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第三章 騎士学校、留学(?)編
第15話 シーナの過去
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コンコン…ノック音がしてすぐに、扉が開いた。
「あら、ホスロ先生……と、タイトじゃない? こんなところでどうしたの?」
「なんだ、シーナか…」
「シーナか…じゃなくて、シーナ先生でしょ?」(グイッ)
「痛い痛い!」
頬を思い切り引っ張ってきた。のっけからなんだよ、もう。
「あのさ、シーナ…先生、僕はタイトじゃなくてタガルだよ。(協力してくれ、頼むから。)」
「分かったわよ。(後でなにかもらわなきゃね♥️)」
はぁ。丸め込むのにも手間がかかる。もともとシーナはタールランドで働いていた人間だ。だから、僕が一体誰なのかが、まずシーナにはバレている。サガミに頼んで、シーナ以外の教員には箝口令をしいてもらった。よって、僕の正体が他の人にバレることは今のところない。(一度バレかけたが。)
「次の授業って、シーナ先生が担当だよね? 僕もついていっていい?」
「それは構わないけど、ホスロ先生との話は終わったの?」
「とりあえず大丈夫。」
ホスロに向けてウインクする。ホスロは困ってるけど。
「じゃあ、ホスロ先生。私たちは、次の授業があるので、お先に失礼するわね。」
「おお、分かりました。タイ……じゃなくて、タガル。この後の授業にも励め。」
「分かったよ、ありがとう。」
ホスロの教員らしい台詞を聞き、僕は次のクラスへと向かった。
◇
「そういえば、タイトに私の話ってしたことあったかしら?」
「うん?……小さい頃に聞いたことあったと思うけど、あまり覚えがないな。」
「そう。聞きたい?」
「そうだね。久しぶりに聞いてみたいな。」
廊下を歩きながら、話をする。周りには誰もおらず、僕たちだけである。
「私の出身がサガミさんと同じナスルなのは、タガルも知ってるよね?」
「それはなんとなくだけど、謁見の間で、父さんの前で話していたのを覚えているよ。」
「じゃあ、ナスルのことは覚えてる?」
「うん。覚えているさ。忘れもしないよ。」
数年前、ズール帝国は真っ二つに別れて大戦争を起こした。勢力の一つは、今のズール帝率いる帝国軍。そしてもう一つは、その兄が率いていた北ズール軍だ。もともと彼ら二人は仲が良かったのだが、先帝亡き後、その跡継ぎを巡って大喧嘩になった。所謂、お家騒動ってやつだ。
政治方針や考え方の違う二人は、それぞれ信頼できる家臣や仲間たちを集め、戦いを各地で起こしていった。最初は、北ズールが攻勢だったのだが、ズール帝がこう命令したために、その勢力図は一切変わった。
『周辺諸国に、我が帝国に従うように服従勧告を出す! 従わぬ国も武力を以て制す!』
こうして自分の陣を増やすことによって、兄のハーシー・ズールに対抗しようとしたのである。たが、兄も負けていなかった。
『弟のやることは間違っている。それを正すためにも、周辺諸国に協力を要請したい!!』
兄は要請、弟は強制。その器の違いは、明白なものになった。ズール帝国側についた者もいたが、北ズールに与した者の方がやはり多かった。
ナスルも、その一つだった。
「たしかナスルの王ジヴィアは、これから先の政治を考えて、北ズールに協力したんだよね?」
「そうよ。私はその時、城で働いていたのよ。秘書としてね。」
それは初耳だ。僕は聞いたことがない。
「じゃあ、ジヴィアの側近も務めたことがあったの?」
「そうよ。」
「へえ………それじゃあ、“勇者の門”のこと、知ってる?」
「勿論よ。当たり前じゃない。あの時側にいたんだから。」
「そっか。」
僕は大きくうなずく。納得がいった。
「じゃあ、サガミと一緒に逃げたの?」
「ううん。戦闘員以外は、みんな国外退去させられたから。」
