魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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拡大する恐怖

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チュンチュンチュン…チュンチュンチュンチュンチュン ───────── 。

朝の早い時間にのみ味わうことができる特有の澄んだ空気。
今日もガルディアの空には雲一つない青空が広がっている。
そんないつもの日常が始まろうとしている中、ドス黒い殺意を滲ませた凄惨な事件が顔を出す。


「うわぁぁぁぁぁ ──────── 」


その悍ましい光景によって生み出された悲鳴は、商業都市ロコン、冒険者の街リザリオ、中間都市ギャシャドゥルの三都市でほぼ同時刻に上げられた。
そして、それは首都メルサにある王宮、リザリオにある冒険者ギルド本部、ロコンにある商業ギルド本部にすぐさま報告がなされた。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


~首都メルサ王城 国王執務室~

バンッ!


「国王様!!」

「なんだ?朝から騒々しいぞ」

「申し訳ありません。ただ、至急ご報告しなければならない事がございます」


スラスラスラスラッ ──────── コトッ。


「分かった。聞こう」

「それではご報告致します」


─────────────────────────


~リザリオ 冒険者ギルド本部~


「フゥーッ・・・もう朝か」


コンコンコンッ ──────── 。


「うん?こんな時間に何だ?」


ガチャッ。


「失礼致します。ギルドマスター、例の件でまた被害者が出ました」

「何?次は何処でだ」

「それが、今回は ──────── 」


─────────────────────────


~ロコン 商業ギルド本部~

コンコンコンッ ──────── 。


「はい。どうぞ」


ガチャッ。


「失礼致します。フッガー様、朝から申し訳ありませんが緊急事態です。至急ご覧頂きたいものがありますので、少々お時間宜しいでしょうか?」

「おやおやフィリップ、あなたほどの者からして緊急事態ですか。それは一大事ですね。すぐに向かうとしましょう」

「ありがとうございます。詳細につきましては移動しながらご説明致します」


─────────────────────────


商業都市ロコン、冒険者の街リザリオ、中間都市ギャシャドゥル、ガルディア王国南部を支える三都市で起きた同時殺人。
その事実は瞬く間にガルディア王国中へと広まり、人々に特大の恐怖と混乱を与えた。
そして、それはそれぞれの組織を率いる者たちにとってそれ以上の意味を持つこととなった。
その理由は大きく分けて二つ。
一つは、これまでの傷害事件とは違いいよいよ人の命が奪われたということ。
そしてもう一つは、三つの都市で同時に犯行が行われたということ。
これらによって一連の事件に対する彼らの捉え方は激変する。
他人の命を奪うことは何よりも重い罪であり、それは如何なる理由があろうとも許されるものではない。
そして、一夜のうちにして遠く離れた三都市で犯行が行われたことによって、これまで単独犯であると考えられていた犯人が複数犯であるということが確定したからである。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


時は戻り事件発生当日の朝、各組織のトップたちは早々に事件解決に向けて動き出す。


~首都メルサ王城 国王執務室~

「失礼します。お呼びでしょうか、レオンハルト様」

「朝からすまないな、アーサー。殺人事件が発生した。場所は、ロコン、リザリオ、ギャシャドゥルの三都市。昨夜から本日早朝までの間にかけて犯行が行われた可能性が高い」

「最近巷を騒がせている事件絡みでしょうか」

「私はそうみている。同時に三都市で犯行を行ったことから犯人は複数いるとみて間違いないだろう。アーサー、直ちに各都市の騎士団に伝令を送ってくれ」

「ハッ、了解しました」


─────────────────────────


~リザリオ 冒険者ギルド本部~

バゴッ!!

拳と壁がぶつかり合う鈍い音が部屋の中に響く。


「あーーーーークソが!!ナメた真似しやがって」

「それで、どうなさいますか?ギルドマスター」

「フゥーーー・・・。とりあえず各支部に通達を送れ!どんな些細な情報でもいい、価値のあるモノには賞金を出すと伝えろ。それから ───── 冒険者どもには、自分の身くらい自分で守れと言っておけ!!」

「はい…かしこまりました」


─────────────────────────


~ロコン 商業ギルド本部~

「いかがなさいますか?フッガー様」

「う~む・・・そうですね~。一先ず商人の皆さんには警戒を怠らないようにと。そして、万が一事件に遭遇しても闇雲に深追いなどはせぬようにとお伝えください」

「承知致しました」

「それからフィリップ、今回の件あまりにも情報が無さすぎます。商人の皆さんにも協力を仰ぎかき集めてください」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


こうして国王レオンハルト、冒険者ギルドマスターメリッサ、商業ギルド長フッガー、各組織を率いるトップたちはそれぞれの組織に対して改めて情報収集を命じ、事件解決に向けて本格的な捜査に乗り出したのだった。
しかし、彼らの思惑とは裏腹に犯人の捜索は難航する。
騎士団の情報網、冒険者の情報網、商人の情報網、それぞれ独自のネットワークを駆使してありとあらゆる角度から情報を集めようとしたのだが、怪しい人物はおろか性別や体躯などの情報すらも得ることは出来なかった。
犯行における一切の痕跡を消す ───── そんなことが可能なのだろうか。
いったい犯人は何者なのか。
捜査を開始してから一週間が経ち、それぞれがなかなか思うように進まない現状に焦りを感じ始める中、そんな彼らの苦労を嘲笑うかのように次の犯行が行われる。

その日も夜が深まり人々が寝静まった頃、王都メルサにて騎士小隊が怪しい人物たちと交戦していた。


ドゴーーーン!!

