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時の人
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「キャハハハハ ──────── 」
「キャハハハハ ──────── 」
甲高い笑い声が岩石散らばる荒野を駆け巡る。
それは決して皆で何かを楽しむ声などではなく、自分たちに対して何も出来ずに苦虫を噛み潰したような顔をしている彼女たちに向けた嘲笑である。
「クソッ。アイツら完全にアタシたちのことをバカにしてるわ」
「アハハハハ。そんなことはないですよ。彼女たちは僕たちを歓迎してくれているんです。ああ…なんて可憐で美しいんだ」
「このバカも斬り伏せたいわ」
「ダメだよミリア」
「分かってるわよ!」
「で…でも、一刻も早く何か手立てを考えないとまずいです」
「そんな必要ないっすよ。ウチは彼女たちと楽しく歌って踊って友達になるっす」
「あ~もう、こんなんじゃクエストどころじゃないよーーー」
ここは商業都市ロコンからギャシャドゥル(商業都市ロコンと冒険者の街リザリオの間にある中間都市)へと続く街道にある荒野。
なぜスズネたちがこんな所に来ているのかというと、もちろんそこに棲まう魔獣を討伐するためである。
そして、今回彼女たちの標的となる魔獣というは ───── Bランク魔獣『女鳥人』。
見た目は美しい女性を模した人型の姿をしているが、ヒト族と大きく異なるのは腕が大きな翼になっており、鋭い鉤爪が特徴的な鳥類の脚を併せ持っている点である。
そんな女鳥人の討伐クエストが出される度に冒険者たちが討伐へと赴くのだが、その美しい容姿を前に多くの者たちが心を奪われてしまうのであった。
そんな女鳥人なのだが、その実態は討伐ランクBに指定されている通り残虐そのもの。
風魔法を得意とし、さらに魅了の魔法によって相手の心を虜にして弱体化させ、両脚の鋭い鉤爪で標的を切り裂くのだ。
そんな今回のターゲットを相手にスズネたちはまんまと術中にハマり苦戦を強いられている。
今の彼女たちはそんな状況なのであった。
バサッ、バサッ、バサッ ───────── 。
ヒューーーッ、ヒューーーッ。
「キャハハハハッ」
バサッ、バサッ、バサッ ───────── 。
ヒューーーッ、ヒューーーッ。
「クスッ、ウフフフフッ」
楽しそうに空を舞う女鳥人たち。
その数は十数羽。
一週間ほど前からこの街道に棲みつき、行き来する商人の荷馬車を襲うようになったという。
そして、彼女たちによる被害が頻繁に報告されるようになり、この度商業ギルドから冒険者ギルドへと討伐依頼が出されることとなったのだ。
そんな時にちょうど地に足つけて冒険者活動を進めていこうとBランクのクエストを探していたスズネたちの目に留まったというわけである。
前回のキャスパリーグとの苦い一件後初めてのクエストということもあり、やる気満々でやって来た彼女たちだったのだが、女鳥人たちにいいようにあしらわれ遊ばれるという屈辱を味わう羽目になっていた。
「ホントなんとかなんないの!うちのバカ二人は役に立ちそうにもないし」
「役に立たないのならいっそのこと気を失わせたほうが戦いやすいのじゃ」
「ダメですよ!彼女たちと戦うなんて僕が許しません!!」
「ウチだって黙ってられないっすよ。女鳥人たちの盾になるっす」
「「「「 ハァ~~~・・・ 」」」」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
今より二時間ほど前、依頼を受けたスズネたちはやる気に満ち溢れた様子で意気揚々と商業都市ロコンを出発し、商人たちが襲われたという目的地を目指していた。
新たな戦術、新たな陣形、新たな技、新たな魔法、試したいことがたくさんありワクワクが止まらない彼女たちの歩みは実に軽やかであった。
そして、ロコンを出発してから一時間が経ち目的地である荒野へ到着。
すると、そんな彼女たちに休む暇など与えることなく女鳥人たちが姿を現したのだった。
到着して早々ではあったのだが、スズネたちに選択肢などあるはずもなくすぐさま戦闘が開始されることに。
