魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

文字の大きさ
96 / 200

火種

しおりを挟む
無事にBランクへの昇級を果たしたスズネたち。
精力的にクエストをこなしつつも日々の修練を欠かすことはなく、ミリアとマクスウェルに至っては師匠であるミロクよりまだまだ地味な修練を課せられていた。

そんなスズネたち宿り木であるが、Bランクへの昇級試験を圧倒的な力を示して合格したことにより周囲の者たちからはすでにBランク上位もしくはAランクの実力があるのではないかと囁かれ始めていた。
しかし、今のスズネたちにはそんな声に耳を傾けている余裕などなかった。
それは彼女たちを指導する二人の人物。
スズネ・ラーニャ・シャムロム・セスリーを指導するクロノ、そしてミリア・マクスウェルを指導するミロクがそんな慢心や甘えを一切許さなかったからである。


「はぁ~。せっかくBランクになったってのに毎日毎日地味~な修練ばっか」

「ハハハ…ウチらも似たようなもんすよ」

「基本は大事ですからね。僕たちはまだまだ弱い。だから地味な基礎練を反復させているんですよ」

「そんなこと・・・分かってるわよ!」


ミロクの元で腕を磨くミリアたちだけでなく、クロノに指導を受けている者たちも今現在は基本的な部分を叩き込まれている最中なのであった。
ラーニャは自身の体内を流れる魔力を思い通りに操れるようにと魔力操作の練習ばかり。
シャムロムは元々頑丈である身体に依存した戦い方を指摘され、基本的な戦闘技術を叩き込まれている。
そしてセスリーは引き続き両眼の魔眼の制御方法と段階的な力の解放を学びつつ、シャムロムと共に近接戦闘の訓練を課せられていた。

仲間たちが基本的な修練に励む中、スズネはというと ──────── 。
一日のほとんどを読書に費やしていた。
そして、その本というのは魔法書や歴史書ばかりであった。
過去の歴史や古い魔法書からグリーンアイランドで自身に起きたという光の正体を探ろうとしていたのだ。
もちろんそれに加えてパーティの戦力となるように新たな補助魔法や回復魔法の習得にも取り組んでいた。


そんな中で迎えた今回の討伐クエスト。
ターゲットはBランク魔獣単眼鎧巨人アーマードサイクロプス
その討伐に向けて一行は住処である洞窟を目指し歩みを進めていた。


「いや~今回は骨のありそうなヤツよね!」

「単体でBランクっすからね。気を抜いてたらヤバそうっすよ」

「そもそも単体でいるかどうかも分かりませんからね。無闇矢鱈と単独で特攻するなんてことは止めてくださいよ」


ギルドで設定されている討伐ランクに関しては、その魔獣自体の戦闘力はもちろんのこと単体なのか複数体なのか、さらには連携度合いや組織力など総合的な評価によって決められている。
そのため単独ではCランクであったとしてもその数や組織力によってはBランクや時としてAランクとされる時もあるのだ。

今回の相手はそんな中単体でBランクとされている単眼鎧巨人アーマードサイクロプス
ただでさえ強力な単眼巨人サイクロプスにおいて、皮膚が鎧のように硬質化されており、並の攻撃では傷ひとつ付けることも難しい。
さらに単眼巨人サイクロプスよりも体格的にひと回り大きく繰り出される攻撃もより強力になっている。
まさに攻守両面で難敵と言えるのだ。

そんな強敵と戦える。
ミリアの心が踊らないわけがない。
しかし、それを見越してマクスウェルがすかさず釘を刺す。
それはもちろん他の仲間たちのことを考えての行動でもあったのだが、それと同時に師であるミロクから目を離さぬようにと事前に忠告されていたためであった。


「さぁ~そろそろだよ。みんな注意して」


事前に入手した単眼鎧巨人アーマードサイクロプスの住処。
その洞窟を前にしてより一層の緊張感が漂い始める。


「闇を照らせ ─────── 発光ライト


洞窟内に入ると一気に気温が下がり肌寒さすら感じるほどであった。
そして、スズネの魔法による微かな光を頼りに一歩、また一歩と進んでいくと大きく開けた場所に出る。
その薄暗い広場の中央には大きな影が一つ。
どうやら今回の討伐対象である単眼鎧巨人アーマードサイクロプスのようだ。


