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第17話:俺たち、一緒に暮らします!
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「30万……G?」
ギルドの応接室に呼ばれたアーロンとルーイは、目を見張った。
ルーイを襲った虎族のならず者たちは、この地方一体で悪事を尽くしており、広域的に多額の賞金がかけられていたのだ。
「ええ。一人あたり5万G。6人分で30万Gです」
ギルドの職員が、にこやかに言った。
「現場検証の結果、魔法で倒されたと思われる者が2名、鋭利な刃物で倒されたと思われる者が4名いましたので、ルーイさんに10万G、アーロン君に20万G、ということでよろしいでしょうか」
「「は、はあ……」」
アーロンとルーイは、あまりの金額にただうなずくしかできなかった。
「現在、雑貨商とルーイさんの家への強盗容疑、ローナさんを含む冒険者からの恐喝容疑など、衛兵隊のほうで余罪を捜査しています。盗まれたお金が見つかったら、順次被害者の方々への補償にあてられる予定です」
話を一通り聞いたルーイは、職員に言った。
「取られたお金の分は、俺の貯金よりも、ローナがこれまでダグに取られていたぶんを優先してあげてください。早く生活を立て直してほしいから……」
職員はにっこり微笑んで了承した。
◇ ◇ ◇
広場の噴水のへりに腰かけて、アーロンとルーイは、しばらくボーっとしてしまった。
手の中には、ずっしりと金貨の入った革袋がある。
ルーイは、革袋を見つめてしばらく考え込んでいたが、やがて、
「アーロン……」
とボソッと呼びかけてきた。
「え、なに……?」
「あ、あのさ……。俺がもらった10万Gだけで、あの丘の家買えちゃうんだけどさ、俺、貯金全部盗まれたまんまだし、さしあたりの生活費として、いくらかは取っておかなくちゃならないからさ……」
うつむきながら、ルーイは顔を赤くしている。
「だ、だから悪いんだけど、半額……5万Gくらい出してくれないか。お金出してもらうんだから、当然、俺とアーロン二人の家ってことに、なるけど……」
アーロンは、目を見張ってルーイを見つめた。
「ルーイ……。それって……」
ルーイは耳まで赤くなって、もじもじしながら言っている。
「どうせお前、今でもしょっちゅう俺の部屋に来てるし、それだったら、い、い、い、一緒に暮らして……」
アーロンはルーイの首の後ろに手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「嬉しい! ルーイ、大好き! これから、ホントにずっとずっと一緒だね!!」
「ちゃんとそうじするんだぞ……」
恥ずかしそうにつぶやくルーイに、アーロンは人目も構わず、キスの雨を降らせた。
「うん! 嬉しい! 嬉しい!」
◇ ◇ ◇
ルーイとアーロンは、5万Gずつお金を出し合って、丘の斜面の家を買った。
残りのお金から、1万2千5百Gずつ出し合って、ダグに、そして虎族のならず者集団に取り上げられたままローナの手に戻ってきていない分として、2万5千Gを分けてあげた。
ルーイは、「これは俺が自分のわがままでやりたいことだから」と言って全額自分が出そうとしたが、アーロンは譲らなかった。
ベッドやチェストは、家についていたので、それぞれ寝具や食器、これまでのクエストで集めた武器防具アイテムなどを運び込むと、あっという間に引っ越し作業が終わった。これまで一緒にクエストに行った仲間も、手伝ってくれた。
男同士で一緒に暮らすなど、聞いたことがない話だったので、「友達同士だから一緒に暮らす」という体裁にした方がいいのではないか、とルーイは言ったが、アーロンは戦士ギルドにあいさつに行って、「俺たち愛し合ってるので一緒に暮らすことにしました!」とそのまんま言ってしまった。
副長のライリーは、あっさりと「そうか。おめでとう! 街を出るのか? あ、出ない。じゃあこれからもよろしくな!」と言っただけだった。
ルーイが、「あの、優秀な戦士は子孫を残さなきゃいけない、とかそういうのは、ないんですか……?」
とおそるおそる聞くと、
「ああ、飲み屋でオッサンがよく言ってるヤツか。浮気性のだらしないヤツの言い訳だから、気にしなくていいよ!」
とあっさり返され、ルーイは拍子抜けした。
「それじゃ、母ちゃん元気でな! って言っても、歩いてすぐのところだから、しょっちゅう来るよ! 錬金屋もよく行くし!」
「身体に気を付けて、ルーイにあんまり世話かけるんじゃないよ」
母親にあいさつして、アーロンが新たな一歩を踏み出そうとした時、
「アーロン! 久しぶりだな」
と大地を揺るがすような低い声がした。
振り返ると、大剣を担いだフィンガルが、仁王立ちしていた。ここ数か月、戦で街を離れていたが、久しぶりに帰ってきたようだ。
「父ちゃん!」
「聞いたぞ。ルーイと一緒に暮らすんだってな」
フィンガルは、ニヤリと笑った。
「うん、そうなんだ!」
それを聞いたフィンガルは、大剣を地面に突き立て、両手を柄の上に重ねると、
