魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

文字の大きさ
95 / 200

昇級試験

しおりを挟む
グリーンアイランドの事件から一年後。
スズネたちは当初予定していた三ヶ月という修行期間を大幅に延ばしていた。

いったい何故そのような事態になってしまったのか ──────── 。
その理由はミリアとマクスウェルにあった。

グリーンアイランドから戻った二人は運命的な出会いを果たす。
それは世界に数多くいる剣士を名乗る者たちの頂点に立つ男。
世界最強の剣士と謳われる“剣聖ミロク”との出会いであった。
そんな世界中が認める大剣豪に運良く剣の指導を受けさせてもらえることとなった二人なのだが・・・。
なんとミロクは指導を開始してから半年の間二人に対して剣に触れることの一切を禁止し、さらにクエストへの参加も禁止したのだった。
それによりスズネたちは予定を変更せざるを得なかったのである。

そして指導が開始されてから半年後、ようやく剣を使った修練が開始されたものの、基本的な型の素振りと瞑想という二つのメニューをただひたすらに繰り返すだけなのであった。


そこからさらに半年後 ──────── 。
やっとミロクからミリアとマクスウェルのクエスト参加が認められる。
その間の宿り木はというと、前衛二人を欠くこととなったため討伐クエストを受けることを諦め、素材集めや薬草採取、モアの街の人たちの手伝いなどの低ランククエストを受けていたのだった。

そして、そのような期間を経て久しぶりにフルメンバーでクエストに臨めることを喜び心躍らせるスズネなのであった。


「本当に久しぶりだよね。みんなでクエスト受けられるの」

「あんのクソジジイ~。冒険者に対して一年半もクエストを禁止するなんてマジでふざけてるわ」

「まぁまぁ落ち着いてください。ミロク様にも何かしらの意図があるんでしょうから」

「はぁ?いったいどんな意図があって剣士から剣を取り上げるってのよ。素振り、瞑想、たまにアンタとの打ち込み。一年半の間でやったことがこの三つだけなのよ!!」


いったいこの一年半の間に何があったのか ──────── 。
ミリアによるミロクへの愚痴が止まらない。
そして、荒れ狂うミリアを前にマクスウェルはそこにもミロクの意図があるのだと宥めるのだが、火に油を注ぐ結果となる。
そんな二人のやり取りを笑って見守るスズネたちなのであった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


いよいよ始まる討伐クエスト。
ミリアとマクスウェルにとっては一年半ぶりのクエスト。
そして、スズネたちもその間討伐クエストを受けていなかったため宿り木にとっても久しぶりの討伐である。


今回の討伐対象は ──────── 小鬼ゴブリンの群れ。
どうやら武装小鬼ホブゴブリンに率いられた群れのようで、近隣の村人が薬草採取に訪れたところを襲撃されたらしい、
そのため今回のクエストクリア条件は小鬼ゴブリンの群れの殲滅である。


「うおりゃぁぁぁぁぁ」


ザンッ!ズバァン!!ズババババァン!!!


これまでの鬱憤を晴らすかのように次々と小鬼ゴブリンを斬り伏せていくミリア。
最強を目指す彼女にとって、この一年半は周囲の者たちが考える以上に耐え難いものだったのだろう。
その間に溜めに溜めたストレスを嬉々として発散していく。


「す…凄いっすね…」

「ほ…本当にブランクがあるのでしょうか」

「わっちらの出番が無いのじゃ」


一見すると八つ当たりをして格下の魔物たちを薙ぎ倒しているようにも見えるのだが、ミリアのそれは最小限の動きと最短距離での剣捌きによって一切無駄の無いものとなっていた。
そして、そんな快進撃を見せるミリアの隣で負けじと凄まじい勢いで小鬼ゴブリンを斬って倒すマクスウェルの姿が。


ザンッ!ザンッ!ザンッ!ザザンッ!!!


