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第十六話
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身体も反応も十分に成長したし、そろそろ次に行こうと思うが、その前に落ちて寝よう。明日に備えたい。予定の時間にはあと少しある。と言ってもリアルで言うと十五分もないけど。
街にもどるのに戦闘するのも面倒だし、木の上を移動しよう。森にいて気付いたんだけど木の上にいるとあまり敵に気付かれないらしい。移動するときも同じだった。初心者フィールドだけかもだけど。枝をよけて跳ばないとだし、時には枝を切り落としたりしないといけない。慣れるまでは大変だったけど慣れると移動が早く済んで楽だった。
「っくぁあ~……眠。さっさと街、ん?」
いくつもの気配が、かなりの速度で移動している。今まで森にいたけどこんな気配はなかった。何事かと思い気配のする方を凝視してみる。……見えた。
木の合間からだが見えたそれは、走る一人の人影とそれを囲んでいる二十匹前後のウルフだった。そういえば、森で人を見かけたのは初めてだ。
その影は走っていたが、前方に数匹のウルフが回り込んでいたのに気づき足を止めた。
その周囲のウルフも足を止め、円を描いて包囲していた。じわじわ縮む包囲網に火柱が立つ。どうやらあの人影は魔法をメインに使うらしい。よく見ると杖を持っている。炎に照らされた姿はどうやら女性だということが分かった。
いくらか火柱が上がり、ウルフ達の動きが鈍ったが確実に放置網は縮んでいた。
彼女は杖を構え接近戦に移るようだった。どうしようか、と悩んだがまだ敵は十数匹いる。もし見捨てて死んだとしたら後味が悪い。いらんお節介かもしれないが、と思いながら弓を構えた。
「火柱」
下から吹き上げる炎でワイルドドッグが燃えながら吹き飛んでいく。
魔術師として私はかなり成長したと思う。流石にテスターや初期陣には敵わないだろうけど、後発組としては結構進んでいるはず。
あの人に追いついて一緒に行動するために、よほどのことがない限りソロで身軽でいようと、ほとんどパーティーも組まずにここま来た。
魔法を避けて近づいてきたワイルドドッグには顎のかち上げからの脳天割りでとどめを刺す。
「ふん! もう昔の私じゃないんだから」
初めて森に入ったあの頃。魔法メインで戦っていた私は杖術がそんな得意じゃなかったけど、あの人を見て一緒にいるためには足りないと思った。だから杖術から棍術にして武器も物理と魔法の両方で対応できるようにした。
そんなこと言ってられない。負けて死に戻りなんてごめんよ。ペナルティもあるし何より痛い。
「てやあぁ!」
近づいて杖の先でウルフの頭を渾身の力で突く。上手く額に決まったらしく、「ギャン」と吠えると脳震盪でも起こしたのか倒れて動かなくなった。
休む間もなく横手から飛びかかって来たので突き出した杖をそのまま力任せに振り抜いた。ガツと手応えがあったが跳ね飛ばしただけで、距離を置いて様子を伺っている。ダメージがある内にと思い飛びかかったが躱され、逆に飛びかかられた。
「きゃぁ」
反射的に避けたがバランスを崩し、後ろに倒れてしまった。
「ギャ」
倒れてすぐにウルフの悲鳴が上がり、声のほうを見ると、先ほど飛び掛ってきたウルフの頭を矢が突き抜けていた。
すぐさま他のウルフ達も警戒したが、続けざまに三頭が同じ運命をたどった。
その隙に立ちあがり、周りを警戒するといつの間にか一人の女性がそばにいた。
「悪いけどこっちで終わらせるよ」
声と同時に目の前に一人の女性が立っていた。
「え?」
すぐさま彼女の姿が霞んだ。
「ガァ!」「ギュ」
声がしたほうを見ると彼女がいつの間にか二振りの刀でウルフの首を落としていた。
それからはあっと言う間だった。彼女の髪が月で反射するのか、はたまた彼女の刀の煌きか。銀光の煌きの先には彼女がいて、銀光により死が振りまかれていた。
「……綺麗」
私は銀光の筋を目で追い、彼女の舞踏を眺めていた。
いつの間にか戦闘は終わり、動くものは私と彼女の二人だけだった。
「あの! ありがとうございます。私」
「ああ、いいから。迷惑かとも思ったけど。悪いけど俺もう寝るから。じゃ」
それだけ言うと彼女はひらりと飛び上がり木に飛び上がってしまった。
「え、待って」
慌てて追いかけたけど、……早い。あっという間に見えなくなった。寝ると行っていたので街まで追いかけた。街についても姿は見えず、宿も分からなかった。でも門の近くにいれば会えるかも。
西と東……どっちに行けばまた会えるかな?
