魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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セカンドアタック

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モンナケルタへの調査から帰還して数日が経ち、スズネたちは再び単眼巨人サイクロプス討伐に向けて準備を進めていた。


「次こそは敵の本陣に斬り込んでやるわ」

「前回以上に気合い入ってるね!ミリア」

「当たり前よ!前回はまともに戦えなかったからね。次は必ず討ち倒してみせるわ」


前回の戦闘では負傷者の存在もあり、即時撤退に追い込まれまともに戦うことができなかった。
それはミリアにとっても他のメンバーにとっても不完全燃焼であった。
さらにいうと、スズネたちが前回の調査報告を行ったことで他の街へAランクパーティの派遣要請が開始され、よりスピード感をもって取り掛からなければ彼らに先を越される可能性も出てきたのだ。
それ故に、既にクエストを受けている冒険者たちの動きもまた早くならざるを得ないのだった。


「よし、準備完了!それじゃモンナケルタに向けて出発するよ」

「「「「「オーーーーー!!」」」」」


単眼巨人サイクロプス討伐に向けて再びモンナケルタへと出発したスズネたち。
前回とは違い、今回はただの調査で終わらせる気など毛頭ない。
あくまでも敵本陣へのアタックを目指す。
そんな彼女たちの道中での話題は、やはり単眼巨人の王サイクロプスキングについてであった。


「あ~本当にいないかな~単眼巨人の王サイクロプスキング

「でも、奴らの統率された感じからして王がいるかどうかは別として群れのボスはいるでしょうね」

「ハァ~…バカなのマクスウェル。ボスなんて求めてないのよ!アタシが戦いたいのは伝説の単眼巨人の王サイクロプスキングなの!」


話せば話すほどに熱を帯びていく言葉。
自分の実力以上の相手と戦ってこそ成長がある。
ミリアの言葉の根底にはそういった想いがあり、そのために厳しい修行にも耐えてきたのだ。


「す…すみません。私が余計なことを言ってしまったばかりに・・・」

「セスリーが気にする必要なんかないっすよ。ウチらはセスリーが嘘を言ってるなんてこれっぽっちも思ってないんすから」

「は…はい。ありがとうございます」


メンバー全員がセスリーの言葉を信じている。
これまで苦楽を共にしてきた中で、彼女が軽はずみなことを口にしないと知っている。
しかし、自身の発言により事態を大きく動かしてしまったことに責任を感じてしまい、それによって彼女自身がその言葉に自信を持てなくなってしまっていた。
そんな仲間の姿を前にしながら、スズネたちは心配を寄せながらもかける言葉を見つけられずにいた。
その時、彼女たちの間を何とも言えない空気感が漂う中であの魔王が思いもよらない言葉を口にする。


「おい、何をそんなに落ち込んでいる。確かに言ったぞ。王の元へ連れていくと」


・・・・・。


「「「「「「 えっ!?!? 」」」」」」


一瞬の静寂の後、一同が示し合わせたかのように驚きの声を発する。


「えっ!?えっ!?待ってクロノ、今なんて」

「あ?だから、あのデカブツどもが女は生け捕りにして王の元へ連れて行くって言ってたって話だろ」

「ちょっと、アンタも聞いてたの?」

「いや、普通に聞こえただろ」

「いやいやいやいや、それならどうしてギルドに報告してる時に言わなかったんすか!」


飄々とした表情をしながら、何をそんなに騒いでいるのかが分からないといった素振りをみせるクロノ。
それに対して、スズネ・ミリア・シャムロムと矢継ぎ早に質問をぶつけたのだが、それでもクロノの様子は変わらない。
それどころか、むしろ慌てている彼女たちの姿を見て鬱陶しいとすら思っているようであった。


「チッ、うるせぇーな。あの場では黙ってた方が都合が良かっただろ」


??????