「マクスウェル!アンタ出された課題忘れてないでしょうね」

「もちろんです。全ての敵を一撃で倒すこと。そして、一匹たりとも打ち損じることのないように」


競うように小鬼ゴブリンを倒していく二人。
どうやら師匠であるミロクから今回の討伐クエストに参加するにあたり課題が出されているようだ。
二人の必死な様子からして失敗した場合には何やらキツいペナルティが課せられているみたいだ。
そして、それを阻止するために二人は懸命に目の前の敵を一撃で仕留めていく。


「ダメだわ。コイツら弱過ぎ!マクスウェル、討伐数で勝負よ。負けた方は明日の打ち込み稽古中ずっと受け手よ!」

「いいですね。明日は一日僕の剣を受けてもらいますよ」


─────────────────────────


小鬼ゴブリンの群れと遭遇してから三十分後 ────── 討伐完了。
結果的に六体の武装小鬼ホブゴブリンと五十体を超える小鬼ゴブリンのほとんどをミリアとマクスウェルの二人で討伐してしまった。
あっという間の出来事にスズネたちは唖然としてしまう。

今回のクエストは一応Cランクのクエストに設定してはあるものの、数も多いためBランクパーティであっても苦戦するのではないかと考えられていた。
しかし、結果は圧倒的であった。
しかも三十分もの間敵を斬り続けていたミリアもマクスウェルも息ひとつ乱していない。
むしろ修練前の準備運動くらいにしか思っていないような涼しい顔をしている。


「はぁ~物足りないわ」

「確かに手応えのない奴らでしたね」


この一年半で明らかに強くなったミリアとマクスウェルの実力に驚愕するスズネたち。
今回のクエストについては、受付のマリからも十分に気をつけて臨むようにと念押しされていたため全員が長期戦を予想していた。
それがこの有り様である。


「わっちも強力な魔法を見せたかったのじゃ!」

「ウチらも強くなったんすけどね・・・」

「こ…今回は出番無しでしたね」

「ま…まぁ~無事にクエストもクリアしたことだしギルドに戻ろっか」


こうして気合い十分で臨んだ久々の討伐クエストをあっさりと終えた宿り木。
その後も各自修練を積みながらクエストをこなしていくという生活が続くのだった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 


一年後 ──────── 。

冒険者ギルドモア支部 ~ Bランク昇級試験会場 ~


Bランクへの昇級を目指し試験に臨むスズネたち。
二年半にも及ぶ修練の成果を発揮し試験官であるBランク冒険者たちを一蹴するスズネたち。
そして、最後の大トリとしてミリアが昇級試験に臨む。


「冒険者パーティ“星の雫”のリーダーでBランク冒険者のモリンソンだ。試験は俺に一撃入れられれば合格だ。ここから先のランクはこれまでとは比べ物にならない魔物や魔獣と戦わなければならないからな。半端な実力じゃ合格はさせられないぜ」

「はい、はい。御託はいいからさっさと始めてくれる?こっちは最強目指してんのよ」

「フンッ、生意気な嬢ちゃんだ。口先だけじゃないことを願うよ。いつでもかかって来な!!」


───────── シュンッ。


「へっ?」

「おっそ」


ガンッ!!!!!


圧倒的な実力差を見せつけて合格するミリア。
それでも本人曰くまだまだ全然ダメらしい。
それは師であるミロクからこれまでにたったの一本すら取ることが出来ておらず、しかもミロクはその実力の片鱗すらも見せてはいないのだという。
そんな日々を過ごしているミリアからすると今回の昇級試験は物足りないものであった。

まぁ~何はともあれ無事に全員揃ってBランクへと昇級したスズネたち。
パーティランクもBランクとなり、今後受けられるクエストの幅も広がった。
そして、最後にマリから更新された冒険者カードが渡される。