街にもどるのに戦闘するのも面倒だし、木の上を移動しよう。森にいて気付いたんだけど木の上にいるとあまり敵に気付かれないらしい。移動するときも同じだった。初心者フィールドだけかもだけど。枝をよけて跳ばないとだし、時には枝を切り落としたりしないといけない。慣れるまでは大変だったけど慣れると移動が早く済んで楽だった。
「っくぁあ~……眠。さっさと街、ん?」
いくつもの気配が、かなりの速度で移動している。今まで森にいたけどこんな気配はなかった。何事かと思い気配のする方を凝視してみる。……見えた。
木の合間からだが見えたそれは、走る一人の人影とそれを囲んでいる二十匹前後のウルフだった。そういえば、森で人を見かけたのは初めてだ。
その影は走っていたが、前方に数匹のウルフが回り込んでいたのに気づき足を止めた。
その周囲のウルフも足を止め、円を描いて包囲していた。じわじわ縮む包囲網に火柱が立つ。どうやらあの人影は魔法をメインに使うらしい。よく見ると杖を持っている。炎に照らされた姿はどうやら女性だということが分かった。
いくらか火柱が上がり、ウルフ達の動きが鈍ったが確実に放置網は縮んでいた。
彼女は杖を構え接近戦に移るようだった。どうしようか、と悩んだがまだ敵は十数匹いる。もし見捨てて死んだとしたら後味が悪い。いらんお節介かもしれないが、と思いながら弓を構えた。
「火柱」
下から吹き上げる炎でワイルドドッグが燃えながら吹き飛んでいく。
魔術師として私はかなり成長したと思う。流石にテスターや初期陣には敵わないだろうけど、後発組としては結構進んでいるはず。
あの人に追いついて一緒に行動するために、よほどのことがない限りソロで身軽でいようと、ほとんどパーティーも組まずにここま来た。
魔法を避けて近づいてきたワイルドドッグには顎のかち上げからの脳天割りでとどめを刺す。
「ふん! もう昔の私じゃないんだから」
初めて森に入ったあの頃。魔法メインで戦っていた私は杖術がそんな得意じゃなかったけど、あの人を見て一緒にいるためには足りないと思った。だから杖術から棍術にして武器も物理と魔法の両方で対応できるようにした。
そんなこと言ってられない。負けて死に戻りなんてごめんよ。ペナルティもあるし何より痛い。
「てやあぁ!」
近づいて杖の先でウルフの頭を渾身の力で突く。上手く額に決まったらしく、「ギャン」と吠えると脳震盪でも起こしたのか倒れて動かなくなった。
休む間もなく横手から飛びかかって来たので突き出した杖をそのまま力任せに振り抜いた。ガツと手応えがあったが跳ね飛ばしただけで、距離を置いて様子を伺っている。ダメージがある内にと思い飛びかかったが躱され、逆に飛びかかられた。
「きゃぁ」
反射的に避けたがバランスを崩し、後ろに倒れてしまった。
「ギャ」
倒れてすぐにウルフの悲鳴が上がり、声のほうを見ると、先ほど飛び掛ってきたウルフの頭を矢が突き抜けていた。
すぐさま他のウルフ達も警戒したが、続けざまに三頭が同じ運命をたどった。
その隙に立ちあがり、周りを警戒するといつの間にか一人の女性がそばにいた。
「悪いけどこっちで終わらせるよ」
声と同時に目の前に一人の女性が立っていた。
「え?」
すぐさま彼女の姿が霞んだ。
「ガァ!」「ギュ」
声がしたほうを見ると彼女がいつの間にか二振りの刀でウルフの首を落としていた。
それからはあっと言う間だった。彼女の髪が月で反射するのか、はたまた彼女の刀の煌きか。銀光の煌きの先には彼女がいて、銀光により死が振りまかれていた。
「……綺麗」
私は銀光の筋を目で追い、彼女の舞踏を眺めていた。
いつの間にか戦闘は終わり、動くものは私と彼女の二人だけだった。
「あの! ありがとうございます。私」
「ああ、いいから。迷惑かとも思ったけど。悪いけど俺もう寝るから。じゃ」
それだけ言うと彼女はひらりと飛び上がり木に飛び上がってしまった。
「え、待って」
慌てて追いかけたけど、……早い。あっという間に見えなくなった。寝ると行っていたので街まで追いかけた。街についても姿は見えず、宿も分からなかった。でも門の近くにいれば会えるかも。
西と東……どっちに行けばまた会えるかな?
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