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1章
じゅーよん、
しおりを挟むあの国は土地柄良くないのだろう。
ほっとけば死霊がうじゃうじゃ湧く。
だから私は東西南北の目印として打ち込まれた杭を媒体にして、地に潜む死霊を長年清めてきた。
そういえばあの杭、私が打ちにいったのよね。
路銀を一枚も渡されなかったからきっと旅という名の解放だと思って、しばらく街で暮らしていた。
占い師って結構儲かる。
王妃業をやめたら占い師もいいかもしれないな。
でも働かなくてもいい王妃業が一番いいかもしれない。
この生活が続けばいいな。
そんなことを思いながら陛下が用意してくれた白い紙を四つに切ってそれぞれに東西南北と書く。
まじない紋様も書き込めば簡易依代の完成だ。
うん。上手くいった。
これを清めた水の張った器にそれぞれ入れれば、少しはマシになるんじゃないかな。
そう思ってその依代とともに手紙を祖国に送る。
あの紙、死霊を抑える力があるけど人間には強すぎるから口に含んだりしたら死んじゃうんだけど、きっとそんなことしないよね。
これで少しは働いたことになると思うし、私の申し訳なさもなくなった。
はー、疲れた。ご飯食べに行こっと!
祖国から手紙が届いた。
思ったより早い。
あの呪符が効くのは清めた水に入れてから数日ほどのはずだけど、それを待たずに返事が来た。
どうやら王族間で暗殺騒ぎが起きたらしい。
その結果生き残ったのは皇太子殿下だけとのこと。
細長い印象しかなかったけど、意外にも腕が立つらしい。
そう思って手紙を再度読んでいけば皇太子殿下は伏せっていてそれどころではなかったとのこと。
私の護符のせいだと手紙には書かれているけど、元々王族のひとたちが仲悪かっただけじゃないかな。
責任転嫁はやめてほしい。
ちょっとむっとした私は返信を書いた。
『起こるべくして起こったことです』
これで納得してくれたらいいんだけど。
そういえば窓の外から見える花壇に紫陽花が咲いた。
そのうち見に行けたらと思うけど、陛下に行動規制されているから今度夜中にでもこっそり見に行こう。
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