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信じがたい現実
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「なんか最近ギルドに報告しに来てばっかりな気がするっすね」
「それだけ私たちも成長してるってことだよ」
「まぁ~今回アタシたちは何もしてないけどね」
「正確には“何も出来なかった” ───── ですけどね」
「分かってるわよ!マクスウェル…アンタってホント性格悪いわね。それよりアンタも師匠に何て報告するか考えときなさいよ」
「分かっていますよ。ハァ~・・・また基礎鍛錬のメニューを増やされそうですね」
「そんなことよりも支部長にはどう報告するんすか?報告することが多過ぎるっすよ」
「わっちは難しいことは分からん。そういうのはスズネに任せるのじゃ」
「アハハハ…まぁ~頑張ってみるよ」
「と…とりあえず中に入りましょう」
ロザリーの家で楽しい時間を堪能したスズネたちは、翌日モンナケルタでの一件について報告するために冒険者ギルドへと足を運んでいた。
単眼巨人の王がいたこと、Sランク魔獣である怪猫キャスパリーグが現れたこと、そしてキャスパリーグによって単眼巨人の王を含む単眼巨人の群れが全滅させられたこと、報告すべきことが多過ぎて彼女たちはギルドに入ることを躊躇してしまう。
しかし、いざギルドへと足を踏み入れるとギルド内がこれまでに見たこともないような大騒ぎとなっていたのだった。
ガヤガヤ、ガヤガヤ ──────── 。
「おいおい聞いたか?あの話」
「ああ、さっき聞いて驚いたよ」
ザワザワ、ザワザワ ──────── 。
「しかし、本当なのか?長く冒険者をやっているが信じがたい話だがな」
「いや、どうやらギルドの方でも事実確認をして実物の回収もされたらしいぞ」
ガヤガヤ、ガヤガヤ ──────── 。
「いやーーー快挙だよ!快挙!さすがは五大クランの一角。ガルディア最高の冒険者なだけはあるよな」
「今回の件で他のクランと比べても頭ひとつ抜け出した感はあるが、他の四つのクランがこのまま黙っているとは思えないよな」
ザワザワ、ザワザワ ──────── 。
「まぁ~今回は事が事だけに国王様からも褒賞が出るんじゃないか?」
「王国の聖騎士団は悔しいだろうなー」
「はぁーーー羨ましい限りだぜ。今回は俺たちもデカい獲物を狙ってみるか」
「おう!やってやろうぜ!!」
何があったのかは分からないが、どうやら騒いでいるのは冒険者だけのようであり、ギルドの職員たちはいつもと変わらぬ様子で仕事をしている。
そして、大騒ぎしている冒険者たちも慌てているというよりは、どちらかというと溢れ出る思いを抑えきれずに興奮しているといった様子なのであった。
「今日はやけに騒がしいわね」
「なんかあったんすかね?」
「五大クランがどうとか聞こえましたが、今はそれよりも急いで支部長のところへ報告に行きましょう」
あちらこちらで湧き起こる喧騒の中を通り抜け受付へと歩みを進めたスズネたち、そこでマリにモンナケルタでの一件において取り急ぎ支部長に報告すべきことがある旨を伝え、すぐに支部長室へと案内された。
そして、支部長室に入るとロビーにいた冒険者たちとは違った意味で慌ただしく何かの処理に追われているリタの姿を目の当たりにしたのだった。
「すまん。今少し手が離せねぇーんだ。そこのソファーに座って待っててくれ」
「あっ…はい」
山積みされた書類を次々と手にし、それら全てに目を通し素早く押印を済ませていく。
その中で時折ペンを手に取り何かを書いては押印した書類とは別の箱に仕分けている。
まさに目にも留まらぬ早業で事務処理を進めていくリタは、ギルド内で戦闘以外の面においてもかなり優秀なのだろう。
