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2話
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「お二人共、ルーラ王国の貴族の掟は存じていますよね……??」
「僕がその程度の教養もないと言いたいのかな? ちゃんと、知っているさ」
「私もお姉様ほどではありませんが、しっかりと法の勉強は致しました」
二人とも、自信満々に答える。
本当に知っているとしたら、ありえない行動をしているというのに。
倫理観も何もかも忘れてしまったのでしょうか。
「ならば、どうしてその掟に背いてしまったのですか! 知っていた上でやってしまったということでよろしいんですね?」
一体どういうつもりなのでしょう。
殿下に限ってそんなこと……流石にあってはならぬ行為です。
「ちょっと待て、僕は掟には背いていないはずだ……何を根拠にそんなことを大体、恋愛に関する掟など姦淫くらいしかないだろう。だから僕には関係がない……待ってくれ、もしかして……!」
自分で言いながら気づいたのか、殿下の顔は急激に青ざめる。
反応からして、今の今まで気づいてなかったのだろう。
貴族として、いや人としてあるまじき行為をしてしまっているということに。
どうしてこんなことになったのか……ご愁傷様としか言いようがありませんが、よりよって妹まで。
「そうです。婚約者以外との肉体関係は、姦淫に当たりますが?」
「そ、そんなこと……! だとしたらなんなのです?」
妹が明らかに動揺をしながら訊く。
「国から追放され、管理された土地で強制労働をすることになります。罪にもよりますが今回の場合はおそらく五年間ほど……」
「そ、そんな……嘘だ。王族である僕が、そんなことありえるはずもない! なあ、カレン、僕が悪かったよ。今からでもやり直そう」
なんて最低なお方でしょうか。自分の立場が危うくなったら、今度は私とよりを戻して全てをなかったことにしようとしているのでしょうか。
アウス殿下なんか、とっくに好意は冷めています。
むしろ、嫌いなまであります。
自ら公衆の面前で婚約を破棄しておいて、そんな言い草、断じて許しません。
「ちょっと、どうされましたのアウス殿下! 私は!ハルカはどうなるのです!」
「僕はやっぱり、カレンのことが好きなんだ」
薄情で最低なことをさらりと言ってのける殿下。
こんな人だったとは、心底落胆しましたわ。
この際、婚約破棄なんてもうどうでもいいくらいに。
むしろ、婚約者がアウス殿下でなくてよかったかも知れない。
「アウス殿下……! まわりをご覧になってください。パーティー会場の皆は、殿下の発言に耳を傾けている者もいるわけです。おおやけに情報が知れ渡った以上、後戻りなんてできませんよ!」
「そんな……おかしい! そんなのおかしい! いくら出せばいい! いくらなら帳消しにしてくれる! 皆、いくらなら! それか何か、地位の向上がお望みか?」
「殿下! 見苦しいですよ! 誰もそこまで落ちぶれてなどいません。諦めて観念いたしてください」
衛兵達が一斉に、アウス殿下の元に集まり身柄を確保する。
いくら、王族とはいえ関係ないのです。
ここは法治国家です。
王よりも掟が遵守される世界です。
あたふたしている妹にも衛兵が近づくと、軽く肩を掴み、奥の部屋へと連れて行かれる。
「離せ!僕が誰だかわからないのか!」
アウス殿下は、飽きることもなくひたすらに抵抗を続けている時だった。
「辞めなさい。アウス。みっともない。お前は国の恥だ!」
威勢のいい声が会場に響いた。
そこに現れたのは、アウス殿下の実の父親--レウス皇帝陛下であった。
「僕がその程度の教養もないと言いたいのかな? ちゃんと、知っているさ」
「私もお姉様ほどではありませんが、しっかりと法の勉強は致しました」
二人とも、自信満々に答える。
本当に知っているとしたら、ありえない行動をしているというのに。
倫理観も何もかも忘れてしまったのでしょうか。
「ならば、どうしてその掟に背いてしまったのですか! 知っていた上でやってしまったということでよろしいんですね?」
一体どういうつもりなのでしょう。
殿下に限ってそんなこと……流石にあってはならぬ行為です。
「ちょっと待て、僕は掟には背いていないはずだ……何を根拠にそんなことを大体、恋愛に関する掟など姦淫くらいしかないだろう。だから僕には関係がない……待ってくれ、もしかして……!」
自分で言いながら気づいたのか、殿下の顔は急激に青ざめる。
反応からして、今の今まで気づいてなかったのだろう。
貴族として、いや人としてあるまじき行為をしてしまっているということに。
どうしてこんなことになったのか……ご愁傷様としか言いようがありませんが、よりよって妹まで。
「そうです。婚約者以外との肉体関係は、姦淫に当たりますが?」
「そ、そんなこと……! だとしたらなんなのです?」
妹が明らかに動揺をしながら訊く。
「国から追放され、管理された土地で強制労働をすることになります。罪にもよりますが今回の場合はおそらく五年間ほど……」
「そ、そんな……嘘だ。王族である僕が、そんなことありえるはずもない! なあ、カレン、僕が悪かったよ。今からでもやり直そう」
なんて最低なお方でしょうか。自分の立場が危うくなったら、今度は私とよりを戻して全てをなかったことにしようとしているのでしょうか。
アウス殿下なんか、とっくに好意は冷めています。
むしろ、嫌いなまであります。
自ら公衆の面前で婚約を破棄しておいて、そんな言い草、断じて許しません。
「ちょっと、どうされましたのアウス殿下! 私は!ハルカはどうなるのです!」
「僕はやっぱり、カレンのことが好きなんだ」
薄情で最低なことをさらりと言ってのける殿下。
こんな人だったとは、心底落胆しましたわ。
この際、婚約破棄なんてもうどうでもいいくらいに。
むしろ、婚約者がアウス殿下でなくてよかったかも知れない。
「アウス殿下……! まわりをご覧になってください。パーティー会場の皆は、殿下の発言に耳を傾けている者もいるわけです。おおやけに情報が知れ渡った以上、後戻りなんてできませんよ!」
「そんな……おかしい! そんなのおかしい! いくら出せばいい! いくらなら帳消しにしてくれる! 皆、いくらなら! それか何か、地位の向上がお望みか?」
「殿下! 見苦しいですよ! 誰もそこまで落ちぶれてなどいません。諦めて観念いたしてください」
衛兵達が一斉に、アウス殿下の元に集まり身柄を確保する。
いくら、王族とはいえ関係ないのです。
ここは法治国家です。
王よりも掟が遵守される世界です。
あたふたしている妹にも衛兵が近づくと、軽く肩を掴み、奥の部屋へと連れて行かれる。
「離せ!僕が誰だかわからないのか!」
アウス殿下は、飽きることもなくひたすらに抵抗を続けている時だった。
「辞めなさい。アウス。みっともない。お前は国の恥だ!」
威勢のいい声が会場に響いた。
そこに現れたのは、アウス殿下の実の父親--レウス皇帝陛下であった。
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