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第四章 波乱の内政・外交編
第11話 平和を願う者
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カインは、真剣な顔つきになり、僕に言う。
「僕の口からは言えないけど、君なら気づくと思うよー。裏には巨大な闇魔法が蠢いているからねー。僕はあくまでも商売で言ったけど、内政を知った者を殺しにかかるんだから、相当イカれてるよねー。それに、落石にかかっているのは、全部闇魔法だよー。」
「…………っ!!」
僕は、まさかと思った。あいつらの手は、そこまで延びているのかと。
「〈ムーン〉の、王都転覆だよ。」
「それは、間違いないのか?」
「当たり前じゃん。僕の家系スキル、“真眼”に狂いはないよー。」
だとすると、今第四王子として最も力を持っているカーギスが、裏から操られているか、もしくは本物の彼と入れ替わって政治をしている可能性もある。〈ムーン〉の構成員が他人と魔法痕の紋章をそっくりにしてまで入れ替わることができるのは、僕が帝国騎士学校に入学していたときに実際に経験済みだ。そう考えてくると、チャールート金山を彼らに引き渡すことになれば、彼らの資金源が増えて、簡単に他国を侵略できるようになってしまう。現に、彼らは大陸南方の国々をいくつも制圧し、その国々の税金を好き勝手に使っているというのは、聞いたことがある。スムジア王国は、何百年以上も続いてきた伝統ある国家である。僕としては、彼らが受け継いできた戦法の存在や、最近は滅多に見なくなってしまった、国内間の統率が取れていることによって、全くもって支配されないだろうと考えていたのだが、浅はかだったのだろうか。
「カイン、一体何をきっかけに分かったの?」
「さっきも言ったと思うけど、僕は新たな取引先を探すために、最近帝国や東方連合などと対抗する力をつけてきた、スムジア王国に行くことにしたんだー。さすがにノープランで行けるほど甘くないのは僕だって知ってるから、手土産を持って行ったんだよー。」
「おいおい、まさか賄賂とか?」
「違う違う。儲け話だよー。僕調べだと、今彼らは資金繰りに困っていたらしくてねー。」
「なるほど、そこで気づいたわけだね。」
「そーそー。スムジア王国は、大陸で珍しい鉄鋼取引を主とした国家で、たくさん儲けている筈なのに、資金がないなんておかしいなーと思ってさ。そしたら、案の定僕の勘は当たっていたんだー。」
『あははー、お初にお目にかかりますー、ミドル商会の会長、カイン・ミドルですー。』
『……………………………………そうか。』
カーギスはこれ以降全く発言をしないし、
『そういえば、儲け話なんたるものがあるとお聞きしましたが?』
クルヘイム宰相に至っては儲け話にしか食いついてないしさ。
「取引は上手くいったの?」
「うん。彼らの鉄鋼を、他の商人の三倍で買うと言ったら、即決してくれたよー。ほら、これなんかもそうさ。」
僕に手渡す。日の光を反射し、黒い光沢を放っている。
「すごく、品質がいいんだね。」
「そりゃー、そうでしょー。失礼な言い方だけど、彼らには鉱山しかないんだからー。あーごめん、話から脱線しちゃったねー。取引後、トラブルを避けるためにさっさと城から出ていこうと思ったんだけどさ。」
見ちゃったんだよねー。と、カインが俯く。
「何を?」
「…………………………泣いてたんだよ、カーギスが。」
◇
「……………………ぐすっ。父上、私は国を………………守れそうにありません…………。」
彼は、独りだった。僕の目の前にあった扉は、鉄格子同然だった。執務室の筈の机の上で、彼は体を震わせて、泣いていた。彼の背中に、何か大きいものがのし掛かっているのが、見えたような気がした。
「…………………ブツブツ。」
“解呪”の詠唱文句を唱える。案外扉は、簡単に開いた。カーギスが逃げ出さないと思って、弱めの魔法をかけたのだろう。
「……どうしたの?」
「…………っ! どうやってここへ?」
彼の顔は、泣き腫らしていた。
「僕ね、魔法を使えるんだよ。簡単なやつだけどね。」
商売道具のポシェットから杖を取り出して、彼に見せる。彼は一瞬眼を輝かせたが、すぐに俯いてしまった。