「みんな、Bランクへの昇級おめでとう!聞いた話だとかなり余裕だったらしいわね」

「マリさん、ありがとうございます。なんとか合格出来て良かったです」

「またまた~謙遜しちゃって」

「マリさ~~~ん。もう全然ダメ!もっと強い人とりたかった~」

「うふふふふ。ミリアは相変わらずね。それじゃ、冒険者カードの更新も済んだし返しておくわね」


こうして無事にBランクとなったスズネたちは、さらなる冒険に向けて確かな一歩を踏み出したのであった。


─────────────────────────

冒険者ランク B

氏名:スズネ Lv.48 魔法師 / 召喚師

召喚獣:クロノ Lv.1
    ラフネリアス(緑龍) Lv.580

所属パーティ:宿り木 (リーダー) Bランク


                 Bランククエスト達成回数 0/50

─────────────────────────


─────────────────────────

冒険者ランク B

氏名:ミリア Lv.60 剣士

武具:炎帝の剣 Lv.25

所属パーティ:宿り木 Bランク


                 Bランククエスト達成回数 0/50

─────────────────────────


─────────────────────────

冒険者ランク B

氏名:ラーニャ Lv.56 魔法師

召喚獣:ルドラ (グリフォン) Lv.320

所属パーティ:宿り木 Bランク


                 Bランククエスト達成回数 0/50

─────────────────────────


─────────────────────────

冒険者ランク B

氏名:シャムロム Lv.63 大盾使い

武具:白月の大盾 Lv.350

所属パーティ:宿り木 Bランク


                 Bランククエスト達成回数 0/50

─────────────────────────


─────────────────────────

冒険者ランク B

氏名:セスリー Lv.70 |射手(アーチャー)

武具:覇穹 Lv.189

所属パーティ:宿り木 Bランク


                 Bランククエスト達成回数 0/50

─────────────────────────


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

ウォーキング・オブ・ザ・ヒーロー!ウォークゲーマーの僕は今日もゲーム(スキル)の為に異世界を歩く

まったりー
ファンタジー
主人公はウォークゲームを楽しむ高校生、ある時学校の教室で異世界召喚され、クラス全員が異世界に行ってしまいます。 国王様が魔王を倒してくれと頼んできてステータスを確認しますが、主人公はウォーク人という良く分からない職業で、スキルもウォークスキルと記され国王は分からず、いらないと判定します、何が出来るのかと聞かれた主人公は、ポイントで交換できるアイテムを出そうとしますが、交換しようとしたのがパンだった為、またまた要らないと言われてしまい、今度は城からも追い出されます。 主人公は気にせず、ウォークスキルをゲームと同列だと考え異世界で旅をします。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現世に侵略してきた異世界人を撃退して、世界を救ったら、世界と異世界から命を狙われるようになりました。

佐久間 譲司
ファンタジー
突如として人類世界に侵略を始めた異世界人達。圧倒的な戦闘能力を誇り、人類を圧倒していく。 人類の命運が尽きようとしていた時、異世界側は、ある一つの提案を行う。それは、お互いの世界から代表五名を選出しての、決闘だった。彼らには、鉄の掟があり、雌雄を決するものは、決闘で決めるのだという。もしも、人類側が勝てば、降伏すると約束を行った。 すでに追い詰められていた人類は、否応がなしに決闘を受け入れた。そして、決闘が始まり、人類は一方的に虐殺されていった。 『瀉血』の能力を持つ篠崎直斗は、変装を行い、その決闘場に乱入する。『瀉血』の力を使い、それまでとは逆に、異世界側を圧倒し、勝利をする。 勝利後、直斗は、正体が発覚することなく、その場を離れることに成功した。 異世界側は、公約通り、人類の軍門に下った。 やがて、人類を勝利に導いた直斗は、人類側、異世界側両方からその身を狙われるようになる。人類側からは、異世界の脅威に対する対抗策として、異世界側からは、復讐と力の秘密のために。

パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い

☆ほしい
ファンタジー
過労とパワハラで心身ともに限界だった俺、佐伯湊(さえきみなと)は、ある日異世界に転移してしまった。神様から与えられたのは【万能造船】というユニークスキル。それは、設計図さえあれば、どんな船でも素材を消費して作り出せるという能力だった。 「もう誰にも縛られない、自由な生活を送るんだ」 そう決意した俺は、手始めに小さな川舟を作り、水上での生活をスタートさせる。前世の知識を活かして、この世界にはない調味料や保存食、便利な日用品を自作して港町で売ってみると、これがまさかの大当たり。 スキルで船をどんどん豪華客船並みに拡張し、快適な船上生活を送りながら、行く先々の港町で特産品を仕入れては別の町で売る。そんな気ままな水上交易を続けているうちに、俺の資産はいつの間にか小国の国家予算を軽く超えていた。 これは、社畜だった俺が、チートな船でのんびりスローライフを送りながら、世界一の商人になるまでの物語。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...