New Life

basi

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第十七話

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 今日も朝から健次が来た。いや、昨日聞いていたから来るのは知ってたけど、来るのが早すぎるから。早く飯食ってゲームしたいからって五時に朝飯ねだりに来るな。あとインターホン押しすぎ。五月蠅いし壊れるわ。
 飢えた健次に餌をやって、時間が早い気もしたけど六時半にログインした。
 今日は牧場へ行ってみよう。と思ったのだが、まだゲームでは夜が明けてなかった。夜、いやもう明け方近いから早朝? の狩りもいいかもしれない、と思ったけど今朝は早く起こされたし、昨日ログアウトしてから二時間くらいしか寝てないのでこっちで少し寝ようと思う。
 
 まぁ、そんなことをしていると当然寝過ごしたりするわけで……。もうお昼に近いです。現実時間で一時間くらい寝たかもしらん。やらかした。
 さっさと腹を満たしてから宿を出た。牧場に行くなら南門が近かったはず。
 南門は東門よりかなり人が少ない。まあ、牧場くらいしかないからこんなものかもしれないけど。
 ただ牧場に行くと南門よりは人がいた。牧場には多くの馬と羊がいる。その他にもなんだか動物園の触れ合いコーナーみたいな場所があって、ほとんどの人がそこに群がっていた。多くは女性で、カップルっぽい人たちもいた。でもNPCが多いみたいだ。俺も混ざってモフりたい。でも今日ここに来たのは別の目的だ。動物との触合いは目的が終わってから堪能しよう。
 このゲームでは馬などの騎獣を移動手段とできる。世界を開拓するのには必要なものだろう。その騎乗技術を得られるのがこの牧場だと公式にはあった。でもお使いクエストとかで街を回ってみた時には馬を売っているところはなかったけど。
「すいません、馬に乗りたいんですが」
 羊の世話をしていた牧場主らしき人に声をかけると1000ガルだと言われた。意外に高い? ちなみに道場での戦闘アビリティは一つのアビリティにつき100ガルだった。なので十倍。動物相手だし仕方ないのかもしれないが。
 ともあれ、支払ったら馬を引っ張ってきて渡された。特に何も言わないけど、乗れということだろうか?
 手綱を受け取ると牧場主はそのまま何処かへ行ってしまった。
 無愛想なNPCだ。乗り方のレクチャーも何もなしだ。
 かなり大人しく、俺がうろうろしても暴れず、触っても平気だった。わからないなりに何とかよじ登って跨がることに成功したが、さて此からどうするのか。
「……なあ、お前乗り方教えてくれないか?」
 馬の背をポンポンと叩いて聞いてみる。馬に話しかけるとか傍目に見たらどうなんだろう。
 でも無茶して暴走でもされると困る。
 悩んでいると馬が此方を見て「ブフン」とため息をついた。馬にも飽きられてしまったのかと思うと泣きたくなる。
 落ち込んでいると馬が首を「やれやれ」といった風にふると歩き出した。
「うぅ……どう見てもバカにされてる」
 ゆっくりかっぽかっぽと歩いているが俺が動かしている訳じゃない。
「なぁ、お前のご主人の所に行ってくれないか? 乗り方とか聞きたいんだ。頼むよ」
 もう開き直って話しかける。すると「フン」と息をつくと、向きを変えて歩き出した。あのNPCの去って行った方向だ。
 どうやら言うことを聞いてくれたのだろう。しかし言葉がわかるのか? ファンタジーだ。
「悪いね。ありがとう」
 ポンポンと背中を叩くと、「ヒッヒッヒ~ン」と鳴いた。やっぱり馬鹿にしてるのか?


 馬はどんどん崖の方へ近づいていく。要らん荷物は崖にでも落そうというのだろうか。崖のふちが目に見えてわかるあたりまで来ると今度は森の方へ歩く馬。……森は危険なんじゃなかろうか。そんなことを思ったが馬はどんどん進む。
 森をしばし進むと崖がだんだん緩やかになっている。するとその斜面の途中にあるわずかな平地に小さな小屋があるのを見つけた。こんなとこに人が住んでいるのか?
馬は斜面のふちで止まり首を捻って俺に顔を向けた。そして顎? 口? を何度も小屋へ向けて振る。あの小屋へ行けと示しているようだ。
 俺は馬からどうにかずり落ちて、目の前の小屋に向かう。何度も斜面から滑り落ちそうになりながら小屋へ行くと、牧場主に驚いた顔で出迎えられた。
「……どうやってここへ来た」
「いや、あいつに頼んだら連れてきてくれた」
 今降りてきた斜面の上で草をのんきに食っている馬を差した。その様子を見て眼を丸くする。そしてニヤリと笑ったのだ。
「珍しく筋がいい。それで俺に何の用だ?」
 無愛想だった牧場主が話しかけてくる。これはイベントの発生かもしれない。
「いや、馬の乗り方とか教えてほしいんだけど」
「ふん。いいだろ。少し教えてやる」
 そう言うと乗馬指導が始まった。

 小屋の裏手に大周りになるが道が付いていた。そこから斜面を登りながら話をする。牧場主はペイドというらしい。
「良いか? 馬をただの乗り物だとか思うなよ。コイツらは友だ。一緒に旅をする戦友なんだよ。鞭や手綱でどうにかしよう何てやつらは駄目だ。あれじゃあただの移動手段にしかならん」
 ペイドと名乗った牧場主の目が鋭くなる。
「あんな奴等に乗られる馬が可哀想だぜ。良いか? 戦闘で馬が言うことを聞かない奴等は馬に乗ってるんじゃない、馬が乗せてるんだ。馬が乗ってる奴を信用してないから戦闘では言うことを聞かない。死にたくないからな。さっさと逃げるに限るさ」
 ニヤリと笑って俺の肩をバシバシ叩く。
「だがお前はアスに、ああ、アスってのはお前が乗ってた馬だ。アスに少しだけ信用された。だから普段は危険な森の中、ここにこれた。しばらく牧場に居てコイツらと仲良くなれ。そしたら乗り方から何から教えてやる」
『クエスト《馬と友達になれ》発生』
 本格的にイベントらしい。どうやら、ここに小屋を建てたのはクエストを受ける資格があるかどうかを試すためらしい。それから俺の牧場生活が始まった。

 仲良くしろと言われたが何をしていいのか分からず、取り敢えず戯れた。
 ブラシかけたり、散歩したり水浴びしたり。馬だけでなく羊も一緒に戯れた。もちろん触合い広場みたいなところにも行ってモフったりもした。もちろん仕事っぽいこともしている。
「ペイドさん。こいつの毛刈っていい?」
モコモコの毛玉の様になった羊。ちょっと暑苦しそうだった。
「そいつに聞け。そいつがいいと言えばいちいち俺に許可取らなくていい」
 ペイドさんにとっては牧場の動物達の意志が優先順位は高いらしい。
「なあその毛うっとうしくないか? ついでにその毛も欲しいし。ちょっと刈らせてくれよ。ほら、こっちに来て」
 来い来いと手招きするとひょこひょこと寄ってきた。捕まえてゴロンと転がすと、転がったまま此方を見て「ンメェ~」と鳴いて大人しくなった。
「おぉ、サンキュー」
 毛をわしわしと撫でてやると耳をピクピクさせて「ェ~」と小さく鳴いた。
「……意外と可愛い」
そんなことをしながら牧場で生活していた。
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