そして、待つこと三十分・・・。
「すまねぇー。随分と待たせちまったな」
全ての事務処理を終えたリタがゆっくりと立ち上がる。
スズネたちが入室した時にデスクの上にあった三つの書類の山は跡形もなく綺麗に無くなっている。
そして、立ち上がったリタは疲れた素振りなどみせることなくスズネたちの前に座ったのだった。
「それじゃ報告を聞こうか」
「はい」
リタを前にしてスズネたちは改めて今回モンナケルタへ行き、そこで目にしたことの詳細を報告した。
単眼巨人の王が実在したこと。
その王によって統率された数十体にも及ぶ単眼巨人の群れがいたこと。
そして、その群れが全滅したこと。
群れを全滅させたのがSランクの魔獣『怪猫キャスパリーグ』であること。
それらについて出来る限り状況を交えながら事細かに説明したのだった。
「フゥー・・・なるほどな。まずはお前たちご苦労だった。そして、貴重な情報の提供に感謝する。しかしまぁ~、ロザリー殿の召喚獣に命を救われたな。実際に戦闘となっていれば今のお前たちでは数秒と保たなかっただろう」
「はい。何が起きているのかも分からず、何もさせてもらえませんでした。実際クロノが魔法防壁で守ってくれていなかったら全滅していたと思います」
「ハッハッハッ、なかなか冷静じゃねぇーか。だが、まぁ~そうだろうな。それにしてもキャスパリーグか・・・。単眼巨人の王を討ってくれたことはありがてぇーが、よりにもよってこのタイミングで現れるか ───── 」
報告を受けたリタは、何よりもまず無事に帰還したスズネたちを労い、次に今回の件を包み隠さず報告したことに感謝した。
しかし、なぜかその表情は複雑なものとなっていたのだった。
「支部長、このタイミングって何かあったんですか?ギルドの中でも冒険者たちが騒いでましたけど、そのことと何か関係があるんですか?」
ギルドに入った時に見かけた謎の賑わい、そして支部長リタの不自然な様子、これらを通してとうとう口を開かずにはいられなくなったミリアが質問を投げかける。
そして、その問いに対してリタは重々しく口を開く。
「ハァ~・・・。まぁ~隠すようなことじゃねぇーし、あのバカどものはしゃぎぶりからしてすぐに耳に入ると思うが ───── 昨日、Sランク魔獣『獄炎蜥蜴 サラマンドラ』が討伐された」
!?!?!?!?!?!?
「えっ!?・・・今なんて ───── 」
バンッ!!
「誰なんですか!いったい誰が討伐したんですか!!」
あまりの衝撃に他のメンバーたちが唖然としている中、唯一ミリアだけがテーブルを強く叩き身を乗り出してリタへと迫る。
「まぁまぁ落ち着けよ。魔獣サラマンドラを討伐したのは ───── クラン『焔』のリーダー カルラだ」
「Sランククラン『焔』のリーダー」
「確か『炎の魔人』っていわれてる人っすよね」
「あ…あのキャスパリーグと同じSランクの魔獣を倒すなんて」
「アレを見た後だと、にわかには信じられませんね」
「・・・・・。ホント…信じらんないわよ…」
リタの口からSランク魔獣サラマンドラを討伐したのが、Sランククラン『焔』を率いるカルラであることが語られる。
奇しくも時を同じくしてSランクの魔獣キャスパリーグを目の当たりにしたスズネたちにとって、あのクラスの魔獣を討伐するということがどれほどのことなのか想像することすらもできなかった。
冒険者としてBランクとなり、獣王国との戦争にも参加し、少しずつではあるものの成長を実感していた。
しかし、今回キャスパリーグとの遭遇において言葉の通り“何もできなかった”。
いや、戦うことさえもさせてもらえなかった。
そんなキャスパリーグと同程度の強さを誇るとされている魔獣をカルラが討伐したという事実は、彼女たちに自分たちとSランク冒険者との間に絶望的な差があるということを強く深く思い知らされることとなったのだった。
