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大広間 (2)
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「リデル………だと?」
第二王子が困惑した声を出す。それにリーゼロッテはにっこりと笑った。自分の隣にリデルを立たせると、第二王子とリデルの顔を見比べる。リデルはリーゼロッテとは違い亜麻色の髪が真っ直ぐ伸びたサラサラの髪の持ち主である。サファイアのような翡翠色の瞳は濡れているように輝いていて、キャサリンとは違う魅力がある。リデルはカイゼルを見るとすぐに泣きそうな顔になった。リーゼロッテが説明をする。
「今お伝えしたとおり、我々の婚約はただの婚約ではなく、契約。つまり我が公爵家との婚約は継続していただく必要があります」
「何が言いたい?なぜわざわざリデルを?お前は何を企んでいる!リーゼロッテ!」
「気安くお名前を呼ばないでくださる?わたくしたち、もう婚約者じゃないのだから」
「は…………!?」
カイゼルの目が大きく開かれる。彼の紫色の瞳を見ながら、リーゼロッテはリデルの背中を押した。
「リデルは今、妊娠してるかもしれないんです」
「何だと…………!?」
それにはさしものカイゼルも驚いたのか、驚きの声を上げた。キャサリンに至ってはその顔が青ざめている。公爵家の娘と子爵家の養女、どちらが妃に相応しいかと言われれ前者に軍配があがるのは当然だ。リデルは泣きながらかカイゼルに縋った。広間はとんだド修羅場に包まれていた。周りの貴族は驚いたように息を飲むもの、面白そうにこちらを見ているもの、かかわり合いになりたくないとばかりに視線を逸らすもの、他者多様だった。
「あなたの子ですよ、カイゼル様」
リーゼロッテが言うと、カイゼルはそれにハッとしてようにリデルを突き飛ばした。たたらをふむリデルをリーゼロッテが支える。妊婦を突き飛ばすとはどこまでクズなのか。リーゼロッテはカイゼルを睨んだ。この妹は困ったところが多くリーゼロッテも好きではなかったが、それでも妹である。妊婦の彼女を突き飛ばしたカイゼルはありえないほどのクズと認定された。
「知らない!!そんなの、その女がついた嘘かもしれないだろ!」
「そ、そうよ!カイゼル様はそんなことされないんだから!」
慌てたようにキャサリンも声を続ける。ハッピーな思考回路の持ち主で何よりだが、彼らは知らないのだろうか。リデルはリーゼロッテの妹であり、リーゼロッテはカイゼルの婚約者だったということを。
「馬鹿にするのも大概になさって?リデルはわたくしの妹で、そしてわたくしはあなたの婚約者だったのですわよ?カイゼル様」
「は?そ、それがどうした………」
明らかにうろたえている様子のカイゼル。それにリーゼロッテはうっそりと笑って扇で口元を隠した。お前とはもう話したくないと言わんばかりの拒否体制だ。しかしそれに気づけるようなカイゼルではない。
「わたくしが何も知らないとでも?」
「…………」
カイゼルが驚いたように息を飲む。いつしか広間は水を打ったように静かになっていた。
「去年の聖夜の夜、夜会の後でリデルと中抜けしましたわね。わたくし知ってますのよ、なんて言ったってわたくしの家で行われたことですし」
「そ、それは…………」
「わたくしが見たと言っているのにまだ嘘だと言い張るのですか?屋敷の使用人にも目撃者はいるのに?………ああ、あの夜会にいた時の方もおそらく知ってるわね。気になるようでしたら再度あの時の参加者をお呼び立ていたしますか?幸い、我が家がホストでしたので招集をかけるのは簡単ですわ」
リーゼロッテがそこまで言うと、カイゼルは顔を青ざめさせた。そう、カイゼルは知っているのだ。酔っていなかったしもちろん覚えている。リデルとの一夜のことをしっかりと覚えていたのだ。カイゼルにしてみたらいつものようにただの火遊びのつもりだった。リデルも慣れているようだったし…………そこまで考えた時はっとしてカイゼルはリデルに罵倒するように言った。
「いい加減にしろ!!その女が俺以外の男をくわえこんだ可能性だって大いにある!そうだ、お前らはハメようとしてるんだろ!俺を!この、無礼者めが!」
「無礼者はお前だ!控えろ、カイゼル!!」
その時、劈くような静かな声が広間にひびいた。気がつけば人の波が割れていて、その間から厳かな衣装を身につけた男がやってくる。ひと目で分かった。国王陛下だ。この騒ぎに誰かしらが国王に使いを出したのだろう。先程退出したばかりの国王はかなり焦って戻ってきたようで珍しくその髪が乱れていた。国王は急ぎ足でリーゼロッテたちの近くまで来ると、自分の息子であるカイゼルを睨みつけた。
「デストロイ公爵家の娘と勝手に婚約を破談しようとするなど…………!この馬鹿めが…………!」
唸るような低い罵声を浴びさせられて、カイゼルは硬直した。同じくキャサリンもその顔は蒼白だ。リデルだけがしおらしく俯いていた。だけど姉のリーゼロッテは知っている。リデルのこれは演技で内心はキャサリンのことをざまぁみろとでも思ってるのだろう。リデルは王子妃になりたいようだったから。しかしこの国の王子はカイゼルだけ。王太子は既に結婚してしまっている。
去年の聖夜の夜会で仕掛けたのもおそらくリデルだろう。それにホイホイと乗った王子はどうしようもない馬鹿だが。
「王妃の最愛の息子と思ってこれまで大目に見ていたが…………これ程とはな……………!カイゼル、お前のような馬鹿息子はこのリームヴ王国の王族には要らん!!お前の王位継承権をこの場において、国王の権限により剥奪する!」
