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第18話:男たちの決着
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「ならば、この俺を倒してからだ!」
フィンガルは、アーロンに「宣戦布告」すると、ルーイの背丈ほどもある大剣をアーロンの母親に預け、丸太のような腕をぐるぐると回して、拳をボキボキと鳴らした。
「ええっ?!」
あまりのことに、ルーイは啞然としている。
「……ちょっと、待てよ! なんでそんなことしないといけないんだよ?」
ルーイは慌ててフィンガルを止めようとしたが、フィンガルは無視して、アーロンに向かい、
「お前がルーイを守れるか、この俺に示してみろ!」
と指を突き立てた。
「いや、俺もそこそこ強いんで、特に守られる必要とかはなくて……」
ルーイはあたふたととりなそうとしたが、アーロンは、バックパックを脱ぎ捨てて、腕まくりをした。
「よっしゃ! じゃあ、やってやるぜ! 後悔すんなよ父ちゃん!」
──ルーイの中にいる、父ちゃんの影を消し去ってやる!
ルーイが、命を助けてくれたフィンガルに強い想いを抱いていたことは、アーロンにはわかっていた。
それが恋愛感情だったのか、憧れだったのか、それとも「父親」を求めていたのか、アーロンにはわからない。
けれども、ルーイの心を完全に手に入れたとアーロンが思えるためには、フィンガルは、超えなければならない壁なのだ。
◇ ◇ ◇
「うぉりゃあ~~~!!」
「うおおおっ!!」
ドカッ! バキッ!
さすがに武器を持って戦うとどちらかが死んでしまうので、二人は素手で殴り合った。
フィンガルは、年齢を重ねたとはいえギルドきっての勇士。アーロンよりもさらに一回り大きな身体からは、並の人間がまともにくらったら一発で死んでしまうほどの拳が繰り出される。
対してアーロンは、素早い動きで攻撃をかわしながら、槍のような鋭い一撃を繰り出していく。
「フィンガルと、アーロンが闘ってるぞーー!!」
わらわらと野次馬が集まってきた。
「フィンガル、やっちまえ~!」
「アーロン、負けるな~!」
血気盛んな戦士ギルドの男たちが、めいめい勝手に応援を始めた。
「ふ、二人とも……やめ……」
ルーイは間に割って入ろうとしたが、
「これはもう、ルーイの問題じゃないんだ!」
「男と男の意地をかけた真剣勝負だ!」
どう考えてもルーイの問題なのに、フィンガルとアーロンに怒鳴られ、あまりの剣幕に引き下がった。
ドスッ! バキッ!
お互いのパンチは当たっているが、二人とも無駄に頑丈なので、なかなか決着がつかない。
「うをおおおおおっ!!」
フィンガルが雄たけびと共に放った右のパンチが、アーロンの頬をかすめた。
「……っ!!」
フィンガルの胴が空いた隙を狙って、今度はアーロンが腹に拳を打ち込む。
「ぐっ……」
一瞬フィンガルの身体が後ろに下がったが、巌のような大きな身体は、倒れることなく踏みとどまった。
フィンガルは拳を構えたまま、ニヤリと笑った。
「どうした。そんなもんか。俺みたいなのがルーイに襲い掛かってきたら、お前は守れるのか!?」
「!!」
その言葉に、アーロンの闘志に火が付いた。
アーロンに向かって振り下ろされた拳を躱して、がっしとフィンガルの太い手首をつかむと、ボディに思いっきり拳を打ち込んだ。
「ぐぅっ!」
フィンガルは膝をつきそうになったが、ぐっと堪え、掴まれた腕でぐっとアーロンの身体を引き寄せ、強烈な頭突きを見舞った。
ゴツッ!! と鈍い音がして、アーロンの額から血が流れたが、アーロンは、間髪入れずにフィンガルの腹に膝蹴りを入れた。
「ぐうぅっ」
フィンガルが後ろによろけた隙に、アーロンの左フックがフィンガルの鼻っ柱にヒットし、フィンガルは石畳の上に倒れた。
「はあっ、はあっ……」
わあっと野次馬から歓声が上がり、アーロンは、額から滴り落ちる血を袖でぬぐった。
「アーロン! 大丈夫か!」
ルーイが駆け寄ると、アーロンは地面にへたりこんだ。
「ルーイ、見てた? 俺、父ちゃんより強くなったぞ……はあっ、はあっ……」
ルーイが額の傷に治癒魔法をかけようと手を伸ばすと、倒れていたフィンガルが、よろよろと立ち上がった。
「なんの……っ! 勝ったと思うのは、まだ……、早いぞ……っ!」
「いい加減に、しろーっ!!」
ルーイの雷魔法がフィンガルの頭上に、メリメリッ! ドーン! と落ち、フィンガルはプスプスと煙を上げながら、再び倒れた。
「もう勝負はついただろ! それに、アーロンがたとえ負けてたとしても、お、俺の気持ちは変わらないから!」
ルーイは、真っ赤な顔になって、座り込んだままのアーロンの肩を抱き寄せた。
「ヒューヒュー!」
野次馬たちから、歓声が飛んだ。
「アーロン、お前もお前だ! こんなムチャクチャな決闘、受けて立つなんて、ダメだろ! どっちか死んじゃったらどうするんだよ!」
ルーイは拳を振り上げて、アーロンにも説教を浴びせた。
「……フッ……ルーイも、強くなったな……」
フィンガルは、まだ白い煙を上げながら立ち上がり、くるりと後ろを向くと、
「寂しくなるな。……今日は久しぶりに二人だけで晩メシ食べに行くか」
と言って、アーロンの母親の肩を抱いて、立ち去って行った。
パチパチパチパチ……と、どこからともなく拍手が起き、アーロンとルーイは、謎に観衆に見守られながら新居へと引っ越していった。
フィンガルは、アーロンに「宣戦布告」すると、ルーイの背丈ほどもある大剣をアーロンの母親に預け、丸太のような腕をぐるぐると回して、拳をボキボキと鳴らした。
「ええっ?!」
あまりのことに、ルーイは啞然としている。
「……ちょっと、待てよ! なんでそんなことしないといけないんだよ?」
ルーイは慌ててフィンガルを止めようとしたが、フィンガルは無視して、アーロンに向かい、
「お前がルーイを守れるか、この俺に示してみろ!」
と指を突き立てた。
「いや、俺もそこそこ強いんで、特に守られる必要とかはなくて……」
ルーイはあたふたととりなそうとしたが、アーロンは、バックパックを脱ぎ捨てて、腕まくりをした。
「よっしゃ! じゃあ、やってやるぜ! 後悔すんなよ父ちゃん!」
──ルーイの中にいる、父ちゃんの影を消し去ってやる!
