New Life

basi

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第四話

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『《New Life》手に入れたぞ。すぐに追い付いてやる』
 キャラメイクを終え健次との約束時間に近づいてきたことで俺のやる気は再び燃焼を始め、テンションも上がってきた。
 その勢いで例の幼馴染みに宣戦布告のメールを出した。が、その返事は
『そう、おめでとう。ご飯たべたらログインするから後で』
 というもの。半年前に散々自慢してきたので今回も挑発してくるかと思ったのだが拍子抜けだ。
 まあ中で会うつもりのようだからログイン時間だけ知らせておいた。

 ついに来た約束の時! なんて、楽しみ過ぎてテンションがおかしい。大学生になっても心は子供。自分、アホみたいだが仕方ない。
 ヘッドセットを着けてベッドに横たわり準備完了。
「さあ。第二の人生の始まりだ」
 やべぇ、テンションがやべぇ。


 ≪New Life≫にログインするとキャラメイクと同じような空間に出た。
『ようこそ≪New Life≫へ。キャラクタネーム【ユル】さんですね』
 またどこからともなく声が聞こえてきた。
「そうですけど」
『まずお買い上げ有難うございます。そして購入権当選おめでとうございます。今回当選された方はお祝いとしてゲーム内で二週間、三百三十六時間の成長ブーストがかけられています』
 おお! それは経験値二倍みたいなものか。
『ブースト期間中はステータス上昇、アビリティの上昇率が上がります。更に、すでにご存じかも知れませんが、今回、ハードのヘッドセット化に伴い新技術である体感時間の延長技術を使用可能にしました。そのためこの度のアップデートで現実時間よりも長くゲームを楽しむことが可能になりました』
 来た来た。来ましたよ。この技術が出来たお陰で仕事などの会議をVRで行う企業が増えたらしい。そのため企業用ではすでに使用されていた技術だけど、価格等の改善に時間が掛かって一般向けにはこのヘッドセットが初なんだよな。これで少ない時間でも長くプレイできるぜ。
『尚、加速倍率は八倍とします。最大連続ログインは十時間ですが、使用者の栄養摂取などを考慮し最大時間ログインした場合、次にログイン可能になるのは三時間時間後となります。通常ログアウトごとに最低三十分のログイン不可時間を設定しております。しかし連続ログインが三時間を超えると一時間、七時間を超えると二時間へ時間延長をいたします。ログインが十時間を超えた場合、十分後に強制ログアウトとなりますがこの場合はペナルティとしてさらに二時間、つまり三時間の冷却時間に加えペナルティの二時間で合計五時間のログイン不可措置を取らせていただきます』
 おおぅ……。マジか。現実を疎かにするなってことですか。ちゃんと飯を食えと。
『時間加速にともない脳への処理負担が発生します。負担軽減のため、ゲーム内での睡眠を推進しております。これはゲーム内の睡眠時、現実でも脳に睡眠をさせるためです。ゲーム内時間にて二十時間以上の活動した場合、三時間以上の睡眠をとらなかった場合ステータスにはペナルティが加わります。同じくゲーム内での空腹時にもステータスペナルティが付きます。行動などにより空腹状況が変わり放っておくと餓死となります。しかし睡眠、空腹共にステータスに表示されません。なお宿でのログアウト中はゲーム内では睡眠とカウントされ空腹もリセットされます』
 マジでリアルっぽいのですな。ゲームだと思ってるとダメなのかも。
『五感についてですが痛覚以外は現実と同じです。痛覚のみシステムメニューから変更可能ですが、最大値は現実での八十パーセントまでですのでご確認ください。初期設定は五十パーセントです。そして公式でも通達の通りリアリティーを出すため、このゲームではHPバー等の表示がありません。体感で判断していただきますが、その感覚をつかむためにログイン時間合計が三百五十時間になるまでの間だけステータスバーが表示されますが、それ以降は表示されません。以上で初回起動時のインフォメーションを終了します。ではあなたの新しい人生が良いものでありますようお祈りいたします』
 アナウンスが終わると目の前に一つの扉があった。これを開けろということか。
 ドアノブの付いた扉。なんかファンタジー感がないアパートの扉みたいだ。ノブを回すとカチャリと音がして扉が少し奥に開いた。そのまま押すと眩しい光が飛び込んできて目を開けていられなくなって目を瞑った。