「そっか。」
しばらく、無言の時間が続く。
「タイト、私ね、本当はタールランドに戻りたかったんだ。」
「どうして戻らなかったの? 僕らは歓迎するのに。」
「そう。」
シーナは、悲しい表情を浮かべる。
「(ボソッ)私なんかに、戻る資格なんて……」
「ん? どうしたの?」
「…ううん。なんでもない。さっ、早く行きましょ。みんな待ってると思うわ!」
再び、元の表情に戻ったが、なんとなくまたま何処か引っ掛かるような顔をしていた。
僕は、結局複雑な心境のまま、今日の授業を終えた。
◇
水の滴る洞窟。黒フードの集団が、一人の男の前にひれ伏し、そして集団の一番前で、 豪華な装飾をつけた幹部らしい人物が片ひざをつけ、報告していた。
「……なに? ホスロが調査員かもしれないだと?」
男の傍に立つ大幹部らしき者が、声を荒げた。
「はい。我々との繋がりを疑い、あらゆる所に調査をかけている模様です。」
幹部は、淡々と答える。
「ぐぬぬ、折角帝国議会に我が忠実な同士を送り、やっとその実権を握ることができるようになったというのに! …外交大臣サガミはなにやら不穏な動きをするし、他国に助けを求めるし、タイトは留学してくるしっ!!」
「大幹部サマ! 落ち着いてください!」
わーわーと言い争っている。
「まあまあ二人とも、落ち着いてください。〈ムーン〉の構成員として、もっと品のある行動をしてくださらないと…。」
「…っ、大変申し訳ございません。カルメン様。」
指導者カルメン・タールは、不気味な笑いを浮かべていた。
「それにしても、あの“弱輩者”のタイトがここまで我々を嵌めるとは…。なかなかやるじゃないですか…。」
洞窟の奥、なにやら怪しげな機械を触りながら、呟く。
「『破滅の願い』を叶えるために、我々はここで手を引くわけにはいきません。作戦を成功させるために、帝国にのりこみましょうか。」
「ま、まさか。アレを使う気では…」
「当たり前じゃないですか。」
ふっふっふっと笑い、天井を見上げる。
「本気の相手には、本気で応えないと、ね。」
「あら、ホスロ先生……と、タイトじゃない? こんなところでどうしたの?」
「なんだ、シーナか…」
「シーナか…じゃなくて、シーナ先生でしょ?」(グイッ)
「痛い痛い!」
頬を思い切り引っ張ってきた。のっけからなんだよ、もう。
「あのさ、シーナ…先生、僕はタイトじゃなくてタガルだよ。(協力してくれ、頼むから。)」
「分かったわよ。(後でなにかもらわなきゃね♥️)」
はぁ。丸め込むのにも手間がかかる。もともとシーナはタールランドで働いていた人間だ。だから、僕が一体誰なのかが、まずシーナにはバレている。サガミに頼んで、シーナ以外の教員には箝口令をしいてもらった。よって、僕の正体が他の人にバレることは今のところない。(一度バレかけたが。)
「次の授業って、シーナ先生が担当だよね? 僕もついていっていい?」
「それは構わないけど、ホスロ先生との話は終わったの?」
「とりあえず大丈夫。」
ホスロに向けてウインクする。ホスロは困ってるけど。
「じゃあ、ホスロ先生。私たちは、次の授業があるので、お先に失礼するわね。」
「おお、分かりました。タイ……じゃなくて、タガル。この後の授業にも励め。」
「分かったよ、ありがとう。」
ホスロの教員らしい台詞を聞き、僕は次のクラスへと向かった。
◇
「そういえば、タイトに私の話ってしたことあったかしら?」
「うん?……小さい頃に聞いたことあったと思うけど、あまり覚えがないな。」
「そう。聞きたい?」
「そうだね。久しぶりに聞いてみたいな。」
廊下を歩きながら、話をする。周りには誰もおらず、僕たちだけである。
「私の出身がサガミさんと同じナスルなのは、タガルも知ってるよね?」
「それはなんとなくだけど、謁見の間で、父さんの前で話していたのを覚えているよ。」
「じゃあ、ナスルのことは覚えてる?」