「それだけ私たちも成長してるってことだよ」
「まぁ~今回アタシたちは何もしてないけどね」
「正確には“何も出来なかった” ───── ですけどね」
「分かってるわよ!マクスウェル…アンタってホント性格悪いわね。それよりアンタも師匠に何て報告するか考えときなさいよ」
「分かっていますよ。ハァ~・・・また基礎鍛錬のメニューを増やされそうですね」
「そんなことよりも支部長にはどう報告するんすか?報告することが多過ぎるっすよ」
「わっちは難しいことは分からん。そういうのはスズネに任せるのじゃ」
「アハハハ…まぁ~頑張ってみるよ」
「と…とりあえず中に入りましょう」
ロザリーの家で楽しい時間を堪能したスズネたちは、翌日モンナケルタでの一件について報告するために冒険者ギルドへと足を運んでいた。
単眼巨人の王がいたこと、Sランク魔獣である怪猫キャスパリーグが現れたこと、そしてキャスパリーグによって単眼巨人の王を含む単眼巨人の群れが全滅させられたこと、報告すべきことが多過ぎて彼女たちはギルドに入ることを躊躇してしまう。
しかし、いざギルドへと足を踏み入れるとギルド内がこれまでに見たこともないような大騒ぎとなっていたのだった。
ガヤガヤ、ガヤガヤ ──────── 。
「おいおい聞いたか?あの話」
「ああ、さっき聞いて驚いたよ」
ザワザワ、ザワザワ ──────── 。
「しかし、本当なのか?長く冒険者をやっているが信じがたい話だがな」
「いや、どうやらギルドの方でも事実確認をして実物の回収もされたらしいぞ」
ガヤガヤ、ガヤガヤ ──────── 。
「いやーーー快挙だよ!快挙!さすがは五大クランの一角。ガルディア最高の冒険者なだけはあるよな」
「今回の件で他のクランと比べても頭ひとつ抜け出した感はあるが、他の四つのクランがこのまま黙っているとは思えないよな」
ザワザワ、ザワザワ ──────── 。
「まぁ~今回は事が事だけに国王様からも褒賞が出るんじゃないか?」
「王国の聖騎士団は悔しいだろうなー」
「はぁーーー羨ましい限りだぜ。今回は俺たちもデカい獲物を狙ってみるか」
「おう!やってやろうぜ!!」
何があったのかは分からないが、どうやら騒いでいるのは冒険者だけのようであり、ギルドの職員たちはいつもと変わらぬ様子で仕事をしている。
そして、大騒ぎしている冒険者たちも慌てているというよりは、どちらかというと溢れ出る思いを抑えきれずに興奮しているといった様子なのであった。
「今日はやけに騒がしいわね」
「なんかあったんすかね?」
「五大クランがどうとか聞こえましたが、今はそれよりも急いで支部長のところへ報告に行きましょう」
あちらこちらで湧き起こる喧騒の中を通り抜け受付へと歩みを進めたスズネたち、そこでマリにモンナケルタでの一件において取り急ぎ支部長に報告すべきことがある旨を伝え、すぐに支部長室へと案内された。
そして、支部長室に入るとロビーにいた冒険者たちとは違った意味で慌ただしく何かの処理に追われているリタの姿を目の当たりにしたのだった。
「すまん。今少し手が離せねぇーんだ。そこのソファーに座って待っててくれ」
「あっ…はい」
山積みされた書類を次々と手にし、それら全てに目を通し素早く押印を済ませていく。
その中で時折ペンを手に取り何かを書いては押印した書類とは別の箱に仕分けている。
まさに目にも留まらぬ早業で事務処理を進めていくリタは、ギルド内で戦闘以外の面においてもかなり優秀なのだろう。
そして、待つこと三十分・・・。
「すまねぇー。随分と待たせちまったな」
全ての事務処理を終えたリタがゆっくりと立ち上がる。