「私は、本当にダメな人間です。父上の後を継ぐ兄さんたちを支え、大好きなこの国を豊かにしていくことを誓ったのに、僕は………僕はっ………!」
悔しそうに拳を握りしめ、苦しそうに呟く。僕は、できる限り優しく話しかけた。
「これまでのこと、全部聞かせてくれない? あ、安心して。商売人の僕は、口だけは固いからさ。宰相なんかに漏らしたりしないよ。」
「………………………っっ。」
カーギスは、堰を切ったように話を始めた。
「…………へぇー、そういうことだったんだー。」
「絶対に国内に広めないでくださいね?」
「大丈夫。約束するよ。」
と、微笑みあった次の瞬間。何か、嫌な気配が部屋に近づいているのを感じた。
「…っ! もう行かなきゃ。カーギス、宰相が来ても知らないふりをしといてねー!」
魔法陣を展開し、脱出する。すぐに城を出て、ミドル商会の本隊と合流し、急いで国境へと向かった。
「……カインさん、お元気で。今度会うときは、平和なスムジアで。」
◇
「なるほど。その話から類推していくと、やっぱりアリウス宰相は黒。そして、あの崩落は、魔法陣の痕跡に気づいた彼が、君の口止めをするためにやったものだと結論付くね。それに、国民ももしかしたら圧政を強いられているのかもしれない。」
だとすると、チャールート金山に対する、彼らの圧倒されるような反対の声にも納得がいく。
「カーギスは、平和な世を願っていたんだー。皆が笑う、平和な国を。」
僕は、自分の境遇や思いと重ね合わせる。平和を願う人々を弾圧してまで、国を征服するスムジアを、僕は許せない。
「ありがとう、カイン。貴重な情報を聞かせてくれて。」
「御安い御用だよー、後で褒賞金が出る(はずだ)からねー♪」
「おい、良いシーンをぶち壊す発言をするなよ…。」
なんて話していると、
ザザッ…
王都からの使いだろうか、僕の名前を叫びながら、兵士が………って、あれ?
「ホスロ、なにしてんの?」
「たっ大変ですぞ! スムジアが、我々に宣戦布告をしてきました!!」
「なんだって!?」
最悪の事態を招いてしまった。平和的解決を目指していたのに。
「ホスロ、早く城に戻ろう。カイン、また後でっ!!」
僕は早馬で、城へとかけ戻った。
「僕の口からは言えないけど、君なら気づくと思うよー。裏には巨大な闇魔法が蠢いているからねー。僕はあくまでも商売で言ったけど、内政を知った者を殺しにかかるんだから、相当イカれてるよねー。それに、落石にかかっているのは、全部闇魔法だよー。」
「…………っ!!」
僕は、まさかと思った。あいつらの手は、そこまで延びているのかと。
「〈ムーン〉の、王都転覆だよ。」
「それは、間違いないのか?」
「当たり前じゃん。僕の家系スキル、“真眼”に狂いはないよー。」
だとすると、今第四王子として最も力を持っているカーギスが、裏から操られているか、もしくは本物の彼と入れ替わって政治をしている可能性もある。〈ムーン〉の構成員が他人と魔法痕の紋章をそっくりにしてまで入れ替わることができるのは、僕が帝国騎士学校に入学していたときに実際に経験済みだ。そう考えてくると、チャールート金山を彼らに引き渡すことになれば、彼らの資金源が増えて、簡単に他国を侵略できるようになってしまう。現に、彼らは大陸南方の国々をいくつも制圧し、その国々の税金を好き勝手に使っているというのは、聞いたことがある。スムジア王国は、何百年以上も続いてきた伝統ある国家である。僕としては、彼らが受け継いできた戦法の存在や、最近は滅多に見なくなってしまった、国内間の統率が取れていることによって、全くもって支配されないだろうと考えていたのだが、浅はかだったのだろうか。
「カイン、一体何をきっかけに分かったの?」
「さっきも言ったと思うけど、僕は新たな取引先を探すために、最近帝国や東方連合などと対抗する力をつけてきた、スムジア王国に行くことにしたんだー。さすがにノープランで行けるほど甘くないのは僕だって知ってるから、手土産を持って行ったんだよー。」
「おいおい、まさか賄賂とか?」
「違う違う。儲け話だよー。僕調べだと、今彼らは資金繰りに困っていたらしくてねー。」
「なるほど、そこで気づいたわけだね。」
