弱輩者の第三王子~僕なんかに執政できるんですかね。~

拙糸

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第五章 決戦、第二次〈ムーン〉制圧作戦編

第6話 〈ムーン〉の理想

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僕が帝国騎士学校に到着する頃には、辺りは暗くなっていた。馬車を勢いよく走らせる僕達とは対照的に、街道は静まり返っていた。僕は、焦っていた。もし彼が本当に……なのであれば、彼は、彼は……………!

「マージ、僕が降りたらすぐにタールランドへ引き返してくれる?」
「ちょ、ちょっと待ってください!! 急にどうされたのですか?」

マージは、慌てる様子の僕を見て、驚きながらも、なだめようとしている。

「まずいことになった…………。〈ムーン〉は、とんでもないところを拠点にしているかもしれない…。」
「それって、まさか……!!」

そう、もしそうだとしたら最悪の事態だ。は、大陸でも有数の情報が集まる場所であり、人が集まる場所でもあるからだ。

「だから、マージは急いでダモスに戻って、ホスロに報告してほしい。それで、そのあと兄さん達にも……。」
「分かりました。……タイト殿はここに残られるのですね?」
「うん。確かめたいことがあってね。それに、今は夜だから。」

了解しました。と言い、馬車は角度を変え、マージは手綱を取り、街道をタールランドへと戻っていった。さて、僕も色々と話をしなきゃね……。懐かしい校舎へと、僕は歩みを進めた。



コッ、コッ、コッ………
秒針の刻む音が、部屋に響き渡る。
男は、彼の執務する椅子に座っている。まるで、時を待つかのように。
突然、キィ…と音がした。さっきまでなんともなかったカーテンが、窓の外の風でたなびいている。

「…………意外と、早かったじゃないか。」
「ええ。僕も、ここまで来ることになるとは、思いもしませんでしたよ。」

男のところまで、カーペットの敷かれた階段を昇る。

「………………いつ、気づいた?」
「一番最初、怪しいと思ったのは、僕が入学試験を受けたときです。」
「そうか。それで?」
「まあ、あの時はあなたの演技にすっかり騙されました。魔法を愛し、その魔法を究めることを美しいと考える、純粋で熱心な大臣だとね。」
「……はっはっは。私の技術が衰えていなくて良かった。だが、結局はバレてしまった。」
「はい。僕があなたの正体を見抜くきっかけになったのは、あなたのあの発言です。入学試験の時、こんな質問をしました。『お前は魔法をなんだと心得る?』そして、僕はこう答えました。『魔法は、自分を写す鏡』だと。そしたら、あなたはこんなことを言った。『…お前のような人物が、この学校で学ぶべき理想の人物なのだろうな。』、と。」
「……………………………………………。」
「僕はあの時、学校で学ぶにふさわしい、ちゃんとした考えを持つ者を選抜しているものだと思ってました。ですが、真実を知った今、この発言は、、いや、の理想とする考えを示しているとしか捉えることができないんですよ。」
「………なるほどな。だが、その考えは“聖なる人々”にも共通する。」
「ええ。そうなんですよ。だから、なんですよね? 〈ムーン〉の幹部、ジョンネル・クレオス帝国大臣。」
「……………………………………………フフフ、アッハッハッハッハ!!!」
「……………………………………………。」

ジョンネルは高笑いする。そして、僕の方へと向き直る。

「やはり貴様は賢い。世間で“弱輩者”だと言われるのが謎な位だ…。そう、貴様の推理通りだ。我々〈ムーン〉はドラゴンなどを崇める団体などではない。魔法を究め、己を鑑み、懺悔する。そういう団体だ。」
「……………どうして………どうしてお前達は、関係ない人々を襲う…!?」

僕は、思わず叫んでしまう。奴らに対する恨みは…非常に深い。

「………………この世を、正すためだ。」
「……………正す?」
「ああ。」

黒フードの服を被り、席を立つ。そして、カーテンの掛かる壁際へと向かう。

「……………我々は、罪が重すぎた。“傲慢”であったのだ………。」

そして、カーテンを一気に取り外す。中から、青地の布がベースの、三日月のタペストリーが、姿を表した。

「我々は、あの月のように謙虚でいなければならなかったのだ。…………ケビン様の理想とする、あの月のように!!」
「……………! ケビン………だって!?」

ケビン…………それは、僕の知る神学教授であり、マージの先生であった、ケビン・ホールナント以外、考えがつかなかった。



その頃、タールランド王国の王都ダモス。マージは、至急帰還し、ホスロに事の顛末てんまつを伝えた。

「……………そうですか。奴等は、帝国にいるのですな?」
「はい、ですが………一体どうして、〈ムーン〉は学校に侵入したのでしょうか……。」
「……………マージ、そなたの先生は確かケビン教授と言ったな?」
「はい。私が小さい頃、世の生き方を教わりました。」

ホスロが、布団をギュッと掴み言う。

「そなたにはちときつい真実を伝えねばなりません。それでもよろしいですかな?」
「……………はい。」
「それは、遠い昔の事です………。」

暗雲が、空を覆ろうとしていた。
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