「うん。覚えているさ。忘れもしないよ。」
数年前、ズール帝国は真っ二つに別れて大戦争を起こした。勢力の一つは、今のズール帝率いる帝国軍。そしてもう一つは、その兄が率いていた北ズール軍だ。もともと彼ら二人は仲が良かったのだが、先帝亡き後、その跡継ぎを巡って大喧嘩になった。所謂、お家騒動ってやつだ。
政治方針や考え方の違う二人は、それぞれ信頼できる家臣や仲間たちを集め、戦いを各地で起こしていった。最初は、北ズールが攻勢だったのだが、ズール帝がこう命令したために、その勢力図は一切変わった。
『周辺諸国に、我が帝国に従うように服従勧告を出す! 従わぬ国も武力を以て制す!』
こうして自分の陣を増やすことによって、兄のハーシー・ズールに対抗しようとしたのである。たが、兄も負けていなかった。
『弟のやることは間違っている。それを正すためにも、周辺諸国に協力を要請したい!!』
兄は要請、弟は強制。その器の違いは、明白なものになった。ズール帝国側についた者もいたが、北ズールに与した者の方がやはり多かった。
ナスルも、その一つだった。
「たしかナスルの王ジヴィアは、これから先の政治を考えて、北ズールに協力したんだよね?」
「そうよ。私はその時、城で働いていたのよ。秘書としてね。」
それは初耳だ。僕は聞いたことがない。
「じゃあ、ジヴィアの側近も務めたことがあったの?」
「そうよ。」
「へえ………それじゃあ、“勇者の門”のこと、知ってる?」
「勿論よ。当たり前じゃない。あの時側にいたんだから。」
「そっか。」
僕は大きくうなずく。納得がいった。
「じゃあ、サガミと一緒に逃げたの?」
「ううん。戦闘員以外は、みんな国外退去させられたから。」
「そっか。」
しばらく、無言の時間が続く。
「タイト、私ね、本当はタールランドに戻りたかったんだ。」
「どうして戻らなかったの? 僕らは歓迎するのに。」
「そう。」
シーナは、悲しい表情を浮かべる。
「(ボソッ)私なんかに、戻る資格なんて……」
「ん? どうしたの?」
「…ううん。なんでもない。さっ、早く行きましょ。みんな待ってると思うわ!」
再び、元の表情に戻ったが、なんとなくまたま何処か引っ掛かるような顔をしていた。
僕は、結局複雑な心境のまま、今日の授業を終えた。
◇
水の滴る洞窟。黒フードの集団が、一人の男の前にひれ伏し、そして集団の一番前で、 豪華な装飾をつけた幹部らしい人物が片ひざをつけ、報告していた。
「……なに? ホスロが調査員かもしれないだと?」
男の傍に立つ大幹部らしき者が、声を荒げた。
「はい。我々との繋がりを疑い、あらゆる所に調査をかけている模様です。」
幹部は、淡々と答える。
「ぐぬぬ、折角帝国議会に我が忠実な同士を送り、やっとその実権を握ることができるようになったというのに! …外交大臣サガミはなにやら不穏な動きをするし、他国に助けを求めるし、タイトは留学してくるしっ!!」
「大幹部サマ! 落ち着いてください!」
わーわーと言い争っている。
「まあまあ二人とも、落ち着いてください。〈ムーン〉の構成員として、もっと品のある行動をしてくださらないと…。」
「…っ、大変申し訳ございません。カルメン様。」
指導者カルメン・タールは、不気味な笑いを浮かべていた。
「それにしても、あの“弱輩者”のタイトがここまで我々を嵌めるとは…。なかなかやるじゃないですか…。」
洞窟の奥、なにやら怪しげな機械を触りながら、呟く。
「『破滅の願い』を叶えるために、我々はここで手を引くわけにはいきません。作戦を成功させるために、帝国にのりこみましょうか。」
「ま、まさか。アレを使う気では…」
「当たり前じゃないですか。」
ふっふっふっと笑い、天井を見上げる。
「本気の相手には、本気で応えないと、ね。」
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