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Third Chapter
独断専行の不忠者
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いつもなら朝早くにやってくるはずのクノハルがいつまで経っても来ないので、オレ達は嫌な予感がしてユルルアちゃんに車椅子を押して貰って『黒葉宮』を出た。どうせ、性懲りも無い女官達からの嫌がらせに遭ったのだろう。早く助けなければ。
そんな事を考えつつ、慌ててレーシャナ皇后様の所に行くと――そこは修羅場だった。
「『峻霜』、『閃翔』、『闘剛』、そして『幻闇』よ」
帝国十三神将が『峻霜のヴェド』、『閃翔のギルガンド』、『闘剛のモルソーン』、『幻闇のキア』と、4人も揃って、レーシャナ皇后からの命を受けていたのだから。
「直ちに違法賭博を摘発し、僭主ブォニートを生きたまま捕縛せよ!敵には精霊獣がいる。くれぐれも侮らず行け!」
「「「「御意!」」」」
どうやら今から揃って闇カジノの摘発に向かうらしい。
それにしても帝国十三神将がここまで揃うなんて、凄い光景を見てしまった、とオレ達が出て行く4名を呆然と見ていたら、レーシャナ皇后がオレ達に気付いた。
「……この火急の時に何の用だ、第十二皇子殿下」
「麗しく賢きレーシャナ皇后様にたってのお願いが……。
実は、クノハルが出勤しないのです。恐らくは……」
帝国城の何処かに監禁されていると思われます。
「ハア……」とレーシャナ皇后は頭を押さえて、「分かった、そちらも直ちに探させよう」
「ああああーっ!!!」そこに駆け込んできたのは『睡虎のハルハ』だった。「レーシャナ皇后様、そのクノハルについての御報告がー!丁度!あるんですー!」
「何事だ!?」
『睡虎』は、さっと彼女の御前に跪いて、
「例の襲撃者を尋問していたのですが、何と彼らはクノハルに嫉妬した女官達の内応により、後宮への侵入に当たっての手引きをされたらしくてですねー……。急ぎその女官達にも尋問をした結果、クノハルは今朝方に拉致されてしまった様子なんですー!」
「何だと!?」
思わずレーシャナ皇后が立ち上がって両の拳を握りしめた。
「しかも女官達は、こちらの機密情報まで向こうに漏洩させていた様でー……本当にホーロロ国境地帯が危ういそうですー……」
最悪じゃないか!
「ああ……やはりそんな事になっていましたか」
ここにやって来たのは『賢梟のフォートン』だった。
どうしようもない大修羅場なのに、この切れ者だけが妙に余裕たっぷりのお顔をしているのがどうにも気に障る。
「道理で、妙だと思ったのです。
王太子ガレトンがやけに上手に公国なる連中を切り崩していると。たかが違法賭博との諍いの所為で、地獄横町が焼けたのもよくよく考えれば不自然。
それに『赤斧帝』の寵臣共の領地がホーロロ国境地帯の近くにありすぎる事も、以前から気になっていました」
「『賢梟』、何を言いたい?」とレーシャナ皇后は険しい顔のまま訊ねると、
「レーシャナ皇后様、ホーロロ国境地帯についてはどうかご安心下さいませ」フォートンは恭しく一礼してから、慇懃無礼、何処かしら尊大ささえ漂う、余裕たっぷりの顔で話し始めた。「不忠なる私の『独断』にて、先に工兵部隊を送ってございまする。更に現地の民にも食料と引き換えに臨時徴兵と協力を要請してございます。大橋が落とされようと道が全て塞がれようと、今頃ホーロロ国境地帯の大砦には総勢4万の増援が到着している頃でしょう」
……。
レーシャナ皇后は半分呆気にとられていて、残りの半分は怒っていた。
明らかに一官僚の権限を越え、皇帝の権限をも侵した独断専行だったからだ。
「『賢梟』、貴様……!」
「将軍閣下は恐らく遊撃戦で時間を稼ぐおつもりでしょう。そのご判断を私が最適解に修正致しました。故に、ホーロロ国境地帯の事はご心配無用にてございまする。いえ、ホーロロ国境地帯の部族衆も帝国軍の優勢を見れば途中から味方するやも知れません。
ですので、ブォニート達を逃がさぬように――今はそれだけにご注意下さいませ」
「……。後で貴公には陛下より相応の処分が下されるであろう。謹慎して待っているように」
レーシャナ皇后は扇を開いて、顔を隠した。
扇が小刻みに揺れている所から察するに、少しだけ笑っているらしいが……。
「はっ」
と『賢梟』は大人しく下がっていった。
「いやー面白くなってきましたですねー!」『睡虎』が糸目を更に細めて、ひょうひょうとした声で言った。「それじゃ私はアホ女官共に更なる尋問を行ってきまーす!もし行けたら闇カジノの方にも加勢に行きますねー!」
……突っ込みはしない。
『行けたら行く』は、『絶対に行かない』の同意語だ、とだけ言っておく。
「クノハルは何処なのか?」
