【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る

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Second Chapter

殺すべきか、生かすべきか

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 「フハーハハハハハハハッ!」
これは面白くなってきたぞ、と大いにバズムが笑いながら城壁を下った後。
「者どもよ!ワシが何者か忘れたか!百戦百勝の『逆雷のバズム』であるぞ!
フハーハハハハハハハ!我らの勝利は定まったぞ!」
帝国城の方へ向かってブレイ号を駆るバズムの一喝に、数に圧倒されて震えていた兵士達が、驚きと感動の表情で受け止めた。
「笑っておられる……」
「諦めの笑いじゃない」
「ならば、勝てるぞ!」
「そうだ!」
「そうだった!」
「こっちには『逆雷』がいるんだ!」
「100万の味方と同じだ!!!!」
瞬く間に兵士達の士気が上がっていく。


 バズムが太極殿に駆け込んだ時、既に主だった官僚や貴族は揃っていて、帝都近郊一帯の詳細な地図を広げて額を付き合わせていた。
「ロクブから聞いたぞ」皇帝は落ち着いた顔をして、将軍に問うた。「一月だな?」
「今夜――ワシの勘では月が昇る頃からが正念場でございまする。それさえ乗り越えれば勝機はこちらに。各地への救援要請の結果は如何に?」
フォートンが答える、「各地の狼煙では明日中に駆けつけるとの事だ。しかし……泥沼になるだろう」
そのまま一同は今までに出そろった情報を急ぎ共有していた。
そこに疲れた顔のトキトハが『ドルマー』を抱きかかえてやって来た。
腕から下りると、『ドルマー』は彼女に言った。
『運んでくれて感謝する。……セージュを頼む』
「しかと、承りました」
一礼してトキトハが下がった所で、『ドルマー』は皇帝の精霊獣である『ロード』、ミマナ皇后の精霊獣『オラクル』に向かって話し始めた。
『お初にお目に掛る、私が「ドルマー」だ』
応えるかのように二人の精霊獣が姿を現れた。
『我が「ロード」、ご存じだろうがこちらは「オラクル」だ。早速だが、何用があってここに?』
『まずは貴殿らにも感謝を。私達を弑する選択肢をよくぞ最後まで選ばないでくれた。
おかげで私の半身は連中の呪縛からようやく解放され、私も「スキル:ララバイ」の本領を遺憾なく発揮する事が出来る』
『姿を目にした人々を……無作為に眠らせる力では無いの?』
『それはあくまでも「トドラー」の段階に過ぎぬ。望みが叶った今の私には「私より魔力を持たぬ者を完全に眠らせる」事が可能なのだ』
『『!』』
『そう、連中の「本体」こそ、今の私の魔力をもしのぐ圧倒的な魔力を有している。しかし「分身」を使って増やした兵士まではそうではない。
先ほど聞いた、貴殿には「結界」を展開するに近しい「スキル」をお持ちだと。貴殿が帝都を覆う「結界」を広げたならば、私が外の軍勢をまとめて眠らせよう。もっとも数が数だ、ほんの数刻しか持たぬが――』
『その隙に「本体」を叩ける!』
『それならば被害も最小限で済むわ!』

 「全く……」フォートンが誰にも気付かれぬ程度に、口の端に僅かな笑みを浮かべている。「『生かすべき』と言う陛下のご英断は正しく、『殺すべき』と言う私の意見は間違っていた。何と、何と嬉しい事か……」


 「さて、やろうじゃないか」
 「何だ、折角、六十万を相手にガン=カタを極められると思ったのに」
 「相棒って案外さ、『自称リアリスト、実態ロマンチスト』じゃないか?」
 「黙れ、とっとと行くぞ!」
 「へいへい。とっとと行きますか!」
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