その後のことは今の彼女たちを見て分かる通り散々なものとなった。
自由自在に空を飛び回る女鳥人たちに苦戦し、前後左右に振り回され体力を消耗させられ、挙句の果てに魅了の魔法によって手懐けられる者まで現れ、陣形もクソもない状態となったのだ。
こうして今現在の混沌とした状況が出来上がったというわけである。
「スズネかラーニャのどっちか魅了を解除することは出来ないの?」
「ごめん。まだ解除系の魔法は覚えてないんだ」
「愚問じゃな。そもそもわっちは攻撃特化の魔法師じゃ。あんなチンケな魔法にかかるような情けない者どもは放っておけばいいのじゃ」
「僕は操られてなどいません。彼女たちの平穏を守る騎士なのです」
「ウチは女鳥人たちを守る盾なんす」
「「「キャハッ、キャハハハハ」」」
完全にナメられてしまっている。
優雅に宙を舞いながらスズネたちが混乱してあたふたしている様子を楽しむ女鳥人たち。
何故かは分からないが、彼女たちにスズネたちを攻撃する意思はなく、ただただ困惑している様を眺めながらケラケラと笑っているのだった。
もはや勝負の行方は火を見るよりも明らか ───── いや、そもそも勝負にすらなっていない上、標的からは自分たちの命を狙ってやって来た敵とすら認識されていない。
それは冒険者として最も屈辱的な扱いである。
そして、この時点でスズネたちが選ぶ選択肢は一つしか残されていなかった。
もちろん誰一人として納得などしてはいないし、彼女たちの心中は穏やかさとはかけ離れている。
敵との戦闘の末であるならばそれも致し方ないと思えるのだが・・・。
それでも、今はそれを選ぶしかない。
そのような苦しい心境の中で口火を切ったのは意外にもセスリーであった。
「あ…あの・・・今のままではどうしようもありません。ここは一度引いて作戦を練り直したほうがいいと思います」
「クソッ!まだ何もしてないのに」
「もはや連携もクソもないのじゃ」
「そうだね…。残念だけど撤退しよう」
こうして気合いを入れて臨んだクエストのはずが、討伐するはずの相手に散々遊ばれた挙句、何も出来ないまま撤退することとなった宿り木。
「ハァ~・・・バカどもが ──────── 」
その有り様を後方より眺めていたクロノは頭を左右に振りながら溜め息をつき、呆れて何も言えない様子。
再出発を図ったスズネたちの挑戦はまさに大失敗に終わったのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・。
散々な結果となった今回のクエスト。
女鳥人たちとの対峙から撤退した後、商業都市ロコンへと戻ったスズネたちであったが、話し合いの末一度ホームへと帰還することを決めた。
作戦を練り直し再び挑戦することもできたのだが、それを実行するにはあらゆる面で力が足りないと判断し、今回は帰路につくこととなったのだ。
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・。
そうして数日かけてようやくモアの街に到着したスズネたち。
しかしその足取りは重く、何処かへ立ち寄る気力すら残っておらず、そのままホームへと向かうのだった。
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・。
「ハァ~…もう少しっすね」
「なんか疲れたわーーー」
「すみません。僕が不甲斐ないばかりに・・・」
「もう!マクスウェル君、それは言いっこなしだよ」
「今回はなんもしとらんからのう。不完全燃焼じゃ」
『心と身体は繋がっている』とはよく言ったものである。
心に大きなショックを受けたことにより彼女たちの身体は鉛のように重くなり、口数は減り、動きは鈍くなる。
それでも一歩また一歩と歩みを続け、スズネたちはようやく我が家へと帰還したのであった。
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・。
「あ…あの・・・」
「ん?どうしたのセスリー」
「ホ…ホームの前にどなたかいらっしゃいます」
「えっ!?」
セスリーの言葉に反応したスズネたちが疲れ切った身体を起こしてホームへ視線を向けると、そこには確かに二つの人影があったのだった。