 目を閉じてしばらくすると瞼を刺激する光が無くなったのがわかったのでゆっくりと目を開いてみた。
 そして目を開けた先にあったのは――
「綺麗だ……」
 美しい街並み溢れる他種族の人、そして蒼白い輝きを放つ大きな月。
『ようこそニルスへ。ニルスは夜の支配する世界。欠けることのない月が魔素を活性化させ幻想的な明かりを造り出す――始まりの国ミルス。ミルス国首都、城下町ミルス』
 囁くようなアナウンスが流れ、耳に音楽が流れ始めた。それとともに街のざわめきも聞こえてくる。
 そんな世界に魅入っているといつの間にか横に人が立っていた。
「すげえな……」
 そう言って俺と同じく世界に魅入っている青年は、髪の色と瞳の色こそ違うが俺のよく知る人物だ。
「健次か?」
「てことはやっぱり優か」
 そう言った健次は俺をじろじろと眺めている。
「……なんだよ」
「いや、相変わらずの美少女っぷりだねぇ。性別判断がスキャナー任せだった昔だと確実に女性アバだぜ」
 かっかっか、と笑う健次を軽くにらんで言う。
「うるさいな……。性別は変わらないから別にいいんだよ」
 何時もならマニッシュに決めて男装の麗人となっているのだけど、今はデフォルトの服なので違和感がある。自分で見降ろしただけだが似合ってない気がする。
「それよりアレどうした? いじったか?」
 健次は俺の下半身を見ながら言う。それだけで何のことかわかるが、止めてほしい。とりあえず首を横に振って返事をした。
「優はいじる必要ないだろうけどな。俺は悩んだぞ。そりゃ男だし、大きいほうがいい。でもリアルに戻ると……なぁ」
 肩を落とす健次。大きかったのに現実では縮む、確かにそれはへこむかもしれないけど、その話題からそろそろ離れていただきたい。俺は健次の容姿に話を振った。
「あまり弄らなかったんだな」
「ああ。なんかめんどくさいし」
 二人の容貌はというと、俺は銀髪でショートカット。細めの輪郭でわりとくっきりした二重の奥の瞳はアメジストの様に輝いている。小さめの口の小顔は美少女と言える。ただ眉と目尻はちょっとキツメ。だからマニッシュが似合うとも言われたけど。後、現実より少し男っぽくなった気もする。……あくまで当社比ってやつだ。
 健次の方はというと、ピンクかかった朱でウルフヘア。角張ることのない輪郭に切れ長の目。瞳はルビーの様だ。口元はややニヤついているが中々の美形だと俺は思う。
 よく一緒にいるせいで女子の間で俺と健次の本が流通してると聞いたことがあるが止めてほしい。

「とりあえずステータス確認とフレンド登録しておくか」
「そうだな『ステータスオープン』」
 目の前に自分のステータスが表示される。

 ユル 人
 称号  
 装備 布の服、綿のパンツ
 筋力 G- 成長率 2% 
 体力 G- 成長率 1%
 敏捷 G- 成長率 3%
 器用 G- 成長率 2%
 知力 G- 成長率 1%
 総合攻撃力 G-
 総合防御力 G-

「初期だけど、低いな……」
「じゃ俺も『ステータスオープン』」

 キーヴ 人
 称号
 装備 布の服、綿のパンツ
 筋力 G- 成長率 3%
 体力 G- 成長率 2%
 敏捷 G- 成長率 1%
 器用 G- 成長率 2%
 知力 G- 成長率 1%
 総合攻撃力 G-
 総合防御力 G-

「優のと少し違うな。ランダムなのか」
「みたいだな。しかし分かりにくいステータスだよな。あ、あとゲームの中じゃユルで。じゃあフレンド登録しますかね」
「オッケー、俺はキーヴで。」
 拳をコツンと当てて笑い合う。そこに
「あれ? ユウとケン?」
 俺たちの幼馴染によく似た女性が立っていた。
「そうだけど……知香か?」
「そうよ。久しぶりね、終業式以来?」
 耳が尖っているのはエルフなのだろう。髪はくくってポニーテールにしている。薄いグリーンの髪とブルーの瞳以外はどう見てもチカにそっくりなのだが。
「「胸がある!?」」
 見事にハモった俺達にチカの拳骨が落ちた。
『アビリティ《物理耐性》修得』
「痛って……」
 殴られた頭を押さえながらシステムアラームを確認する。
《物理耐性:物理攻撃への耐性 体力の成長率の上昇》
 慌ててステータスを確認してみると体力の成長率が1%から2%に上がっていた。
「おお! これがアビリティ。健次も、じゃないキーヴも見てろよ」
 俺に言われキーヴもステータスを確認して目を見開いている。
「アビリティ! キター!!」
「うっさい! 無視すんな」
 知香にまた殴られる俺達でした。
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