だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ

文字の大きさ
328 / 866
第三章・傾国の王女

291.ある精霊の執着

しおりを挟む
「王よ、とても嬉しそうですね」
「もう本っ当に嬉しい。アミィって体温低めなんだけど、それもちゃんと肌で感じられて良かったなあ。あの上目遣いの可愛さといったら!」
「そうですか。いずれ我等が姫君となる御方ですし、一度お会いしたいですね」
「出来る限りお前達には会わせたくないんだけど、これからはそうもいかないし……フィンなら別に会わせても大丈夫か。また今度挨拶の場を設けるよ」
「は、有り難き幸せにて」

 エンヴィーと同じく仕事を押し付けていたフィンが、いつも通りの無表情でボクの話に相槌を打つ。
 制約の破棄についての上座会議で、既にアミィの事は最上位精霊達に話した。ボクが星王の加護ステラを与えた精霊の愛し子──それを最上位精霊達はボクと同等の地位や存在と認識し、精霊達の姫……星空の一番星エストレラと呼ぶようになったのだ。
 だからどいつもこいつもアミィをエストレラと呼ぶのである。
 まぁ、それはボクの許可無しにお前達がアミィの名を呼ぶなって言いつけたからなんだけどね。
 なので最上位精霊達はアミィの存在を知っているし、ボクがあの子の為に破棄したいくつかの制約から、ボクがいずれアミィを精霊界に連れ帰ろうかなーと考えている事も察したらしい。
 その為、気が早いと思うけどこうやって姫君と呼んだり、一度会いたいと言い出す奴が増えて来たのだ。勝手に会ったら殺すって脅したから、アミィに勝手に会いに行って迷惑かけるような事にはならないと思うけど。

「まーでも、確かに一度顔合わせの機会は用意しておいた方がいいんじゃないですか? 最上位精霊の中には人間嫌いな奴もいますし、いざ姫さんが精霊界に来た時にじゃなくて、前もって姫さんのいいところを教えておくのはアリだと思いますよ」

 濃い隈を引っ提げて、書類をペラペラと捲るエンヴィーが妙案を口にした。

「エンヴィーの案には一理ありますね。少しでも姫君の負担を減らす工夫は凝らすべきでしょう。時に王よ、姫君はいつ頃精霊界にお越しになるのでしょうか? または、いつ頃完全な精霊化を果たすのでしょうか?」

 ずい、と目と鼻の先まで詰め寄って、フィンが大真面目に問うてくる。それにボクは、少しだけ視線を泳がせた。

「……そのうちかな。向こう百年以内には、多分、来ると思うよ」

 ボクの煮え切らない返事にフィンは眉一つ動かさず、

「具体的な数字を提示して下さいませんと、我々としても準備のしようがないのですが」

 ズバッと更に切り込んで来た。こういう空気を読めない所は昔から全然変わらないなこの男!

「……具体的な時期は分からない。いつ頃アミィが精霊化して、精霊界に来るのか……それはあの子次第だから」
「何故です? 王自ら加護をお与えになった相手なのですから把握しきれない、なんて事はまず有り得ないと愚考しますが」
「うっ……」

 フィンの放つ正論と不可解の眼差しが、ボクの心に攻撃する。

「……だよ」
「申し訳ございません、王のお言葉を聞き逃すなどという罪を犯してしまいました」
「…………たから……ん……だよ」
「王に二度も同じ言葉を繰り返させただけでも許されざる事だというのに、またもや俺は……」

 明らかにボクの声が小さい事が原因なのに、フィンは頑なに非は自分にあると言うしボクを咎めようとは微塵も考えないらしい。
 フィンのこういう盲信的なところ、昔からちょっと苦手なんだよね。

「──本人の同意なく勝手に加護を与えたから、バレないように加護が発動しないようにした。それに伴い精霊化もかなり進行が遅れてるんだよ」

 気まずくて、彼から完全に目を逸らす。
 これにフィンはピタリと体を制止させ、眉を顰めた。

「……まさか、姫君本人の意思を無視して加護を与えたと? 一体貴方は何をなさっているのですか?」
「おいやめろそんな目でボクを見るな。ボクだって当時は必死だったんだよ」
「貴方はご自分の加護をなんだと思ってるのですか? 星王の加護ステラを持つ人間など前代未聞の存在にして、精霊界に新たな時代を吹き込む新星なのですよ? それを王は一時の激情で?」

 近い近い近い。そんなにも目を見開いて詰め寄らないでくれ。
 フィンの蒸し焼くような圧と視線が、ボクの体に痛く突き刺さる。少しでも身動きすれば、すぐに胸と胸が当たってしまうような距離で……ボクは必死にフィンから顔を逸らしていた。

「そーだそーだ! フィンさんもっと言ってやってくれ!!」

 なんだあいつ。もっと仕事増やして欲しいのか、エンヴィーの奴は。
 ギンッ、と一度エンヴィーを睨むと、奴は大袈裟に肩を跳ねさせて借りて来た猫のように大人しくなった。

「王よ……本人の同意なく、という事は姫君には精霊化する意思も無いという事ですね? 我々は王より姫君の話をお聞きしてからというもの、一番星エストレラの輝きをこの目にする事を心待ちにしておりました。それなのに…………我々は、王に弄ばれていたのでしょうか?」

 距離感を見誤った男がそのままの距離で淡々と、されど静かに怒りを蓄えて捲し立てる。
 くっ、良心を責めてくるじゃないか……!

「本人の意思は無視したけど、でもいずれ必ず、彼女を精霊界に連れて来る。ボクはあの子を絶対に死なせたくないから。一体そこまでどれだけの年数がかかるかは分からないけど、そこを違えるつもりは無い。必ず、いつか同意を得るつもりだよ」

 ぎこちない動きで顔をフィンの方に向ける。彼とは身長も近いので、まさに目と鼻の先。互いの呼吸さえ感じられる程に近く、フィンの空虚な瞳を見つめてボクは言い切った。
 この発言にフィンは渋々納得し、「……ならば、問題ありません」と言って一歩後ろに下がった。
 いつか……アミィが大人になった時、ボクは彼女に加護の事を伝え、精霊となる事や精霊界に連れ帰る事について同意を得るつもりだ。
 ボクが一度加護を与えた時点で精霊化は避けられない。そして精霊が契約も無しに人間界にい続けるのは双方にとってもあまりいい事ではない。
 エンヴィーのように人間の規格に自身を落とし込んでいようとも、あまり長期間の滞在は褒められた事ではない。
 つまり、アミィはどちらにせよ精霊界に行くしかないのだ。
 流石に同意無しでそれは可哀想だと思って、精霊化を極限まで遅らせているけれど……アミィが同意してくれたならば、それもやめてすぐさま彼女を精霊にするつもりだ。

 だって、ボクはアミィに死んで欲しくないから。
 これからもずっと一緒にいたい。永遠に、未来永劫彼女と一緒にいたい。ボクがアミィを幸せにしたい。
あの子が望む幸せを、他の誰でもないボクが与えてあげたい。
 確かに本人の同意はまだ得てないけれど、でも、きっとアミィならボクと一緒にいる事を選んでくれるから。
 君が恐れる死を、ボクがなくしてあげる。
 君が望む幸せを、ボクが用意してあげる。
 だからボクを選んでよ、アミィ。
 星は瞬きいずれ消えるものだけど、君の輝きだけは何があろうもこの世から消させない。永遠のものとしてみせるから。
 ボクがずっとずっと君に会いたかったように、君だってボクに会いたがってくれてたんだろう?

 ならば、きっと──……ボクの想いだって、受け入れてくれるよね?
しおりを挟む
感想 101

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...