「「「ぐわぁぁぁぁぁ」」」

「ガーッハッハッハッ。脆い脆い。そんな脆弱さでいったい何を守るんだ?」


巨漢の男一人に対して三人の騎士が応戦していたのだが、その圧倒的なパワーの前に苦戦を強いられていた。


「なんて怪力だ・・・」

「ただ力任せに戦っているだけなのにこの強さ・・・」

「バケモノめ」

「黙れ。弱い奴は強い奴に喰われる運命なんだよ。貴様ら弱いヒト族が何匹集まろうと俺の敵じゃねぇ。そろそろ死んどけや」

「「「ちくしょーーーーー」」」


グシャッ ─── グシャッ ─── グシャッ。


「ハァ~・・・コイツらも歯応えがねぇなぁ~」


─────────────────────────


ヒュンッヒュンッ ──────── ドサッドサッ。


「うわぁぁぁぁぁ ────── 腕がぁぁぁ・・・俺の腕がぁぁぁぁぁ」


一方では美しい容姿をした女性と対峙していた騎士が目にも留まらぬ剣技の前に両腕を斬り落とされて苦悶の表情を浮かべながら悶絶していた。


「あらあら大丈夫ですか?腕ならこちらに落ちていますよ。あなたが落とした腕はこちらの右腕ですか?それともこちらの左腕ですか?」

「フゥーッ・・・フゥーッ・・・。頭のイカれた悪魔め・・・。地獄に・・・堕ちろ・・・」


ヒュンッ ──────── スパッ・・・ボトッ。


「レディに対して失礼なこと言うわね。ヒト族の男って弱い上に頭も悪いのかしら」


─────────────────────────


キーンッ、キーンッ、キーンッ ──────── 。


「ほらほら、頑張って、頑張って」

「クソッ…。うおぉぉぉぉぉ」


ブンッ ───── ガンッ!!ガガッ…ガガッ…ガガガガガッ。


そしてもう一方では、この小隊を率いる騎士隊長が小柄な少年と剣を交えていた。


「貴様・・・何者だ・・・。なぜ、こんなことを」

「はぁ?言うわけないじゃん。それに言ったところで・・・君もうすぐ死ぬじゃん」

「きっ…騎士をナメるなよ」

「はいはいはい。終わらしたいから速度を上げるよ」


グサッ ──────── ブシュッ。


「ぐわぁっ」


グサッ ──────── ブシュッ。


「うぐっ…」


鋭い剣技によって両太腿を串刺しにされた騎士は強制的に地に伏せさせられる。

ザッ…ザッ…ザッ…。

痛みに耐えて必死に相手を睨みつける騎士の前に無垢な表情の少年が立つ。
ここまでか・・・。
そう悟った騎士は、最後まで騎士であろうする。
悔しさも、無念さも、その歯痒い想いを胸に秘めて最後の口撃を放つ。


「クッ…。貴様らが何者かは知らんが、この国はお前らの思い通りになどならんぞ。我々騎士団が王国の守護者として ──────── 」


グサッ ──────── ドサッ。


「うるさっ。何が王国の守護者だよ。自分のことすら守れてないじゃん。マジで雑魚すぎ」

「そう言ってやるな。弱者も弱者なりに生きる意味が必要なんだろ。まぁ~弱者の存在理由なんて強者に踏み潰されることだけなんだがな」

「二人とも、あまりはしゃぎすぎないように」

「うるせぇな。せっかく苦労してゴミどもの国に来たんだから好きにやらせろよ。これだからお前とは来たくなかったんだ。女はピーピーうるさくて堪らん」

「フンッ、それはこちらのセリフです。あなたのような力に任せた雑な仕事しかできない者と任務を共にしなければならないなんて、ノア様の頼みでなければ絶対にお断りです」

「二人ともうるさいよ~。そろそろ動かないと別の奴らが来るかも。今はまだバレるわけにはいかないんだからさっさと行くよ」

「そうね。一先ず戻りましょう」

「ハァ~・・・。次はもうちょい手応えのある奴と戦いてぇな~」


ズズズズズッ ──────── 。


「行きますよ~」


ザッザッザッ ───── スーーーッ。


またもや犯行に及んだ謎の三人組。
これまで冒険者ばかりを狙ってきた彼らだが、今回は街を警邏していた騎士小隊が討たれることとなった。
無慈悲に・・・そして残酷に ──────── 。
見るも無惨な姿にされた騎士たちの亡骸は、冷たい夜風に乗せて血腥い死臭を撒き散らす。
そうして今回も仕事を終えた彼らは静かに闇の中へと消えていったのだった。




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