「そーそー。スムジア王国は、大陸で珍しい鉄鋼取引を主とした国家で、たくさん儲けている筈なのに、資金がないなんておかしいなーと思ってさ。そしたら、案の定僕の勘は当たっていたんだー。」
『あははー、お初にお目にかかりますー、ミドル商会の会長、カイン・ミドルですー。』
『……………………………………そうか。』
カーギスはこれ以降全く発言をしないし、
『そういえば、儲け話なんたるものがあるとお聞きしましたが?』
クルヘイム宰相に至っては儲け話にしか食いついてないしさ。
「取引は上手くいったの?」
「うん。彼らの鉄鋼を、他の商人の三倍で買うと言ったら、即決してくれたよー。ほら、これなんかもそうさ。」
僕に手渡す。日の光を反射し、黒い光沢を放っている。
「すごく、品質がいいんだね。」
「そりゃー、そうでしょー。失礼な言い方だけど、彼らには鉱山しかないんだからー。あーごめん、話から脱線しちゃったねー。取引後、トラブルを避けるためにさっさと城から出ていこうと思ったんだけどさ。」
見ちゃったんだよねー。と、カインが俯く。
「何を?」
「…………………………泣いてたんだよ、カーギスが。」
◇
「……………………ぐすっ。父上、私は国を………………守れそうにありません…………。」
彼は、独りだった。僕の目の前にあった扉は、鉄格子同然だった。執務室の筈の机の上で、彼は体を震わせて、泣いていた。彼の背中に、何か大きいものがのし掛かっているのが、見えたような気がした。
「…………………ブツブツ。」
“解呪”の詠唱文句を唱える。案外扉は、簡単に開いた。カーギスが逃げ出さないと思って、弱めの魔法をかけたのだろう。
「……どうしたの?」
「…………っ! どうやってここへ?」
彼の顔は、泣き腫らしていた。
「僕ね、魔法を使えるんだよ。簡単なやつだけどね。」
商売道具のポシェットから杖を取り出して、彼に見せる。彼は一瞬眼を輝かせたが、すぐに俯いてしまった。
「私は、本当にダメな人間です。父上の後を継ぐ兄さんたちを支え、大好きなこの国を豊かにしていくことを誓ったのに、僕は………僕はっ………!」
悔しそうに拳を握りしめ、苦しそうに呟く。僕は、できる限り優しく話しかけた。
「これまでのこと、全部聞かせてくれない? あ、安心して。商売人の僕は、口だけは固いからさ。宰相なんかに漏らしたりしないよ。」
「………………………っっ。」
カーギスは、堰を切ったように話を始めた。
「…………へぇー、そういうことだったんだー。」
「絶対に国内に広めないでくださいね?」
「大丈夫。約束するよ。」
と、微笑みあった次の瞬間。何か、嫌な気配が部屋に近づいているのを感じた。
「…っ! もう行かなきゃ。カーギス、宰相が来ても知らないふりをしといてねー!」
魔法陣を展開し、脱出する。すぐに城を出て、ミドル商会の本隊と合流し、急いで国境へと向かった。
「……カインさん、お元気で。今度会うときは、平和なスムジアで。」
◇
「なるほど。その話から類推していくと、やっぱりアリウス宰相は黒。そして、あの崩落は、魔法陣の痕跡に気づいた彼が、君の口止めをするためにやったものだと結論付くね。それに、国民ももしかしたら圧政を強いられているのかもしれない。」
だとすると、チャールート金山に対する、彼らの圧倒されるような反対の声にも納得がいく。
「カーギスは、平和な世を願っていたんだー。皆が笑う、平和な国を。」
僕は、自分の境遇や思いと重ね合わせる。平和を願う人々を弾圧してまで、国を征服するスムジアを、僕は許せない。
「ありがとう、カイン。貴重な情報を聞かせてくれて。」
「御安い御用だよー、後で褒賞金が出る(はずだ)からねー♪」
「おい、良いシーンをぶち壊す発言をするなよ…。」
なんて話していると、
ザザッ…
王都からの使いだろうか、僕の名前を叫びながら、兵士が………って、あれ?
「ホスロ、なにしてんの?」
「たっ大変ですぞ! スムジアが、我々に宣戦布告をしてきました!!」
「なんだって!?」
最悪の事態を招いてしまった。平和的解決を目指していたのに。
「ホスロ、早く城に戻ろう。カイン、また後でっ!!」
僕は早馬で、城へとかけ戻った。
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