「ならば、この俺を倒してからだ!」
と叫んだ。
ギルドの応接室に呼ばれたアーロンとルーイは、目を見張った。
ルーイを襲った虎族のならず者たちは、この地方一体で悪事を尽くしており、広域的に多額の賞金がかけられていたのだ。
「ええ。一人あたり5万G。6人分で30万Gです」
ギルドの職員が、にこやかに言った。
「現場検証の結果、魔法で倒されたと思われる者が2名、鋭利な刃物で倒されたと思われる者が4名いましたので、ルーイさんに10万G、アーロン君に20万G、ということでよろしいでしょうか」
「「は、はあ……」」
アーロンとルーイは、あまりの金額にただうなずくしかできなかった。
「現在、雑貨商とルーイさんの家への強盗容疑、ローナさんを含む冒険者からの恐喝容疑など、衛兵隊のほうで余罪を捜査しています。盗まれたお金が見つかったら、順次被害者の方々への補償にあてられる予定です」
話を一通り聞いたルーイは、職員に言った。
「取られたお金の分は、俺の貯金よりも、ローナがこれまでダグに取られていたぶんを優先してあげてください。早く生活を立て直してほしいから……」
職員はにっこり微笑んで了承した。
◇ ◇ ◇
広場の噴水のへりに腰かけて、アーロンとルーイは、しばらくボーっとしてしまった。
手の中には、ずっしりと金貨の入った革袋がある。
ルーイは、革袋を見つめてしばらく考え込んでいたが、やがて、
「アーロン……」
とボソッと呼びかけてきた。
「え、なに……?」
「あ、あのさ……。俺がもらった10万Gだけで、あの丘の家買えちゃうんだけどさ、俺、貯金全部盗まれたまんまだし、さしあたりの生活費として、いくらかは取っておかなくちゃならないからさ……」
うつむきながら、ルーイは顔を赤くしている。
「だ、だから悪いんだけど、半額……5万Gくらい出してくれないか。お金出してもらうんだから、当然、俺とアーロン二人の家ってことに、なるけど……」
アーロンは、目を見張ってルーイを見つめた。
「ルーイ……。それって……」
ルーイは耳まで赤くなって、もじもじしながら言っている。
「どうせお前、今でもしょっちゅう俺の部屋に来てるし、それだったら、い、い、い、一緒に暮らして……」
アーロンはルーイの首の後ろに手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「嬉しい! ルーイ、大好き! これから、ホントにずっとずっと一緒だね!!」
「ちゃんとそうじするんだぞ……」
恥ずかしそうにつぶやくルーイに、アーロンは人目も構わず、キスの雨を降らせた。
「うん! 嬉しい! 嬉しい!」
◇ ◇ ◇
ルーイとアーロンは、5万Gずつお金を出し合って、丘の斜面の家を買った。
残りのお金から、1万2千5百Gずつ出し合って、ダグに、そして虎族のならず者集団に取り上げられたままローナの手に戻ってきていない分として、2万5千Gを分けてあげた。
ルーイは、「これは俺が自分のわがままでやりたいことだから」と言って全額自分が出そうとしたが、アーロンは譲らなかった。
ベッドやチェストは、家についていたので、それぞれ寝具や食器、これまでのクエストで集めた武器防具アイテムなどを運び込むと、あっという間に引っ越し作業が終わった。これまで一緒にクエストに行った仲間も、手伝ってくれた。
男同士で一緒に暮らすなど、聞いたことがない話だったので、「友達同士だから一緒に暮らす」という体裁にした方がいいのではないか、とルーイは言ったが、アーロンは戦士ギルドにあいさつに行って、「俺たち愛し合ってるので一緒に暮らすことにしました!」とそのまんま言ってしまった。
副長のライリーは、あっさりと「そうか。おめでとう! 街を出るのか? あ、出ない。じゃあこれからもよろしくな!」と言っただけだった。
ルーイが、「あの、優秀な戦士は子孫を残さなきゃいけない、とかそういうのは、ないんですか……?」
とおそるおそる聞くと、
「ああ、飲み屋でオッサンがよく言ってるヤツか。浮気性のだらしないヤツの言い訳だから、気にしなくていいよ!」
とあっさり返され、ルーイは拍子抜けした。
「それじゃ、母ちゃん元気でな! って言っても、歩いてすぐのところだから、しょっちゅう来るよ! 錬金屋もよく行くし!」
「身体に気を付けて、ルーイにあんまり世話かけるんじゃないよ」
母親にあいさつして、アーロンが新たな一歩を踏み出そうとした時、
「アーロン! 久しぶりだな」
と大地を揺るがすような低い声がした。
振り返ると、大剣を担いだフィンガルが、仁王立ちしていた。ここ数か月、戦で街を離れていたが、久しぶりに帰ってきたようだ。
「父ちゃん!」
「聞いたぞ。ルーイと一緒に暮らすんだってな」
フィンガルは、ニヤリと笑った。
「うん、そうなんだ!」
それを聞いたフィンガルは、大剣を地面に突き立て、両手を柄の上に重ねると、
「ならば、この俺を倒してからだ!」
と叫んだ。
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