「ちょっ、マジで遅いんだけど~~~~~」
「ハァ~…落ち着いてください。そんなにゴネても何も生まれませんよ」
「だけどさ~~~~~」
「あっ!ほら、どうやら帰って来たようですよ」
大きな声が聞こえる。
どうやらホームの前で佇んでいる謎の二人組はスズネたちを待っていたようであり、一人は待ちくたびれて機嫌を損ねてしまっている様子。
「あの~・・・」
「ああ、これは失礼致しました。我々は ───── 」
「お~~~そ~~~い~~~。もう半日以上待ってんだよ。お腹空いた~~~~~」
「ハァ~・・・嘘言わないでください。まだ三十分程度しか経っていませんよ。それよりも突然の訪問で申し訳ありません。お尋ねしますが、こちらは冒険者パーティ『宿り木』のホームで間違いありませんでしょうか?」
「は…はい。私たちが宿り木ですけど」
「おおーそれはよかった。我々はあなた方に少々お願いしたいことがあり参上した次第なのです」
「は…はぁ~・・・。それであなたたちはどちら様でしょうか?」
「おおーこれは失礼致しました。私としたことが興奮のあまり失念しておりました。私の名はフリット、しがない冒険者でございます。そして、こちらにいらっしゃるのが我がクランのリーダー カルラ様です」
「ご丁寧にどうも・・・えっ!?」
「ん?」
突然現れた見知らぬ人物たちの自己紹介を聞き違和感を覚えたスズネが仲間たちへと視線を向ける。
そして仲間たちもまた少し驚いた様子で視線を送り合う。
その様子を前にしてフリットと名乗る男は不思議そうにしながらも笑顔を崩さないように努めている。
「「「「「「 えっ!?えっ!?えっ!? 」」」」」」
「どうかなさいましたか?」
「「「「「「 えーーーーー!?!?!? 」」」」」」
スズネたちの声が森中に響き渡る。
あまりの衝撃に全員目を丸くし開いた口が塞がらない。
その驚愕の事実につい今し方まで落ち込んでいたことなど吹き飛んでしまった。
それもそのはず、今自分たちの目の前にいる人物こそまさにガルディア王国中で話題を席巻しているSランククラン『焔』のリーダー カルラその人なのであった。
「フリット!ご~~~は~~~ん~~~」
「キャハハハハ ──────── 」
甲高い笑い声が岩石散らばる荒野を駆け巡る。
それは決して皆で何かを楽しむ声などではなく、自分たちに対して何も出来ずに苦虫を噛み潰したような顔をしている彼女たちに向けた嘲笑である。
「クソッ。アイツら完全にアタシたちのことをバカにしてるわ」
「アハハハハ。そんなことはないですよ。彼女たちは僕たちを歓迎してくれているんです。ああ…なんて可憐で美しいんだ」
「このバカも斬り伏せたいわ」
「ダメだよミリア」
「分かってるわよ!」
「で…でも、一刻も早く何か手立てを考えないとまずいです」
「そんな必要ないっすよ。ウチは彼女たちと楽しく歌って踊って友達になるっす」
「あ~もう、こんなんじゃクエストどころじゃないよーーー」
ここは商業都市ロコンからギャシャドゥル(商業都市ロコンと冒険者の街リザリオの間にある中間都市)へと続く街道にある荒野。
なぜスズネたちがこんな所に来ているのかというと、もちろんそこに棲まう魔獣を討伐するためである。
そして、今回彼女たちの標的となる魔獣というは ───── Bランク魔獣『女鳥人』。
見た目は美しい女性を模した人型の姿をしているが、ヒト族と大きく異なるのは腕が大きな翼になっており、鋭い鉤爪が特徴的な鳥類の脚を併せ持っている点である。
そんな女鳥人の討伐クエストが出される度に冒険者たちが討伐へと赴くのだが、その美しい容姿を前に多くの者たちが心を奪われてしまうのであった。
そんな女鳥人なのだが、その実態は討伐ランクBに指定されている通り残虐そのもの。
風魔法を得意とし、さらに魅了の魔法によって相手の心を虜にして弱体化させ、両脚の鋭い鉤爪で標的を切り裂くのだ。
そんな今回のターゲットを相手にスズネたちはまんまと術中にハマり苦戦を強いられている。
今の彼女たちはそんな状況なのであった。
バサッ、バサッ、バサッ ───────── 。
ヒューーーッ、ヒューーーッ。
「キャハハハハッ」
バサッ、バサッ、バサッ ───────── 。
