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「アリス、君に伝えなければいけないことがある」
「そんな真剣な顔して、どうされたのです?」
とは言っているものの、私の表情はニヤついてないだろうか。
だってこれって、もしかすると!
「僕は君との婚約を破棄する! すまない許してくれ!」
ルゼ王子がそう告げた途端、反射的に私は舞い上がってしまう。
「キタアアアアアアア‼︎ 待ってましたああああ!!」
「アリス……? そうか……すまない。ショックのせいで混乱してしまったんだね」
いやいや、全然違いますけど。
少し同情するように、俯いてみせるルゼ王子とは裏腹に私は歓喜が止まらない。
転生者である私は、このテンプレート展開を知っているからである。
婚約破棄された後は、私にとって良いことしかないのだ!
それに、このジャンルの小説を何作も読み耽ってきたわけだけど、実際に自分が婚約破棄されるとなったらオタク的にはたまらないのよ!
婚約破棄しか勝たんのよ‼︎
「ルゼ王子……今はそっとしてあげた方が彼女もきっと落ち着きますので」
私に同情してる風に見せつつ、内心勝ち誇ってそうなライバルヒロインのユズハさん。
そうだよね。私が婚約破棄されたおかげでユズハさんは今、めちゃくちゃハッピーなはずだもんね。
ついに、ルゼ王子を手に入れられる!ってそう思ってるに違いない。
没落貴族の令嬢だし、王族に取り入りたいよね!
「そうだな。ユズハ。本当、君は優しい。僕が心を奪われたのも仕方がないことだろう」
ほらきた! 都合よくルゼ王子もアホだから、ユズハさんを優しいとか思っちゃってるよ!
いいね。いい流れだ。
でも、あくまでここは場を乱さないためにも一旦心を落ち着かせて演技をすることにしよう。
「ところで……何故、私はフラれたのでしょうか……?」
しっかりと悲壮感を漂わせつつ訊いてみる。
「ああ……それは、アリスがユズハに嫌がらせをしてることを聞いてしまったんだ。勿論、君を信じたい気持ちもあるけどユズハが言うのなら本当のことだろうし、何より僕はユズハに心を奪われてしまった。仮に、ユズハが嫌がらせを受けてなくとも僕は君との婚約は破棄するつもりだった」
何それ、すっごい理不尽なんですけど。
ユズハさんに嫌がらせなんてしたことありませんし、むしろ私がされていた側なんですけれどもね。
ユズハさんがいうなら本当って、恋は盲目というかバカ王子は盲目というか。
そもそも、私が嫌がらせしてなくとも婚約破棄されるって、理不尽すぎてそんなのもう……たまらん! 興奮してきたわ!
これは本当にいい流れだからね!
「辞めてください。ルゼ王子。アリスさんがあまりに可哀想で見てられません。私は彼女のことはとっくに許しているのですから、これ以上責めないでください!」
いやいや、めっちゃいい人ぶるやん。
募金や寄付活動されてる方に偽善者とかいう人がたまにいますけど、それは偽善ではありません。
ユズハさんの今やってることが本当の偽善です。
「本当……君はあまりに優しすぎる。そして美しい」
はい。騙される。すぐ騙される。
プラスで『それは美しい』は絶対にいらん。
今その台詞は絶対にいらんのよ。お門違いですわ。
「ごめんなさい。アリスさん……何もしてあげられなくて。私は貴方の幸せを祈っています」
急に何、は?
そろそろ、その態度ムカつきます。嘘つき女。
けれど、そろそろあの展開が来ます。だから許します。
「--そうか、話は聞かせてもらったよ。それなら、アリスは僕が幸せにする!」
キターーーーーーーーーァァァァァ!!!!
やーんもう、来ちゃったじゃないのよ!!
これをずっと待ち望んでいたんですよ!
来たよ!間違いなくシンデレラストーリーモードに突入しちゃってるよ!
これはもう確変よ!
しかも、第一王子のタルト様って、おいおいマジかよいいんですか?!
全女子の憧れのタルト様ですよ??
いいんですか?!
