上 下
16 / 34
1章

じゅーよん、

しおりを挟む

あの国は土地柄良くないのだろう。
ほっとけば死霊がうじゃうじゃ湧く。
だから私は東西南北の目印として打ち込まれた杭を媒体にして、地に潜む死霊を長年清めてきた。

そういえばあの杭、私が打ちにいったのよね。
路銀を一枚も渡されなかったからきっと旅という名の解放だと思って、しばらく街で暮らしていた。
占い師って結構儲かる。
王妃業をやめたら占い師もいいかもしれないな。
でも働かなくてもいい王妃業が一番いいかもしれない。
この生活が続けばいいな。

そんなことを思いながら陛下が用意してくれた白い紙を四つに切ってそれぞれに東西南北と書く。
まじない紋様も書き込めば簡易依代の完成だ。
うん。上手くいった。
これを清めた水の張った器にそれぞれ入れれば、少しはマシになるんじゃないかな。

そう思ってその依代とともに手紙を祖国に送る。
あの紙、死霊を抑える力があるけど人間には強すぎるから口に含んだりしたら死んじゃうんだけど、きっとそんなことしないよね。
これで少しは働いたことになると思うし、私の申し訳なさもなくなった。

はー、疲れた。ご飯食べに行こっと!




祖国から手紙が届いた。
思ったより早い。
あの呪符が効くのは清めた水に入れてから数日ほどのはずだけど、それを待たずに返事が来た。

どうやら王族間で暗殺騒ぎが起きたらしい。
その結果生き残ったのは皇太子殿下だけとのこと。
細長い印象しかなかったけど、意外にも腕が立つらしい。
そう思って手紙を再度読んでいけば皇太子殿下は伏せっていてそれどころではなかったとのこと。

私の護符のせいだと手紙には書かれているけど、元々王族のひとたちが仲悪かっただけじゃないかな。
責任転嫁はやめてほしい。
ちょっとむっとした私は返信を書いた。

『起こるべくして起こったことです』

これで納得してくれたらいいんだけど。
そういえば窓の外から見える花壇に紫陽花が咲いた。
そのうち見に行けたらと思うけど、陛下に行動規制されているから今度夜中にでもこっそり見に行こう。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,160pt お気に入り:139

もふつよ魔獣さんのお食事処 〜食材探しはおもしろ楽しい?ダンジョンで〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,479pt お気に入り:102

婚約破棄された私の前に現れたのは、気弱なはずの幼馴染でした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:1,036

毒を喰らわば皿まで

BL / 完結 24h.ポイント:7,071pt お気に入り:12,778

異世界ライフは山あり谷あり

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:688pt お気に入り:1,554

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:3,012

処理中です...