「みんな静かに」

「ゆっくり近づいて一気に叩くっすよ」


スッ、スッ、スッ ─────── 。


物音を立てないようにゆっくりと静かに単眼鎧巨人アーマードサイクロプスへと近づいていくスズネたち。
相手はまだこちらに気づいていない。
これは純粋な決闘ではなくあくまでも討伐だ。
正々堂々と正面からというものではない。
そんなことをしていては命が幾つあっても足りない。
そんなことは誰もが分かっている・・・分かってはいるのだが、中には正面から戦いたい者もいる。
そんな者が宿り木にも一人・・・。


「あ~もう、アタシ一人でやらせてよ。力試しにはちょうど良さそう」

「ダメに決まってるでしょ。もっと強くなってからにしてください」

「ふ…二人とも今は喧嘩している場合では ───── 。もう敵は目と鼻の先です」


いつものようにミリアとマクスウェルが言い争いを始め、セスリーがそれを止めようとしたその時 ──────── 。


───────── ギランッ。


暗闇の中に一つの眼光が光る。
それを確認した瞬間スズネたちは距離を縮めることを諦め散開する。
相手に気づかれてしまってはコソコソする必要もない。
そして、ここでスズネが広場全体を暗闇から解放する。


「眩い光を放て ───── 閃光フラッシュ


眩いばかりの光のシャワーによって一気に見通しが良くなる。
幸いにも今回のターゲットである単眼鎧巨人アーマードサイクロプスは一体のみのようで周囲に他の魔獣の気配はない。


「女神の祝福」


続けて補助魔法を発動させパーティメンバー全員に身体強化を施すスズネ。
それを確認したミリアとマクスウェルが一斉に駆け出し、左右から挟み込む形で単眼鎧巨人アーマードサイクロプスに襲い掛かる。


「真っ二つにしてやるわ」

「修練の成果、試させてもらいます」


──────── ヒュンッ。

──────── ヒュンッ。

ガンッ!ガンッ!


ミリアとマクスウェルの一閃を両腕で難なくガードする単眼鎧巨人アーマードサイクロプス
そして、攻守が交代し次々とその強靭な拳を叩きつけてくるが、それらを全て一人で受け切るシャムロム。
その攻撃の隙間を狙ってセスリーが矢を放つのだが、硬い鎧の前に全て弾かれてしまう。
以前と比べると連携面ではかなり上達しているように見えるのだが、強敵を前にした時にはまだまだ火力という面において決め手に欠ける宿り木なのであった。


「ホンッッットに硬いわね」

「弱点としては眼になるっすけど、攻撃だけじゃなくて守りもしっかりしてるっすよ」

「す…すみません。相手の隙を見て狙って入るんですが、紙一重のところで上手く受け流されてしまいます」


さすがはBランクに設定されているだけのことはある。
直前まで強気な発言を繰り返していたミリアでさえ、もうそのような発言をしようとは考えもしない。
なんとか突破口を見つけ出そうと全員が思考を巡らせていると、それまで一言も発することのなかったクロノが口を開く。


「ラーニャ、そろそろ準備はいいか?」

「バッチリなのじゃ!皆にわっちの修行の成果を見せてやるのじゃ!!」


自信満々のラーニャがニヤリと不敵な笑みを見せると単眼鎧巨人アーマードサイクロプスの頭上に黒い球体が現れる。


「黒き|雷(いかづち)よその雷撃を以って、敵を穿て ───── 黒雷の一撃ブラックサンダー


ビッ ──────── バリバリバリッッッッッ!!!



