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第三十六話

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「ステータスは子供の頃に一度見た事があるけど、今のステータスなんて知らないわ。」

「僕もだねぇ。無料だけど、あそこは冒険者が多いから怖くて。」

「私は一度も見た事無いです。」

 やはり、この世界でステータスはあまり一般的では無い様だ。特に学生には。冒険者なら自分のランクを把握して置く為にステータスを常にチェックして置くのは常識らしいが。ユーリは自分の魔法で見れるので時たまチェックしている。

「じゃあ、まずみんなに自分のステータスを把握して貰いましょう。」

 そう言ってユーリは3枚の紙を出す。3人に1枚ずつ持たせ、魔法を掛ける。すると持ってる本人のステータスが浮かび上がる。

「これが現在のみんなのステータスだよ。良く確認してね。」

「なんか軒並み低い数字が並んでるけど、これで普通なの?」

「そうだね、12歳の平均ステータスは12、それ以上なら優秀以下なら頑張りましょうって感じかな。」

 12歳で魔力操作を習うまでは年齢=ステータスと言うのが普通だ。魔力操作を習うと劇的に変化する。例え魔力が伸びなくても体力が伸びたり知力が伸びたりする物なのだ。

「授業で習ったでしょ?魔力操作を覚えればステータスは一気に上がるって。だから今がそれでも心配は要らないよ。」

「でも現実に見せられるとへこみますね。」

「大丈夫だって!これからいじるから。」

「いじるって何を?まさか?」

「そう、そのまさかだよ。」

 ユーリがこれからやろうとしているのはステータスの編集いや、改ざんかな。

「そんな事が可能なの?」

「出来るよ。ただ、これをした事で君たち3人が努力を辞めてしまうなら元に戻させて貰うけどね。どうする?やるかい?」

「お願いするわ」

 イルミは決断が速い、対して他の2人はステータスの紙を見ながら悩んでいる。

「書き換えるのは2か所だけ。魔力量と知力だ。どちらも魔法を使うのに重要になる数値だ。他の数値はいじらないので自分で努力して上げて行って下さい。」

「僕もお願いします。」

「なら私も。」

 他の2人も覚悟を決めた様だ。

「じゃあ、始めるよ。ステータスの紙を良く見ててね。通常、魔法学院の卒業生の魔力量は300前後、魔法騎士団の平均が500、王宮魔導士のレベルで1000と言われている。知力に関しては学院の教師で200、王宮魔導士で250位かな。でもそれじゃあ、上級魔法は制御しきれない。」

 ユーリが魔量を込めると3人組に物凄い圧力がかかる。

「魔力量を1万。知力を1000に上げてみたんだけど、反映されてるかな?」

「「「さ、されてる・・・」」」

 3人組は顔をぶんぶんと縦に振っている。

「実はこれでも上級魔法を制御するにはちょっと危険が伴う数値なんだ。だから、努力は続けてね。」

「ユーリ君って何て言うかなんでもありね。」

「魔力量と知力を上げた影響で、これから他の数値もどんどん上がって行くはずだから、出来れば週に1回程度ステータスを測ります。他の人に知られない様に紙を使って今日みたいに見せるから安心してね。」

「って言うか、こんな事が出来るって事はユーリ君の数値ってもっと上って事だよね?」

 肯定はするが、流石に800万と言う数字は言えない。

「あ、魔力量上がってるから魔法を打つときは加減してね。」

「加減って言っても、何処かで加減の練習をしないと。」

「それもそうだね。何処か良いところ知らない?」

 実を言うと学院には自主練習場が幾つかあるのだが貴族が独占している状況だ。ユーリの名前で取れば使えない事も無いが、壊してしまう可能性が高いので難しい。

「解った。練習場は僕が作って置くよ。」

 ユーリは空間魔法を使って地下に練習場を作る事を思いついた。

 授業が一通り終わり放課後になるとユーリは早速、人が来ない校舎裏の廃倉庫へ入った。地面に魔法で扉を付け、中を空間魔法で徐々に広くして行く。イメージはアメリカの拳銃射撃所だ。25×100メートルの射撃場を作ると全体にプロテクトの魔法を重ね掛けして行く。およそ10分で練習場を作り終わると、3人組を呼びに行く。

「もう作ったのですか?」

「まあ、簡単な物だけどね。」

 そう言って3人組を練習場へ案内する。

「これって、学院の訓練場より立派じゃない?」

「とりあえず、皆、加減してファイアーボールを一発ずつ打ってみてよ。」

「解ったわ、じゃあ私から。」

 イルミさんがファイアーボールを打つ。加減したはずだが、通常よりボールが大きくスピードも速い。ユーリは慌ててファイアーボールを打ち消す。残りの2人も同じような結果だった。

「いいかい、加減してこの結果だ。加減しなかったらどうなるか分かるよね?同じ魔力量1のファイアーボールでも知力が高いと効果は高くなる更に詠唱と杖が効果を上乗せする。まずは、詠唱と杖を使わずにファイアーボールを打ってみよう。魔力量も1じゃなくて0.5をイメージして。」

 こうやって練習の日々が始まるのであった。授業では杖の形をしたレプリカを使い、魔力量も0.1でやっと他の生徒に並ぶのであった。

「これはストレスが溜まりますわ。4人で冒険者登録しませんか?」

「魔法使い4人で冒険者ですか?」

「ダンジョンに挑む訳ではありませんわ、王都の外で思いっきり魔法を打つ口実が欲しいだけですの。」

「なるほど、それも面白いかもね。」





 
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