ルーイが、命を助けてくれたフィンガルに強い想いを抱いていたことは、アーロンにはわかっていた。
それが恋愛感情だったのか、憧れだったのか、それとも「父親」を求めていたのか、アーロンにはわからない。
けれども、ルーイの心を完全に手に入れたとアーロンが思えるためには、フィンガルは、超えなければならない壁なのだ。
◇ ◇ ◇
「うぉりゃあ~~~!!」
「うおおおっ!!」
ドカッ! バキッ!
さすがに武器を持って戦うとどちらかが死んでしまうので、二人は素手で殴り合った。
フィンガルは、年齢を重ねたとはいえギルドきっての勇士。アーロンよりもさらに一回り大きな身体からは、並の人間がまともにくらったら一発で死んでしまうほどの拳が繰り出される。
対してアーロンは、素早い動きで攻撃をかわしながら、槍のような鋭い一撃を繰り出していく。
「フィンガルと、アーロンが闘ってるぞーー!!」
わらわらと野次馬が集まってきた。
「フィンガル、やっちまえ~!」
「アーロン、負けるな~!」
血気盛んな戦士ギルドの男たちが、めいめい勝手に応援を始めた。
「ふ、二人とも……やめ……」
ルーイは間に割って入ろうとしたが、
「これはもう、ルーイの問題じゃないんだ!」
「男と男の意地をかけた真剣勝負だ!」
どう考えてもルーイの問題なのに、フィンガルとアーロンに怒鳴られ、あまりの剣幕に引き下がった。
ドスッ! バキッ!
お互いのパンチは当たっているが、二人とも無駄に頑丈なので、なかなか決着がつかない。
「うをおおおおおっ!!」
フィンガルが雄たけびと共に放った右のパンチが、アーロンの頬をかすめた。
「……っ!!」
フィンガルの胴が空いた隙を狙って、今度はアーロンが腹に拳を打ち込む。
「ぐっ……」
一瞬フィンガルの身体が後ろに下がったが、巌のような大きな身体は、倒れることなく踏みとどまった。
フィンガルは拳を構えたまま、ニヤリと笑った。
「どうした。そんなもんか。俺みたいなのがルーイに襲い掛かってきたら、お前は守れるのか!?」
「!!」
その言葉に、アーロンの闘志に火が付いた。
アーロンに向かって振り下ろされた拳を躱して、がっしとフィンガルの太い手首をつかむと、ボディに思いっきり拳を打ち込んだ。
「ぐぅっ!」
フィンガルは膝をつきそうになったが、ぐっと堪え、掴まれた腕でぐっとアーロンの身体を引き寄せ、強烈な頭突きを見舞った。
ゴツッ!! と鈍い音がして、アーロンの額から血が流れたが、アーロンは、間髪入れずにフィンガルの腹に膝蹴りを入れた。
「ぐうぅっ」
フィンガルが後ろによろけた隙に、アーロンの左フックがフィンガルの鼻っ柱にヒットし、フィンガルは石畳の上に倒れた。
「はあっ、はあっ……」
わあっと野次馬から歓声が上がり、アーロンは、額から滴り落ちる血を袖でぬぐった。
「アーロン! 大丈夫か!」
ルーイが駆け寄ると、アーロンは地面にへたりこんだ。
「ルーイ、見てた? 俺、父ちゃんより強くなったぞ……はあっ、はあっ……」
ルーイが額の傷に治癒魔法をかけようと手を伸ばすと、倒れていたフィンガルが、よろよろと立ち上がった。
「なんの……っ! 勝ったと思うのは、まだ……、早いぞ……っ!」
「いい加減に、しろーっ!!」
ルーイの雷魔法がフィンガルの頭上に、メリメリッ! ドーン! と落ち、フィンガルはプスプスと煙を上げながら、再び倒れた。
「もう勝負はついただろ! それに、アーロンがたとえ負けてたとしても、お、俺の気持ちは変わらないから!」
ルーイは、真っ赤な顔になって、座り込んだままのアーロンの肩を抱き寄せた。
「ヒューヒュー!」
野次馬たちから、歓声が飛んだ。
「アーロン、お前もお前だ! こんなムチャクチャな決闘、受けて立つなんて、ダメだろ! どっちか死んじゃったらどうするんだよ!」
ルーイは拳を振り上げて、アーロンにも説教を浴びせた。
「……フッ……ルーイも、強くなったな……」
フィンガルは、まだ白い煙を上げながら立ち上がり、くるりと後ろを向くと、
「寂しくなるな。……今日は久しぶりに二人だけで晩メシ食べに行くか」
と言って、アーロンの母親の肩を抱いて、立ち去って行った。
パチパチパチパチ……と、どこからともなく拍手が起き、アーロンとルーイは、謎に観衆に見守られながら新居へと引っ越していった。
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