弱輩者の第三王子~僕なんかに執政できるんですかね。~

拙糸

文字の大きさ
34 / 67
第三章 騎士学校、留学(?)編

第9話 技量はいかに

しおりを挟む
学校の中庭、そこは、訓練の授業で使われる闘技場になっている。歴代の有名な卒業生は皆、ここで行われる実技試験を突破している。つまり、この試験では、これからの将来が安泰かどうかが決まるのである。下手なことはできない。
だから、僕は憂鬱だった。別に、魔法使役が苦手なわけではない。
僕が今一番懸念しているのは…

「よし。準備ができたら始めるぞ。」

ジョンネル・クレオスに僕のギフトがバレて、今回の計画が水の泡になることだ。



――数日前

「え、実技試験で僕の正体がバレるかもしれないって本当?」

マージは、ため息をつきながら言う。

「ええ…。面接試験終了後、そのまま実技試験に突っ込むのは、タイト殿もご存知ですよね?」
「うん。少しくらいは休ませてくれよっていう生徒の声が、絶えないとは聞いたことがある。」
「その実技試験では、主に魔力測定や、適性検査、そして、教官との魔法勝負が行われるのですけど…」

何処かで手に入れたのであろう新聞を、机の上に広げる。

「これは……『帝国騎士学校教諭、実技試験で〈ムーン〉のスパイを見破る。』!? これって、どういうこと!?」
「自信の気配を消し、他人のふところに潜り込むことが得意な〈ムーン〉のスパイでさえ、その気配を察知されたみたいですね。多分、魔力を見る目が優れているのでしょうね。」
「つまり、素人しろうとの僕なんかが使役する魔法じゃ、見破られる可能性があるということ?」
「いや、それはないと思います。私の家系魔法をなめないでいただきたい。」
「あ、ごめんごめん。」
 
その魔法を使い、マージの一族はタールランドの争いで勝ってきた、所謂いわゆる隠密の家系だ。その魔法を破れるような魔眼を、相手は流石に持ち合わせていないだろう。

「…それでも、いくらか心配は残るんです。」
「なぜに?」
「相手が、本当に〈ムーン〉と組んでいるとしたら?」
「…………ああ、そっか。〈ムーン〉から鍛えられている可能性も捨てきれないのか。」
「だから、魔法を使役する際には、細心の注意を払ってほしいのです。埃一つ、残さぬように。」



それにしても、相手が〈ムーン〉と本当に組んでいるとなったら、厄介だろう。面接という形にはなったが、相手と話してみて、なんとなく底の見えぬ男だと改めて感じた。彼は一体、何を企んでいるのだろう?

「今回の実技試験では、貴様の魔法適性検査をチェックし、同時に魔力測定を行う。」
「…教官との勝負はやらないのですか?」
「何を言っている?………戦いながらそれを見るのだ。」
「ええ………」

まずいな、戦いながらだと、隠匿魔法をかけながら走ることになるだろう。そうなれば、魔力が減少し、倒れてしまうかもしれない。根源魔法とはいえ、少しは自分の気を使っているのだ。どうしたものか…

「それでは、ジョンネル・クレオス大臣による、タガル・カムチャの実技試験を始めます。」

先生の宣誓の声が響く。…別に駄洒落だじゃれではない。

「まずは俺から行こう。…………ぬぁっ!」
「うわっと!」

あぶねぇ、あいつ僕を殺す気か? しょっぱなから氷の槍を地面から出すとは。

「そっちがそうなら、こっちは……“スキル発動”!」
 
僕の周りに魔法陣が現れる。そして……

「“メガファイア・α”!」

そこから、たくさんの巨大な火の玉が現れる。それらは、ジョンネルをひたすら追い回す。

「ほほう、火属性魔法の上位互換か…自分で魔法を錬成できるとは、大したものだ。」
「えーと、一応スキルの力を借りてやってるんですけどね(笑)」
「だとしても、素晴らしい手腕だ。」

まずい、ちょっとやりすぎたかな…氷の槍を出されたことに、少しキレすぎたかもしれない。落ち着け、自分。

「さて、今度はこっちの番よ。―――電撃斬ライジングカッター!!」

空から雷が落ち、それが僕目掛けて降ってくる。防御魔法をかけなければ、即死だろう。…なんとも危ない魔法を使うなぁ。
ひょいひょいとかわしながら、小さな火炎弾ファイアボールを放つ。

「ふっ…小癪な野郎だ。もっとドンと来れば良いのに。」
「僕は、こういうやり方が好きなので………ねっ!」
「よっと!……あぶねぇな」

笑いながら、火炎弾ファイアボールを避けられる………ちっ。

「ふっ、口だけは達者だったが、実技はまだまだなようだな!」
「それはどうでしょう……………あなたの周りに書かれている術式を見ても、同じことが言えますか?」
「なにっ!?」

ジョンネルは、周りを見渡す。そこには、極大魔法の術式がくっきりと書かれており、いつでも展開可能になっている。

「勝負ありましたね。」
「この短時間で俺の目を欺き、このような複雑な魔法陣を書き上げるとはな…恐れ入った。」

ジョンネルは地面に座り込む。

「私の敗けだ。……全面的な敗北を宣言しよう。」
「…………よっしゃぁあ!!」

僕は空高く、拳を突き上げた。完全勝利だ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

奇跡の少女セリア〜私は別に特別ではありませんよ〜

アノマロカリス
ファンタジー
王国から遠く離れた山奥の小さな村アリカ… そこに、如何なる病でも治してしまうという奇跡の少女と呼ばれるセリアという少女が居ました。 セリアはこの村で雑貨屋を営んでおり、そこでも特に人気な商品として、ポーションが好評で… 如何なる病を治す…と大変評判な話でした。 そのポーションの効果は凄まじく、その効果は伝説のエリクサーに匹敵するという話も… そんな事から、セリアは後に聖女と言われる様になったのですが…? 実は…奇跡の少女と呼ばれるセリアには、重大な秘密がありました。

処理中です...