ヒューーーッ、ヒューーーッ。
「クスッ、ウフフフフッ」
楽しそうに空を舞う女鳥人たち。
その数は十数羽。
一週間ほど前からこの街道に棲みつき、行き来する商人の荷馬車を襲うようになったという。
そして、彼女たちによる被害が頻繁に報告されるようになり、この度商業ギルドから冒険者ギルドへと討伐依頼が出されることとなったのだ。
そんな時にちょうど地に足つけて冒険者活動を進めていこうとBランクのクエストを探していたスズネたちの目に留まったというわけである。
前回のキャスパリーグとの苦い一件後初めてのクエストということもあり、やる気満々でやって来た彼女たちだったのだが、女鳥人たちにいいようにあしらわれ遊ばれるという屈辱を味わう羽目になっていた。
「ホントなんとかなんないの!うちのバカ二人は役に立ちそうにもないし」
「役に立たないのならいっそのこと気を失わせたほうが戦いやすいのじゃ」
「ダメですよ!彼女たちと戦うなんて僕が許しません!!」
「ウチだって黙ってられないっすよ。女鳥人たちの盾になるっす」
「「「「 ハァ~~~・・・ 」」」」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
今より二時間ほど前、依頼を受けたスズネたちはやる気に満ち溢れた様子で意気揚々と商業都市ロコンを出発し、商人たちが襲われたという目的地を目指していた。
新たな戦術、新たな陣形、新たな技、新たな魔法、試したいことがたくさんありワクワクが止まらない彼女たちの歩みは実に軽やかであった。
そして、ロコンを出発してから一時間が経ち目的地である荒野へ到着。
すると、そんな彼女たちに休む暇など与えることなく女鳥人たちが姿を現したのだった。
到着して早々ではあったのだが、スズネたちに選択肢などあるはずもなくすぐさま戦闘が開始されることに。
その後のことは今の彼女たちを見て分かる通り散々なものとなった。
自由自在に空を飛び回る女鳥人たちに苦戦し、前後左右に振り回され体力を消耗させられ、挙句の果てに魅了の魔法によって手懐けられる者まで現れ、陣形もクソもない状態となったのだ。
こうして今現在の混沌とした状況が出来上がったというわけである。
「スズネかラーニャのどっちか魅了を解除することは出来ないの?」
「ごめん。まだ解除系の魔法は覚えてないんだ」
「愚問じゃな。そもそもわっちは攻撃特化の魔法師じゃ。あんなチンケな魔法にかかるような情けない者どもは放っておけばいいのじゃ」
「僕は操られてなどいません。彼女たちの平穏を守る騎士なのです」
「ウチは女鳥人たちを守る盾なんす」
「「「キャハッ、キャハハハハ」」」
完全にナメられてしまっている。
優雅に宙を舞いながらスズネたちが混乱してあたふたしている様子を楽しむ女鳥人たち。
何故かは分からないが、彼女たちにスズネたちを攻撃する意思はなく、ただただ困惑している様を眺めながらケラケラと笑っているのだった。
もはや勝負の行方は火を見るよりも明らか ───── いや、そもそも勝負にすらなっていない上、標的からは自分たちの命を狙ってやって来た敵とすら認識されていない。
それは冒険者として最も屈辱的な扱いである。
そして、この時点でスズネたちが選ぶ選択肢は一つしか残されていなかった。
もちろん誰一人として納得などしてはいないし、彼女たちの心中は穏やかさとはかけ離れている。
敵との戦闘の末であるならばそれも致し方ないと思えるのだが・・・。
それでも、今はそれを選ぶしかない。
そのような苦しい心境の中で口火を切ったのは意外にもセスリーであった。
「あ…あの・・・今のままではどうしようもありません。ここは一度引いて作戦を練り直したほうがいいと思います」
「クソッ!まだ何もしてないのに」
「もはや連携もクソもないのじゃ」
「そうだね…。残念だけど撤退しよう」
こうして気合いを入れて臨んだクエストのはずが、討伐するはずの相手に散々遊ばれた挙句、何も出来ないまま撤退することとなった宿り木。
「ハァ~・・・バカどもが ──────── 」
その有り様を後方より眺めていたクロノは頭を左右に振りながら溜め息をつき、呆れて何も言えない様子。