スズネたちが入室した時にデスクの上にあった三つの書類の山は跡形もなく綺麗に無くなっている。
そして、立ち上がったリタは疲れた素振りなどみせることなくスズネたちの前に座ったのだった。
「それじゃ報告を聞こうか」
「はい」
リタを前にしてスズネたちは改めて今回モンナケルタへ行き、そこで目にしたことの詳細を報告した。
単眼巨人の王が実在したこと。
その王によって統率された数十体にも及ぶ単眼巨人の群れがいたこと。
そして、その群れが全滅したこと。
群れを全滅させたのがSランクの魔獣『怪猫キャスパリーグ』であること。
それらについて出来る限り状況を交えながら事細かに説明したのだった。
「フゥー・・・なるほどな。まずはお前たちご苦労だった。そして、貴重な情報の提供に感謝する。しかしまぁ~、ロザリー殿の召喚獣に命を救われたな。実際に戦闘となっていれば今のお前たちでは数秒と保たなかっただろう」
「はい。何が起きているのかも分からず、何もさせてもらえませんでした。実際クロノが魔法防壁で守ってくれていなかったら全滅していたと思います」
「ハッハッハッ、なかなか冷静じゃねぇーか。だが、まぁ~そうだろうな。それにしてもキャスパリーグか・・・。単眼巨人の王を討ってくれたことはありがてぇーが、よりにもよってこのタイミングで現れるか ───── 」
報告を受けたリタは、何よりもまず無事に帰還したスズネたちを労い、次に今回の件を包み隠さず報告したことに感謝した。
しかし、なぜかその表情は複雑なものとなっていたのだった。
「支部長、このタイミングって何かあったんですか?ギルドの中でも冒険者たちが騒いでましたけど、そのことと何か関係があるんですか?」
ギルドに入った時に見かけた謎の賑わい、そして支部長リタの不自然な様子、これらを通してとうとう口を開かずにはいられなくなったミリアが質問を投げかける。
そして、その問いに対してリタは重々しく口を開く。
「ハァ~・・・。まぁ~隠すようなことじゃねぇーし、あのバカどものはしゃぎぶりからしてすぐに耳に入ると思うが ───── 昨日、Sランク魔獣『獄炎蜥蜴 サラマンドラ』が討伐された」
!?!?!?!?!?!?
「えっ!?・・・今なんて ───── 」
バンッ!!
「誰なんですか!いったい誰が討伐したんですか!!」
あまりの衝撃に他のメンバーたちが唖然としている中、唯一ミリアだけがテーブルを強く叩き身を乗り出してリタへと迫る。
「まぁまぁ落ち着けよ。魔獣サラマンドラを討伐したのは ───── クラン『焔』のリーダー カルラだ」
「Sランククラン『焔』のリーダー」
「確か『炎の魔人』っていわれてる人っすよね」
「あ…あのキャスパリーグと同じSランクの魔獣を倒すなんて」
「アレを見た後だと、にわかには信じられませんね」
「・・・・・。ホント…信じらんないわよ…」
リタの口からSランク魔獣サラマンドラを討伐したのが、Sランククラン『焔』を率いるカルラであることが語られる。
奇しくも時を同じくしてSランクの魔獣キャスパリーグを目の当たりにしたスズネたちにとって、あのクラスの魔獣を討伐するということがどれほどのことなのか想像することすらもできなかった。
冒険者としてBランクとなり、獣王国との戦争にも参加し、少しずつではあるものの成長を実感していた。
しかし、今回キャスパリーグとの遭遇において言葉の通り“何もできなかった”。
いや、戦うことさえもさせてもらえなかった。
そんなキャスパリーグと同程度の強さを誇るとされている魔獣をカルラが討伐したという事実は、彼女たちに自分たちとSランク冒険者との間に絶望的な差があるということを強く深く思い知らされることとなったのだった。
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