オレ達が訊ねると、ほんの少しだけ『睡虎』の目が開いた。
「『コロシアム』……でしたっけー?私にはよく分からないのですが、どうやら最大の見世物にするつもりらしいですよー……」
「……そう、か」
そんな事を考えつつ、慌ててレーシャナ皇后様の所に行くと――そこは修羅場だった。
「『峻霜』、『閃翔』、『闘剛』、そして『幻闇』よ」
帝国十三神将が『峻霜のヴェド』、『閃翔のギルガンド』、『闘剛のモルソーン』、『幻闇のキア』と、4人も揃って、レーシャナ皇后からの命を受けていたのだから。
「直ちに違法賭博を摘発し、僭主ブォニートを生きたまま捕縛せよ!敵には精霊獣がいる。くれぐれも侮らず行け!」
「「「「御意!」」」」
どうやら今から揃って闇カジノの摘発に向かうらしい。
それにしても帝国十三神将がここまで揃うなんて、凄い光景を見てしまった、とオレ達が出て行く4名を呆然と見ていたら、レーシャナ皇后がオレ達に気付いた。
「……この火急の時に何の用だ、第十二皇子殿下」
「麗しく賢きレーシャナ皇后様にたってのお願いが……。
実は、クノハルが出勤しないのです。恐らくは……」
帝国城の何処かに監禁されていると思われます。
「ハア……」とレーシャナ皇后は頭を押さえて、「分かった、そちらも直ちに探させよう」
「ああああーっ!!!」そこに駆け込んできたのは『睡虎のハルハ』だった。「レーシャナ皇后様、そのクノハルについての御報告がー!丁度!あるんですー!」
「何事だ!?」
『睡虎』は、さっと彼女の御前に跪いて、
「例の襲撃者を尋問していたのですが、何と彼らはクノハルに嫉妬した女官達の内応により、後宮への侵入に当たっての手引きをされたらしくてですねー……。急ぎその女官達にも尋問をした結果、クノハルは今朝方に拉致されてしまった様子なんですー!」
「何だと!?」
思わずレーシャナ皇后が立ち上がって両の拳を握りしめた。
「しかも女官達は、こちらの機密情報まで向こうに漏洩させていた様でー……本当にホーロロ国境地帯が危ういそうですー……」
最悪じゃないか!
「ああ……やはりそんな事になっていましたか」
ここにやって来たのは『賢梟のフォートン』だった。
どうしようもない大修羅場なのに、この切れ者だけが妙に余裕たっぷりのお顔をしているのがどうにも気に障る。
「道理で、妙だと思ったのです。
王太子ガレトンがやけに上手に公国なる連中を切り崩していると。たかが違法賭博との諍いの所為で、地獄横町が焼けたのもよくよく考えれば不自然。
それに『赤斧帝』の寵臣共の領地がホーロロ国境地帯の近くにありすぎる事も、以前から気になっていました」
「『賢梟』、何を言いたい?」とレーシャナ皇后は険しい顔のまま訊ねると、
「レーシャナ皇后様、ホーロロ国境地帯についてはどうかご安心下さいませ」フォートンは恭しく一礼してから、慇懃無礼、何処かしら尊大ささえ漂う、余裕たっぷりの顔で話し始めた。「不忠なる私の『独断』にて、先に工兵部隊を送ってございまする。更に現地の民にも食料と引き換えに臨時徴兵と協力を要請してございます。大橋が落とされようと道が全て塞がれようと、今頃ホーロロ国境地帯の大砦には総勢4万の増援が到着している頃でしょう」
……。
レーシャナ皇后は半分呆気にとられていて、残りの半分は怒っていた。
明らかに一官僚の権限を越え、皇帝の権限をも侵した独断専行だったからだ。
「『賢梟』、貴様……!」
「将軍閣下は恐らく遊撃戦で時間を稼ぐおつもりでしょう。そのご判断を私が最適解に修正致しました。故に、ホーロロ国境地帯の事はご心配無用にてございまする。いえ、ホーロロ国境地帯の部族衆も帝国軍の優勢を見れば途中から味方するやも知れません。
ですので、ブォニート達を逃がさぬように――今はそれだけにご注意下さいませ」
「……。後で貴公には陛下より相応の処分が下されるであろう。謹慎して待っているように」
レーシャナ皇后は扇を開いて、顔を隠した。
扇が小刻みに揺れている所から察するに、少しだけ笑っているらしいが……。
「はっ」
と『賢梟』は大人しく下がっていった。
「いやー面白くなってきましたですねー!」『睡虎』が糸目を更に細めて、ひょうひょうとした声で言った。「それじゃ私はアホ女官共に更なる尋問を行ってきまーす!もし行けたら闇カジノの方にも加勢に行きますねー!」
……突っ込みはしない。
『行けたら行く』は、『絶対に行かない』の同意語だ、とだけ言っておく。
「クノハルは何処なのか?」
オレ達が訊ねると、ほんの少しだけ『睡虎』の目が開いた。
「『コロシアム』……でしたっけー?私にはよく分からないのですが、どうやら最大の見世物にするつもりらしいですよー……」
「……そう、か」
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