再出発を図ったスズネたちの挑戦はまさに大失敗に終わったのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・。
散々な結果となった今回のクエスト。
女鳥人たちとの対峙から撤退した後、商業都市ロコンへと戻ったスズネたちであったが、話し合いの末一度ホームへと帰還することを決めた。
作戦を練り直し再び挑戦することもできたのだが、それを実行するにはあらゆる面で力が足りないと判断し、今回は帰路につくこととなったのだ。
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・。
そうして数日かけてようやくモアの街に到着したスズネたち。
しかしその足取りは重く、何処かへ立ち寄る気力すら残っておらず、そのままホームへと向かうのだった。
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・。
「ハァ~…もう少しっすね」
「なんか疲れたわーーー」
「すみません。僕が不甲斐ないばかりに・・・」
「もう!マクスウェル君、それは言いっこなしだよ」
「今回はなんもしとらんからのう。不完全燃焼じゃ」
『心と身体は繋がっている』とはよく言ったものである。
心に大きなショックを受けたことにより彼女たちの身体は鉛のように重くなり、口数は減り、動きは鈍くなる。
それでも一歩また一歩と歩みを続け、スズネたちはようやく我が家へと帰還したのであった。
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・。
「あ…あの・・・」
「ん?どうしたのセスリー」
「ホ…ホームの前にどなたかいらっしゃいます」
「えっ!?」
セスリーの言葉に反応したスズネたちが疲れ切った身体を起こしてホームへ視線を向けると、そこには確かに二つの人影があったのだった。
「ちょっ、マジで遅いんだけど~~~~~」
「ハァ~…落ち着いてください。そんなにゴネても何も生まれませんよ」
「だけどさ~~~~~」
「あっ!ほら、どうやら帰って来たようですよ」
大きな声が聞こえる。
どうやらホームの前で佇んでいる謎の二人組はスズネたちを待っていたようであり、一人は待ちくたびれて機嫌を損ねてしまっている様子。
「あの~・・・」
「ああ、これは失礼致しました。我々は ───── 」
「お~~~そ~~~い~~~。もう半日以上待ってんだよ。お腹空いた~~~~~」
「ハァ~・・・嘘言わないでください。まだ三十分程度しか経っていませんよ。それよりも突然の訪問で申し訳ありません。お尋ねしますが、こちらは冒険者パーティ『宿り木』のホームで間違いありませんでしょうか?」
「は…はい。私たちが宿り木ですけど」
「おおーそれはよかった。我々はあなた方に少々お願いしたいことがあり参上した次第なのです」
「は…はぁ~・・・。それであなたたちはどちら様でしょうか?」
「おおーこれは失礼致しました。私としたことが興奮のあまり失念しておりました。私の名はフリット、しがない冒険者でございます。そして、こちらにいらっしゃるのが我がクランのリーダー カルラ様です」
「ご丁寧にどうも・・・えっ!?」
「ん?」
突然現れた見知らぬ人物たちの自己紹介を聞き違和感を覚えたスズネが仲間たちへと視線を向ける。
そして仲間たちもまた少し驚いた様子で視線を送り合う。
その様子を前にしてフリットと名乗る男は不思議そうにしながらも笑顔を崩さないように努めている。
「「「「「「 えっ!?えっ!?えっ!? 」」」」」」
「どうかなさいましたか?」
「「「「「「 えーーーーー!?!?!? 」」」」」」
スズネたちの声が森中に響き渡る。
あまりの衝撃に全員目を丸くし開いた口が塞がらない。
その驚愕の事実につい今し方まで落ち込んでいたことなど吹き飛んでしまった。
それもそのはず、今自分たちの目の前にいる人物こそまさにガルディア王国中で話題を席巻しているSランククラン『焔』のリーダー カルラその人なのであった。
「フリット!ご~~~は~~~ん~~~」
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