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 


単眼鎧巨人アーマードサイクロプスを討ち取ったスズネたちはモアの街へと帰還していた。


「わーっはっはっはっ!やはりわっちの魔法が最強のようじゃな。まぁ~あの程度の敵であれば何の問題もなかったがのう」

「クソ~~~ッ。まだまだ修行が足りないわ。あんなデカブツくらい軽く叩っ斬れないと話にならないわ」

「まぁまぁ、今回も無事にクエストクリア出来たんだからまずは喜ぼうよ」


今回の討伐対象である単眼鎧巨人アーマードサイクロプスの鎧を持ち帰ったスズネたちは、そのまま報告のため冒険者ギルドへ。


バタバタバタバタ ──────── 。


「ん?どうしたんだろ?」

「なんか慌ただしいっすね」


何かあったのか、いつもの落ち着いた様子は見る影もなくギルド中がバタバタと騒がしく、冒険者たちはあちこちでザワついており、ギルド職員たちは忙しそうに走り回っている。
そして、状況が分からないスズネたちがキョロキョロと周囲を眺めているとちょうどその前をマリが通り掛かる。


「あっ!マリさん」

「あ~みんなお帰り。今回も無事に討伐出来たみたいね」

「はい。それよりも何かあったんですか?」

「ええ、ちょっと…いや、だいぶマズいことが起こっちゃってね。冒険者ギルドもてんやわんやの状態なのよ」

「なんかみんなの慌てようからしてかなりヤバそうなんですけど、いったい何が?」

「それがね。王都へと向かっていた獣人国の商人の一団がヒト族によって襲撃されたようなの」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

ウォーキング・オブ・ザ・ヒーロー!ウォークゲーマーの僕は今日もゲーム(スキル)の為に異世界を歩く

まったりー
ファンタジー
主人公はウォークゲームを楽しむ高校生、ある時学校の教室で異世界召喚され、クラス全員が異世界に行ってしまいます。 国王様が魔王を倒してくれと頼んできてステータスを確認しますが、主人公はウォーク人という良く分からない職業で、スキルもウォークスキルと記され国王は分からず、いらないと判定します、何が出来るのかと聞かれた主人公は、ポイントで交換できるアイテムを出そうとしますが、交換しようとしたのがパンだった為、またまた要らないと言われてしまい、今度は城からも追い出されます。 主人公は気にせず、ウォークスキルをゲームと同列だと考え異世界で旅をします。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現世に侵略してきた異世界人を撃退して、世界を救ったら、世界と異世界から命を狙われるようになりました。

佐久間 譲司
ファンタジー
突如として人類世界に侵略を始めた異世界人達。圧倒的な戦闘能力を誇り、人類を圧倒していく。 人類の命運が尽きようとしていた時、異世界側は、ある一つの提案を行う。それは、お互いの世界から代表五名を選出しての、決闘だった。彼らには、鉄の掟があり、雌雄を決するものは、決闘で決めるのだという。もしも、人類側が勝てば、降伏すると約束を行った。 すでに追い詰められていた人類は、否応がなしに決闘を受け入れた。そして、決闘が始まり、人類は一方的に虐殺されていった。 『瀉血』の能力を持つ篠崎直斗は、変装を行い、その決闘場に乱入する。『瀉血』の力を使い、それまでとは逆に、異世界側を圧倒し、勝利をする。 勝利後、直斗は、正体が発覚することなく、その場を離れることに成功した。 異世界側は、公約通り、人類の軍門に下った。 やがて、人類を勝利に導いた直斗は、人類側、異世界側両方からその身を狙われるようになる。人類側からは、異世界の脅威に対する対抗策として、異世界側からは、復讐と力の秘密のために。

パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い

☆ほしい
ファンタジー
過労とパワハラで心身ともに限界だった俺、佐伯湊(さえきみなと)は、ある日異世界に転移してしまった。神様から与えられたのは【万能造船】というユニークスキル。それは、設計図さえあれば、どんな船でも素材を消費して作り出せるという能力だった。 「もう誰にも縛られない、自由な生活を送るんだ」 そう決意した俺は、手始めに小さな川舟を作り、水上での生活をスタートさせる。前世の知識を活かして、この世界にはない調味料や保存食、便利な日用品を自作して港町で売ってみると、これがまさかの大当たり。 スキルで船をどんどん豪華客船並みに拡張し、快適な船上生活を送りながら、行く先々の港町で特産品を仕入れては別の町で売る。そんな気ままな水上交易を続けているうちに、俺の資産はいつの間にか小国の国家予算を軽く超えていた。 これは、社畜だった俺が、チートな船でのんびりスローライフを送りながら、世界一の商人になるまでの物語。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...