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第四章 波乱の内政・外交編
第6話 なにかが足りない…
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「………………うーん。何だっけな…………。」
僕は、執務室の僕の机で、頭を抱えていた。昨日捕まえたジェノを取り調べたことについて、大臣から報告書が上がってきた。国内だけにしか今回の木材失踪の影響が及ばなければ、特に問題は無いのだが、木材生産地であるツトゴ領において一揆が起こり、それによって国外への木材輸出もストップしてしまった。それによって、タールランド王国の木を主に炭として使用しているズール帝国や、木材輸出に関する条約を締結しているモズミド王国が、冬なのにも関わらず、燃料を得られなくなってしまったために、大きな経済的損失が生じた。したがって、理由をよく把握していない隣国や輸出先に、今回の事件の概要について報告する義務が、僕たちに生じるという訳だ。
そのための報告書を書き上げていたのだが……。
「……何が足りないんだっけ…………。」
実行犯であるジェノを拘束。今回の事件についての供述調書を取らせ、彼が〈ムーン〉のメンバーであることが判明。目的が、エネルギー供給であるということも吐かせて、それもしっかりと事件報告書にまとめあげて、一件落着………。なんだけど、少し腑に落ちない点があって………。
コンコン
「失礼しますぞ。」
なんて考えていると、いつの間にかホスロがポットを持って入ってきた。どうやら、報告書推敲の確認をしに来たようだ。
「どうですか? 仕上がってきましたかな?」
「まあまあかな。でも、何か腑に落ちない所があって……。」
「お疲れ様です、まあ一息つきなされ。もう五時間近く作業をしておられますぞ。」
「あっ、ほんとだ……。」
気づいたら、もう午後五時で、窓の外は既に真っ暗だった。
「仕事に没頭するのも良いですが、あまり無理しすぎても良くないですからな。とりあえず、紅茶を飲みなされ。」
「そうさせてもらうよ。」
ホスロが持ってきたポットのお茶をカップに注ぎ、僕の前に出す。
うん、リラックスできる良い香りだ。
カップを手に持つ。湯気が、茶の表面からもわもわと立っていた。
一口、飲む。口の中に、花のような香りを伴って暖かさが広がる。
うん、美味しい。
「これは?」
「ツトゴ領で採れる茶葉を使用した、カクラターレです。」
「ああ、この前兄さんが興味を示していたお茶だね。」
「少し分けていただきましてな………このお茶には頭をスッキリとさせる何とかという成分が含まれておるらしいのです。」
「へぇ………。」
相づちを打ちながら、もう一口。ああ、このお茶を飲んでいると、行方不明になった国内分の木材の行方なんか、どうでもよくなるな…。
………………ん? 行方不明?
「ああああああっ!!! 思い出したっ!!」
「きゅ、急にどうされたのですか!?」
「木材だよ! 犯人は取っ捕まえたけど、木材が何処にあるのかが分からなかったんだ!!」
「いや、でもこの前タイト様が木材があったって……。」
「あれは国外への輸出分!! なんとか国同士のねじれだけは防いだと安心しきって、忘れていたんだ!! ああ、ようやく思い出した。」
「なんですとぉぉ!!?? タイト様、ほっこりしている場合ではありません! さっさと探しに行きますぞ!!」
「ちょ、ちょっと待って……まだ、準備がっ……それに夜だしっ!」
「準備よりもオムライス用の木材ですぞっ!」
「なんでオムライスが優先なんだぁぁぁぁぁぁぁ……………………………」
上着を置きっぱなしにして、僕はホスロに引っ張られるようにして執務室を後にした。
◇
「えっ………木材? うーん……見てませんね……。最初からこの量だけしか見つかっていません。」
「そうですか………お手数をお掛けしました。」
一礼して、林業局の職員は去っていった。
「チェック担当の職員ですら見てないと言うのだから、元々無かったのかなぁ。」
「そう考えるのが妥当ですな……。」
二人でうーんと唸っていると、
「あ、タイト王子とホスロ殿。どうされたのですか、こんなところで。」
林業局の今の局長、フェン・フィッチが僕らに話しかけてきた。
「フェン、聞いてくれよ~。実は……。」
今回の経緯を話す。と、フェンは意外な話を始めた。
「この国の分の木材? それなら既に納入されてますよ。」
「いつ?」
「先月です。」
「「先月!?」」
二人で声があってしまった。とても驚きな回答が返ってきて、正直見つける言葉がない。まさか次月の税金を先だって納めるとは……。
だとすると、木材の行方は……
「あ……………………………………。」
「どうしたの、ホスロ?」
(他国に納める分だと勘違いして、勝手に発注かけたの、口が滑っても言えんぞ……。)
「だから、どうしたのっ!?」
「い、いや。なんでもありませんな。まさか私が外国に納入するものだと勘違いして勝手に発注かけたなんて、そんなわけが………………あ。」
ガシッ
「ちょっと来いや。この前のもあわせて、審問会でじっくりと話を聞かせてもらうからね☆」