「少しいいかいアリス。僕はずっと君を見てきた。そして憧れていた。だから君を傷つける奴は兄弟であろうと許しはしない」
「タルト様……!」
キュンキュンしちゃう。もう恋しちゃいました。
やーい。私の単純、脳味噌。
「そ、それでいいのですか!お兄様! 話聞いてたんでしょう。アリスは……自分のために嫌がらせをするような人ですよ」
第二王子であるルゼ王子が、声を荒げる。
「お前は何にもわかってないなルゼ。彼女がそんなことをするわけがなかろう。根拠もなしに何を言う!」
「根拠ならあります。ユズハがそう言ってるのですから」
「はぁ……嫌がらせを受けてたとユズハが証言していたから、ね。残念ながらそれは嘘だルゼ」
「--!? 何を言っているのです!」
「嫌がらせをしていたのは、アリスではなくユズハだ。お前とは違い、僕はちゃんと裏も取っている。幾人もの証言者がいる。そして僕もこの前、嫌がらせを受けているのを実際に見た」
「そ、そんな」
私のためにタルト王子が必至になっている。
あー、幸せ。生まれてきてよかった。
転生してるけど。よかった。
「そうだろ? ユズハ」
ユズハさんは俯いたまま、言葉を返せない。
「そういうことだ。ルゼ、お前は勝手な都合で大事な婚約をないものにしたのだ。婚約者というものがいながら他の女性の色目に負けるなど断じてありえん。これは、父上にも相談しておく」
「そ、そんな……ッ!」
「お前はもう王族ではいられないだろうな。責任はしっかり取れ」
「あああああああああああああ!!!!」
ルゼ王子は壊れてしまった。
これがいわゆる断罪という奴か。
「ユズハ、君もただでは済まないぞ」
「クッ……」
「誰でもいい、ルゼとユズハを王のところへ連れて行け」
「「「「ハハッ」」」」
「「いやだあああああああああ!」」
ルゼ王子とユズハさんは泣き喚きながら連れて行かれた。
ご愁傷様でございます。
悪いことをするといずれは自分の身に返ってくるというわけです。
「本当にこんなことになって済まないアリス」
「どうしてタルト様が謝罪を……いいんです」
「そうか。代わりと言っては変かもしれないが、アリス。ルゼではなく僕と婚約してくれないか?」
「はい喜んで!!!!」
「そ、そうか。さっきからニヤニヤしているし、返事も早いから少々驚いてしまった……。ありがとう!」
えんだああああああああああああああああああああああああああいやああああああああ!!
これが私のハッピーエンド。
『ピピピッピピピッ』けたましく鳴り響く目覚まし時計の音で私は飛び起きた。
「ん?」
って全部夢かよ!夢オチかよ!!
そんなあああああああああああああああ嫌ああああああああ!!
「そんな真剣な顔して、どうされたのです?」
とは言っているものの、私の表情はニヤついてないだろうか。
だってこれって、もしかすると!
「僕は君との婚約を破棄する! すまない許してくれ!」
ルゼ王子がそう告げた途端、反射的に私は舞い上がってしまう。
「キタアアアアアアア‼︎ 待ってましたああああ!!」
「アリス……? そうか……すまない。ショックのせいで混乱してしまったんだね」
いやいや、全然違いますけど。
少し同情するように、俯いてみせるルゼ王子とは裏腹に私は歓喜が止まらない。
転生者である私は、このテンプレート展開を知っているからである。
婚約破棄された後は、私にとって良いことしかないのだ!
それに、このジャンルの小説を何作も読み耽ってきたわけだけど、実際に自分が婚約破棄されるとなったらオタク的にはたまらないのよ!
婚約破棄しか勝たんのよ‼︎
「ルゼ王子……今はそっとしてあげた方が彼女もきっと落ち着きますので」
私に同情してる風に見せつつ、内心勝ち誇ってそうなライバルヒロインのユズハさん。
そうだよね。私が婚約破棄されたおかげでユズハさんは今、めちゃくちゃハッピーなはずだもんね。
ついに、ルゼ王子を手に入れられる!ってそう思ってるに違いない。
没落貴族の令嬢だし、王族に取り入りたいよね!
「そうだな。ユズハ。本当、君は優しい。僕が心を奪われたのも仕方がないことだろう」
ほらきた! 都合よくルゼ王子もアホだから、ユズハさんを優しいとか思っちゃってるよ!
いいね。いい流れだ。
でも、あくまでここは場を乱さないためにも一旦心を落ち着かせて演技をすることにしよう。
「ところで……何故、私はフラれたのでしょうか……?」
しっかりと悲壮感を漂わせつつ訊いてみる。
「ああ……それは、アリスがユズハに嫌がらせをしてることを聞いてしまったんだ。勿論、君を信じたい気持ちもあるけどユズハが言うのなら本当のことだろうし、何より僕はユズハに心を奪われてしまった。仮に、ユズハが嫌がらせを受けてなくとも僕は君との婚約は破棄するつもりだった」
何それ、すっごい理不尽なんですけど。
ユズハさんに嫌がらせなんてしたことありませんし、むしろ私がされていた側なんですけれどもね。
ユズハさんがいうなら本当って、恋は盲目というかバカ王子は盲目というか。
そもそも、私が嫌がらせしてなくとも婚約破棄されるって、理不尽すぎてそんなのもう……たまらん! 興奮してきたわ!
