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1章
じゅーに。
しおりを挟むこの国に来てからもう一週間以上が経つが私、本当に何もしてない。
流石にほんのちょっとだけ申し訳なさを感じたから何かしようと思う。
私の国はそろそろ滅んじゃいそうだからお手軽護符でも作ろうかな。
私の国が滅んだら国交にも問題が出るかもしれないし、なにかしておこう。
そう思って思い浮かんだのが清めの札作り。
簡単でお手軽だしいいよね。
ふと陛下の足元にいる白猫が顔を洗うような仕草を見せた。2、3回それを繰り返すとじっと私を見る。
なんだろう?
「ほかに何か欲しいものはあるか?政略とはいえ、いい関係を築いていきたい」
分からない。
白猫は何が言いたいのだろう。
白猫はじっと私を見るとまた顔を洗う仕草をする。そして陛下を見た。
その視線につられて私も陛下を見ると陛下は僅かにびくりとしたようだった。
どうしたんだろう。
あ。
「隈………」
陛下の目の下にはくっきりとくまがあった。
初めてこんなにちゃんと顔を見た。
陛下は結構肌が白いようだった。
だからかくまがよく目立つ。
寝不足なのだろうか?
そう思って聞こうとする前に、陛下が驚いた声を出した。
「熊!?」
「気づかれてないのですか?」
「待て。今度は何の話だ。きみは熊が欲しいのか?」
「私はいりませんが………」
隈が欲しいひとなんているのだろうか。
少なくとも私はいらない。
答えると陛下はものすごく混乱しているようだった。
寝不足で頭が回っていないのかもしれない。
「疲れてらっしゃるのでは?」
「やはり僕は……憑かれているのか……!?」
陛下はますます強ばった顔をした。
自覚がないなんて相当だ。
私は過労を強いられる陛下を少し可哀想に思った。
「少し休まれたらいかがですか?」
「その間に祓われていたら…………困るだろう…………」
その間に現れていたら困るだろう?
陛下はボソボソ話すせいで聞き取りにくい。
なにか難しい政策でも打ち出してる途中なのだろうか。
現れるということはひとよね。
他国から賓客が来るのかも。
そして、その予定がまだ決まってないということなのかしら。
「では、それまで眠っているというのは?」
来たら起こしてもらえばいいんじゃないかしら。
「いついなくなるかもわからないのに!?」
来てすぐ帰っちゃうような忙しいひとなのかしら。
それか陛下の想う方とか?
とにかく聞いてみよう。
「いなくなるとまずいんですか?」
「まずいどころか…………きっと僕は立ち直れない」
やはり陛下の好きなひとなのかもしれない。
陛下は好きなひとがいたのね。
私にもなにかお手伝いできないかしら。
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