捕まれるホスロの目に、涙が浮かんでいたのをタイトは知らない。
僕は、執務室の僕の机で、頭を抱えていた。昨日捕まえたジェノを取り調べたことについて、大臣から報告書が上がってきた。国内だけにしか今回の木材失踪の影響が及ばなければ、特に問題は無いのだが、木材生産地であるツトゴ領において一揆が起こり、それによって国外への木材輸出もストップしてしまった。それによって、タールランド王国の木を主に炭として使用しているズール帝国や、木材輸出に関する条約を締結しているモズミド王国が、冬なのにも関わらず、燃料を得られなくなってしまったために、大きな経済的損失が生じた。したがって、理由をよく把握していない隣国や輸出先に、今回の事件の概要について報告する義務が、僕たちに生じるという訳だ。
そのための報告書を書き上げていたのだが……。
「……何が足りないんだっけ…………。」
実行犯であるジェノを拘束。今回の事件についての供述調書を取らせ、彼が〈ムーン〉のメンバーであることが判明。目的が、エネルギー供給であるということも吐かせて、それもしっかりと事件報告書にまとめあげて、一件落着………。なんだけど、少し腑に落ちない点があって………。
コンコン
「失礼しますぞ。」
なんて考えていると、いつの間にかホスロがポットを持って入ってきた。どうやら、報告書推敲の確認をしに来たようだ。
「どうですか? 仕上がってきましたかな?」
「まあまあかな。でも、何か腑に落ちない所があって……。」
「お疲れ様です、まあ一息つきなされ。もう五時間近く作業をしておられますぞ。」
「あっ、ほんとだ……。」
気づいたら、もう午後五時で、窓の外は既に真っ暗だった。
「仕事に没頭するのも良いですが、あまり無理しすぎても良くないですからな。とりあえず、紅茶を飲みなされ。」
「そうさせてもらうよ。」
ホスロが持ってきたポットのお茶をカップに注ぎ、僕の前に出す。
うん、リラックスできる良い香りだ。
カップを手に持つ。湯気が、茶の表面からもわもわと立っていた。
一口、飲む。口の中に、花のような香りを伴って暖かさが広がる。
うん、美味しい。
「これは?」
「ツトゴ領で採れる茶葉を使用した、カクラターレです。」
「ああ、この前兄さんが興味を示していたお茶だね。」
「少し分けていただきましてな………このお茶には頭をスッキリとさせる何とかという成分が含まれておるらしいのです。」
「へぇ………。」
相づちを打ちながら、もう一口。ああ、このお茶を飲んでいると、行方不明になった国内分の木材の行方なんか、どうでもよくなるな…。
………………ん? 行方不明?
「ああああああっ!!! 思い出したっ!!」
「きゅ、急にどうされたのですか!?」
「木材だよ! 犯人は取っ捕まえたけど、木材が何処にあるのかが分からなかったんだ!!」
「いや、でもこの前タイト様が木材があったって……。」
「あれは国外への輸出分!! なんとか国同士のねじれだけは防いだと安心しきって、忘れていたんだ!! ああ、ようやく思い出した。」
「なんですとぉぉ!!?? タイト様、ほっこりしている場合ではありません! さっさと探しに行きますぞ!!」
「ちょ、ちょっと待って……まだ、準備がっ……それに夜だしっ!」
「準備よりもオムライス用の木材ですぞっ!」
「なんでオムライスが優先なんだぁぁぁぁぁぁぁ……………………………」
上着を置きっぱなしにして、僕はホスロに引っ張られるようにして執務室を後にした。
◇
「えっ………木材? うーん……見てませんね……。最初からこの量だけしか見つかっていません。」
「そうですか………お手数をお掛けしました。」
一礼して、林業局の職員は去っていった。
「チェック担当の職員ですら見てないと言うのだから、元々無かったのかなぁ。」
「そう考えるのが妥当ですな……。」
二人でうーんと唸っていると、
「あ、タイト王子とホスロ殿。どうされたのですか、こんなところで。」
林業局の今の局長、フェン・フィッチが僕らに話しかけてきた。
「フェン、聞いてくれよ~。実は……。」
今回の経緯を話す。と、フェンは意外な話を始めた。
「この国の分の木材? それなら既に納入されてますよ。」
「いつ?」
「先月です。」
「「先月!?」」
二人で声があってしまった。とても驚きな回答が返ってきて、正直見つける言葉がない。まさか次月の税金を先だって納めるとは……。
だとすると、木材の行方は……
「あ……………………………………。」
「どうしたの、ホスロ?」
(他国に納める分だと勘違いして、勝手に発注かけたの、口が滑っても言えんぞ……。)
「だから、どうしたのっ!?」
「い、いや。なんでもありませんな。まさか私が外国に納入するものだと勘違いして勝手に発注かけたなんて、そんなわけが………………あ。」
ガシッ
「ちょっと来いや。この前のもあわせて、審問会でじっくりと話を聞かせてもらうからね☆」
捕まれるホスロの目に、涙が浮かんでいたのをタイトは知らない。
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