これは本当にいい流れだからね!
「辞めてください。ルゼ王子。アリスさんがあまりに可哀想で見てられません。私は彼女のことはとっくに許しているのですから、これ以上責めないでください!」
いやいや、めっちゃいい人ぶるやん。
募金や寄付活動されてる方に偽善者とかいう人がたまにいますけど、それは偽善ではありません。
ユズハさんの今やってることが本当の偽善です。
「本当……君はあまりに優しすぎる。そして美しい」
はい。騙される。すぐ騙される。
プラスで『それは美しい』は絶対にいらん。
今その台詞は絶対にいらんのよ。お門違いですわ。
「ごめんなさい。アリスさん……何もしてあげられなくて。私は貴方の幸せを祈っています」
急に何、は?
そろそろ、その態度ムカつきます。嘘つき女。
けれど、そろそろあの展開が来ます。だから許します。
「--そうか、話は聞かせてもらったよ。それなら、アリスは僕が幸せにする!」
キターーーーーーーーーァァァァァ!!!!
やーんもう、来ちゃったじゃないのよ!!
これをずっと待ち望んでいたんですよ!
来たよ!間違いなくシンデレラストーリーモードに突入しちゃってるよ!
これはもう確変よ!
しかも、第一王子のタルト様って、おいおいマジかよいいんですか?!
全女子の憧れのタルト様ですよ??
いいんですか?!
「少しいいかいアリス。僕はずっと君を見てきた。そして憧れていた。だから君を傷つける奴は兄弟であろうと許しはしない」
「タルト様……!」
キュンキュンしちゃう。もう恋しちゃいました。
やーい。私の単純、脳味噌。
「そ、それでいいのですか!お兄様! 話聞いてたんでしょう。アリスは……自分のために嫌がらせをするような人ですよ」
第二王子であるルゼ王子が、声を荒げる。
「お前は何にもわかってないなルゼ。彼女がそんなことをするわけがなかろう。根拠もなしに何を言う!」
「根拠ならあります。ユズハがそう言ってるのですから」
「はぁ……嫌がらせを受けてたとユズハが証言していたから、ね。残念ながらそれは嘘だルゼ」
「--!? 何を言っているのです!」
「嫌がらせをしていたのは、アリスではなくユズハだ。お前とは違い、僕はちゃんと裏も取っている。幾人もの証言者がいる。そして僕もこの前、嫌がらせを受けているのを実際に見た」
「そ、そんな」
私のためにタルト王子が必至になっている。
あー、幸せ。生まれてきてよかった。
転生してるけど。よかった。
「そうだろ? ユズハ」
ユズハさんは俯いたまま、言葉を返せない。
「そういうことだ。ルゼ、お前は勝手な都合で大事な婚約をないものにしたのだ。婚約者というものがいながら他の女性の色目に負けるなど断じてありえん。これは、父上にも相談しておく」
「そ、そんな……ッ!」
「お前はもう王族ではいられないだろうな。責任はしっかり取れ」
「あああああああああああああ!!!!」
ルゼ王子は壊れてしまった。
これがいわゆる断罪という奴か。
「ユズハ、君もただでは済まないぞ」
「クッ……」
「誰でもいい、ルゼとユズハを王のところへ連れて行け」
「「「「ハハッ」」」」
「「いやだあああああああああ!」」
ルゼ王子とユズハさんは泣き喚きながら連れて行かれた。
ご愁傷様でございます。
悪いことをするといずれは自分の身に返ってくるというわけです。
「本当にこんなことになって済まないアリス」
「どうしてタルト様が謝罪を……いいんです」
「そうか。代わりと言っては変かもしれないが、アリス。ルゼではなく僕と婚約してくれないか?」
「はい喜んで!!!!」
「そ、そうか。さっきからニヤニヤしているし、返事も早いから少々驚いてしまった……。ありがとう!」
えんだああああああああああああああああああああああああああいやああああああああ!!
これが私のハッピーエンド。
『ピピピッピピピッ』けたましく鳴り響く目覚まし時計の音で私は飛び起きた。
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