クロノが言っている言葉の意味が分からない。
なぜギルドへの、ましてや支部長であるリタへの報告の場で単眼巨人の王サイクロプスキングの存在を隠しておく方が良いと思ったのか。
皆一様に不思議そうな顔を見せながら頭の上に大きな?マークを浮かび上がらせている。


「ごめんねクロノ。一つずつ確認させて。それじゃセスリーが言ってたことは本当だったってことだよね」

「当然だ」

「それからギルドへの報告をしない方が都合が良かったっていうのはどういうことなの?」

「あぁ?あのちっこいババアが言ってただろ。デカブツの王がいた場合クエストのランクが上がると。そうなった場合、お前たちはどうなる?」

「クエストランクが今のBからAに上がったら・・・。Bランクパーティの私たちは受けることができなくなる」


確かにギルドへの報告をした際に、リタは単眼巨人の王サイクロプスキングの存在が確認され次第クエストランクを上げると話ていた。
もし仮にそうなった場合、クエストランクはA以上となり、Bランクに上がったばかりの宿り木は今回の件から外されていた可能性が高い。
それを見越してクロノはあえて沈黙を貫いたというのだ。


「まぁ~あの場で俺がその存在を認めていたら、お前たちは手を引かされていただろうな。そうなるとデカブツどもはもちろんのこと奴らの王とも戦えなくなるわけだ。それだと都合が悪いだろ?ミリア」


そうしてスズネの質問に対して何を言っているんだと呆れた様子で返答していたクロノであったのだが、最後にミリアへ視線を向けると、どうだとでも言いたげにニヤリと笑みを浮かべたのだった。


「アハッ…アハハハハ。やるじゃないのよアンタ!」


クロノの話に驚き言葉を失っていたスズネたちの沈黙を切り裂くように歓喜したミリアが声を上げる。
まぁ~クロノとしては下等な魔獣ごときが王を名乗っていることが気に入らないというだけの理由なのだが、この際そんなことはどうでもいい。
ミリアにとってはそうそう巡ってくることのない絶好の腕試しの機会なのだから、心躍らずにはいられない。


「さぁさぁ、他の冒険者に先を越されるわけにはいかないわ!さっさと行くわよ!」


はやる気持ちを抑えきれないミリアに率いられ、あっという間にモンナケルタへと辿り着いたスズネたち。
そして到着してから束の間の小休止を取り合えると、単眼巨人サイクロプス討伐に向けてセカンドアタックを開始したのだった。

ザッザッザッザッザッ ──────── 。

前回受けた襲撃を教訓に周囲を警戒しながら慎重に山を登っていく。

ザッザッザッザッザッ ──────── 。

しかし、何か様子がおかしい。
進めど進めど単眼巨人サイクロプスの姿が見当たらないのだ。
前回の調査で訪れた山の中腹を過ぎても一向に姿を現さない。
いったい何が起こっているのか。
スズネたちは一抹の不安を覚えつつも敵本陣を目指して歩みを進めていく。

ザッザッザッザッザッ ──────── 。


そして、ついに ──────── 。


「ここ・・・だよね」

「たぶん。ここまで他にそれらしきものは見当たらなかったわ」

「なんか薄暗くて気味が悪いっすね」


山を登り始めてから四時間以上が経過した時、彼女たちの前に大きな洞窟の入口が姿を現す。
それは巨大な単眼巨人サイクロプスであっても悠々と出入りすることができるほどの大きな口を開けた洞窟。
その姿を視界に捉えた瞬間に全員がここだと確信した。
この奥に敵の本陣があると ───── 。


「みんな一旦落ち着こう。ここまでの道のりで疲労も溜まってるし、少し休憩を取りつつ戦いの準備をしよう」


スズネの一言で張り詰めていた空気に少しばかりの余裕が生まれる。
そして、はやる気持ちとウズウズする身体を抑えつつ、各自が突入前最後の準備を進める。


「いよいよね!やってやるわ」

「どれだけの敵がいるのかも分かりません。気を引き締めていきましょう」

「先頭はウチが行くっす。援護は任せたっすよ」

「任せるのじゃ!」

「フゥー…。間違いありません。微かではありますが、洞窟の奥から血の臭いが漂ってきています」

「よし!それじゃ作戦通り単眼巨人サイクロプス討伐を開始するよ」


こうして決戦の準備を整えたスズネたちは、覚悟を決めて血生臭い臭いが漂う洞窟の中へと足を踏み入れるのであった。




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