弱輩者の第三王子~僕なんかに執政できるんですかね。~

拙糸

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第一章 裏切りの王都編

第8話 真実①

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「まさか俺がお前なんかにやられるとは思わなかったな。ジークとマクドルには、精神を弱くし惑わせる薬をかがせ、大臣たちにも魔法をまいたのだがな。計算外だった。まさかホスロが引退していないとは思わなかったな。」

そう言い、ホスロを睨む。ホスロはどうして予定よりも退職するのを先伸ばしにしたのだろうか。

「理由は簡単ですぞ、タイト様。さて、先に本当のことを言うと、私は、本当はタイト様に私の領地をお渡しするつもりは1ミリもなかったのですよ。」

別にタイト様のことが嫌いだからとか、そういう訳ではないですぞ。と、ホスロは釘をさす。

「あなたが前に、私が引退するときは、タイト様も引退なさるなんてことを仰られていたのでね。私はタイト様の補佐役として、一緒に暮らすつもりでした。ところが、急にあなたが政治を学びたいとおっしゃられてね。色々なことを教えるのは、引退したあとにでもできますが、色々と手を回すことができるのは、私が大臣として在任している時のみです。だから、私の知識をあなたに全てお渡しして、私の領地をあなたにお任せしようかなと思ったのです。そして、引退しよう。そう考えていたのです。」

ほっほっほっ、とホスロは笑う。

「あなた様は、信頼にたる人物。心持ちも素晴らしい人物。リーダーとして、みなのために采配を振ることができる人物だ。何よりも、仲間達があなたについていくだろう。私は、そういう人に、これから先のこの国を、未来を、託したいのですよ。」

この12年、僕が小さすぎて分からないときから面倒をみてくれたおじいちゃんのような人が、僕に対してこのような評価をしてくれて、そして、たくさんの期待をしてくれて、本当に嬉しかった。

「ふっ、ご立派な主従関係だな。その主従関係こそが、この計画に邪魔だった。」

マージは、恨みたっぷりにそう言う。

「数十年前、俺もお前のようにズール帝国へ最大の敬意を払い、忠誠を誓い、お国一筋に剣を振ってきた。それを認められ、帝王直々に爵位を与えられたときには、本当に嬉しかった。あと一歩で、一席しかない大臣になれたんだ。」

だんだん表情に陰りがさす。

「…そんな俺を簡単に切り捨てやがった。俺は、ある時国の情報を他国に引き渡したという事実無根の濡れ衣を着せられた。それは、俺と共に忠誠を誓い、切磋琢磨し、国のために尽くしてきた仲間の陰謀だった。『帝王! 帝王は私のことを助けてくれますよね?』必死に帝王に訴えた。だが、全てが無駄だった。『こやつは裏切り者だ。』そう言い、俺の首を切り、帝国から永久追放した。」

マージは、自暴自棄になり笑う。

「今まで尽くした忠義に対する恩義は?報いは?
…そんなもの、何もない。ひたすら努力した結果も何も残らない。あるのは、〈裏切り者〉という烙印だけ。
あっはははは!笑うよなぁ?事実無根であれ、簡単に態度がひっくり返るんだもんなぁ。」

憐れだ。聞いている限りかなり不憫な人生を送ってきたのだろう。そのせいで、忠誠心を失ったにちがいない。
誰にも心を開かないことを決めたのだろう。

「だが、そんな俺をお前の親父、ルークは雇ってくれた。ルークは、諸国の王から評価されるほどの偉大な人物だ。俺は、彼のもとでまたやり直そう、忠誠を尽くして頑張ろう、そう思った。ルーク、いや、ルーク様の下で働いてみて、帝王と比べ物にならないほどの器を持つお方だと思った。俺は、毎日が楽しかったんだ。そして、王宮内で働いていた女性と結婚し、幸せな生活を送っていた。だけど…」

そう言い、彼は顔をうつ向ける。
父のことを語るマージは、本当に清々しい顔をしていた。彼は本当に忠義を尽くしてくれていたのだ。様々な功績を残した。周りの大臣、貴族からも『忠臣だ』と言われていたのだ。

「数日前、仕事をしていた時、執務室に手紙が届いた。差出人は、[ズール帝国 執政官]。俺の政敵。俺を、帝国から追放される原因を作った張本人だ。そんな奴が、俺なんかに何のようだろう。少し警戒しながら手紙を開くと、ボイスメッセージが入っていた。再生すると…」

『お願い!止めてくださいっ!助けてっ!』

「俺の妻の悲鳴だった。奴らは、帝国は、俺の妻を人質としてとっていた。本文の内容は…」

『お前の妻は俺達が捕まえている。返して欲しければ、お前の今の主、ルーク・タールの首を持ってこい。だが、決してお前がやったという証拠を残してはならない。残しても、人に塗りつけろ。』

「…卑怯な内容だった。かつて奴がやったことを、俺にやらせようというのだ。俺は、どうすればいいのか分からなかった。1人で帝国へと潜入しても、自分の顔は割れているからすぐに捕まるだろう。本当にどうすればいいのか、分からなかった。辛かったんだ。」

マージの目に、涙がたまる。

「その時、執務室に誰かが入ってくる気配がした。俺はすぐにその手紙を〈隠匿魔法〉で隠した。入ってきたのは、ルーク様だった。」

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