると御者席へと戻っていく。ミレイユは自分の足で降りろという、貴族令嬢としてはありえないことではあるが生憎ミレイユは慣れていた。
ミレイユは自身の足で降りると、おもむろにロザリアがはしゃいだ声を出した。
「きゃ、スティール公爵だわ。今日の夜会にいらっしゃるなんて!」
「今日は盛大なパーティですからね。スティール公爵は妻を探していらっしゃると言うわ。ロザリア、近づいてはいけないわよ?あなたは私に似てとても美人なのだから、すぐに恋に落ちてしまうわ」
「お母様ったら。大丈夫よ。いくらほかの男性が素敵だからって、ちゃんと心は別にあるもの」
「ロザリアったら。恋はひとを美しくさせるわね」
ロザリアと夫人ははしゃいだ声で会話をしている。ロザリアは美人と言うにはいささかふくよかで額が広く、目が細いが、夫人から見れば絶世の美女に見えるのだろう。ミレイユとロザリアであれば、痩せぎすであるものの、痩せているからこそ目が大きく見えるミレイユの方が異性的な魅力で目を引くのは事実だ。
パンチが効いている、という意味ではロザリアはミレイユを上回っているが。
ミレイユは彼女達の会話を聴きながら、その会話の主について思い出す。
(ジョシュア・ロンドル・スティール。ロンドル侯爵の娘とスティール前公爵の一人息子で、現公爵……)
あとから聞いたことだが、酩酊して部屋に連れ込まれそうになったミレイユを助けた紳士とは、スティール公爵だったらしい。
しかしミレイユはその時酒に酔っていて記憶はおろか意識も混濁している状況だったため、後日その話をロザリアから当てつけのように聞いただけだった。
ミレイユはちらりとスティール公爵を見てから、すぐに考えをまとめ始めた。
ロザリアはスティール公爵にのぼせているようだし、安易に関係を持っては激昂することだろう。それこそ、巻き戻り前にミレイユがスティール公爵に助けられた時にはロザリアは手が付けられないほど怒り狂っていた。
ロザリアはゲオルドのことを権力者として愛していて、顔はスティール公爵が好みのようだった。
スティール公爵は端正な美貌を持っていた。均整の取れた体は細長く、若公爵なだけあって令嬢の一番人気の結婚相手だった。
月光のような銀髪はこの国では滅多に見られない色合いで、その瞳はアメジストのような紫だ。
白銀の髪は空気に溶けてしまいそうなほど儚く、どこか幼さの残る童顔は柔らかい印象を受けるが、いかんせん彼は無表情でいることが多いので、近寄りにくい、冷たい雰囲気を周りに思わせた。
それは、この後に起きる騒動をどう収めようかということだった。
ミレイユは、ロザリアの連れてきた男爵に強く勧められて断れずに酒に口をつけてしまう。だけどその酒はレディキラーと名高いアルコールが高いもので、ミレイユはすぐに前後不覚となってしまうのだ。思うに、酒以外にもなにか混ぜられていた可能性がある。
ロザリアの思うままにことを進める気は毛頭ない。巻き戻り前に王太子に体を奪われているミレイユとしては、貞操にこだわるつもりはないが、ここで関係を持ちでもしたらロザリアはここぞとばかりにふしだらだと糾弾してミレイユを牢獄と名高い修道院に閉じ込めることだろう。それではミレイユもやるせない。
やがて馬車は王城前に横付けし、御者の手を借りて夫人、ロザリアが降りていく。ロザリアと夫人の視線に晒されて、御者は申し訳なさそうな顔をしたが、帽子をとって礼をすると御者席へと戻っていく。ミレイユは自分の足で降りろという、貴族令嬢としてはありえないことではあるが生憎ミレイユは慣れていた。
ミレイユは自身の足で降りると、おもむろにロザリアがはしゃいだ声を出した。
「きゃ、スティール公爵だわ。今日の夜会にいらっしゃるなんて!」
「今日は盛大なパーティですからね。スティール公爵は妻を探していらっしゃると言うわ。ロザリア、近づいてはいけないわよ?あなたは私に似てとても美人なのだから、すぐに恋に落ちてしまうわ」
「お母様ったら。大丈夫よ。いくらほかの男性が素敵だからって、ちゃんと心は別にあるもの」
「ロザリアったら。恋はひとを美しくさせるわね」
ロザリアと夫人ははしゃいだ声で会話をしている。ロザリアは美人と言うにはいささかふくよかで額が広く、目が細いが、夫人から見れば絶世の美女に見えるのだろう。ミレイユとロザリアであれば、痩せぎすであるものの、痩せているからこそ目が大きく見えるミレイユの方が異性的な魅力で目を引くのは事実だ。
パンチが効いている、という意味ではロザリアはミレイユを上回っているが。
ミレイユは彼女達の会話を聴きながら、その会話の主について思い出す。
(ジョシュア・ロンドル・スティール。ロンドル侯爵の娘とスティール前公爵の一人息子で、現公爵……)
あとから聞いたことだが、酩酊して部屋に連れ込まれそうになったミレイユを助けた紳士とは、スティール公爵だったらしい。
しかしミレイユはその時酒に酔っていて記憶はおろか意識も混濁している状況だったため、後日その話をロザリアから当てつけのように聞いただけだった。
ミレイユはちらりとスティール公爵を見てから、すぐに考えをまとめ始めた。
ロザリアはスティール公爵にのぼせているようだし、安易に関係を持っては激昂することだろう。それこそ、巻き戻り前にミレイユがスティール公爵に助けられた時にはロザリアは手が付けられないほど怒り狂っていた。
ロザリアはゲオルドのことを権力者として愛していて、顔はスティール公爵が好みのようだった。
スティール公爵は端正な美貌を持っていた。均整の取れた体は細長く、若公爵なだけあって令嬢の一番人気の結婚相手だった。
月光のような銀髪はこの国では滅多に見られない色合いで、その瞳はアメジストのような紫だ。
白銀の髪は空気に溶けてしまいそうなほど儚く、どこか幼さの残る童顔は柔らかい印象を受けるが、いかんせん彼は無表情でいることが多いので、近寄りにくい、冷たい雰囲気を周りに思わせた。
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