第二王子が困惑した声を出す。それにリーゼロッテはにっこりと笑った。自分の隣にリデルを立たせると、第二王子とリデルの顔を見比べる。リデルはリーゼロッテとは違い亜麻色の髪が真っ直ぐ伸びたサラサラの髪の持ち主である。サファイアのような翡翠色の瞳は濡れているように輝いていて、キャサリンとは違う魅力がある。リデルはカイゼルを見るとすぐに泣きそうな顔になった。リーゼロッテが説明をする。
「今お伝えしたとおり、我々の婚約はただの婚約ではなく、契約。つまり我が公爵家との婚約は継続していただく必要があります」
「何が言いたい?なぜわざわざリデルを?お前は何を企んでいる!リーゼロッテ!」
「気安くお名前を呼ばないでくださる?わたくしたち、もう婚約者じゃないのだから」
「は…………!?」
カイゼルの目が大きく開かれる。彼の紫色の瞳を見ながら、リーゼロッテはリデルの背中を押した。
「リデルは今、妊娠してるかもしれないんです」
「何だと…………!?」
それにはさしものカイゼルも驚いたのか、驚きの声を上げた。キャサリンに至ってはその顔が青ざめている。公爵家の娘と子爵家の養女、どちらが妃に相応しいかと言われれ前者に軍配があがるのは当然だ。リデルは泣きながらかカイゼルに縋った。広間はとんだド修羅場に包まれていた。周りの貴族は驚いたように息を飲むもの、面白そうにこちらを見ているもの、かかわり合いになりたくないとばかりに視線を逸らすもの、他者多様だった。
「あなたの子ですよ、カイゼル様」
リーゼロッテが言うと、カイゼルはそれにハッとしてようにリデルを突き飛ばした。たたらをふむリデルをリーゼロッテが支える。妊婦を突き飛ばすとはどこまでクズなのか。リーゼロッテはカイゼルを睨んだ。この妹は困ったところが多くリーゼロッテも好きではなかったが、それでも妹である。妊婦の彼女を突き飛ばしたカイゼルはありえないほどのクズと認定された。
「知らない!!そんなの、その女がついた嘘かもしれないだろ!」
「そ、そうよ!カイゼル様はそんなことされないんだから!」
慌てたようにキャサリンも声を続ける。ハッピーな思考回路の持ち主で何よりだが、彼らは知らないのだろうか。リデルはリーゼロッテの妹であり、リーゼロッテはカイゼルの婚約者だったということを。
「馬鹿にするのも大概になさって?リデルはわたくしの妹で、そしてわたくしはあなたの婚約者だったのですわよ?カイゼル様」
「は?そ、それがどうした………」
明らかにうろたえている様子のカイゼル。それにリーゼロッテはうっそりと笑って扇で口元を隠した。お前とはもう話したくないと言わんばかりの拒否体制だ。しかしそれに気づけるようなカイゼルではない。
「わたくしが何も知らないとでも?」
「…………」
カイゼルが驚いたように息を飲む。いつしか広間は水を打ったように静かになっていた。
「去年の聖夜の夜、夜会の後でリデルと中抜けしましたわね。わたくし知ってますのよ、なんて言ったってわたくしの家で行われたことですし」
「そ、それは…………」
「わたくしが見たと言っているのにまだ嘘だと言い張るのですか?屋敷の使用人にも目撃者はいるのに?………ああ、あの夜会にいた時の方もおそらく知ってるわね。気になるようでしたら再度あの時の参加者をお呼び立ていたしますか?幸い、我が家がホストでしたので招集をかけるのは簡単ですわ」
リーゼロッテがそこまで言うと、カイゼルは顔を青ざめさせた。そう、カイゼルは知っているのだ。酔っていなかったしもちろん覚えている。リデルとの一夜のことをしっかりと覚えていたのだ。カイゼルにしてみたらいつものようにただの火遊びのつもりだった。リデルも慣れているようだったし…………そこまで考えた時はっとしてカイゼルはリデルに罵倒するように言った。
「いい加減にしろ!!その女が俺以外の男をくわえこんだ可能性だって大いにある!そうだ、お前らはハメようとしてるんだろ!俺を!この、無礼者めが!」
「無礼者はお前だ!控えろ、カイゼル!!」
その時、劈くような静かな声が広間にひびいた。気がつけば人の波が割れていて、その間から厳かな衣装を身につけた男がやってくる。ひと目で分かった。国王陛下だ。この騒ぎに誰かしらが国王に使いを出したのだろう。先程退出したばかりの国王はかなり焦って戻ってきたようで珍しくその髪が乱れていた。国王は急ぎ足でリーゼロッテたちの近くまで来ると、自分の息子であるカイゼルを睨みつけた。
「デストロイ公爵家の娘と勝手に婚約を破談しようとするなど…………!この馬鹿めが…………!」
唸るような低い罵声を浴びさせられて、カイゼルは硬直した。同じくキャサリンもその顔は蒼白だ。リデルだけがしおらしく俯いていた。だけど姉のリーゼロッテは知っている。リデルのこれは演技で内心はキャサリンのことをざまぁみろとでも思ってるのだろう。リデルは王子妃になりたいようだったから。しかしこの国の王子はカイゼルだけ。王太子は既に結婚してしまっている。
去年の聖夜の夜会で仕掛けたのもおそらくリデルだろう。それにホイホイと乗った王子はどうしようもない馬鹿だが。
「王妃の最愛の息子と思ってこれまで大目に見ていたが…………これ程とはな……………!カイゼル、お前のような馬鹿息子はこのリームヴ王国の王族には要らん!!お前の王位継承権をこの場において、国王の権限により剥奪する!」
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