60 / 151
第六十話
しおりを挟む
「知らない人と結婚したくありません。出来れば結婚相手は自分で見つけたいです。」
珍しくユーカがハッキリと物を言う。
「ふむ、時間的にそれが許される状況では無いと?」
「いや、その、出来れば・・・」
「何?協力できる事なら手助けするよ。」
「ユーリ君が貰ってくれないかと・・・」
「え?僕?」
「ユーリ君やイルミたちと離れたくないです。」
どうやらユーカは僕と結婚すれば他のメンバーとも一緒に居られると思っているらしい。
「僕と結婚しても皆と一緒に居られるとは限らないよ。他のメンバーも自分の将来設計があるだろうからね。」
「それでも知らない人に嫁ぐよりは可能性は高いですよね?それにユーリ君とは一緒に居られるし。」
「まあ、確かに。」
「別に正妻じゃなくても良いですよ。側室でも愛人でも構いません。」
あやうく飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。ユーカの口から愛人と言う言葉がでるとは。
「冗談では無さそうだね。タイムリミットは?」
「ギリギリ粘って1年かな。」
「ん~、なんとかユーカの納得できる答えを探してみるよ。」
「それって私を貰ってくれるって事?」
「まだ、約束は出来ないけど、そう言う事になるかな。」
ユーカが顔を真っ赤にして暑い暑いと顔を手で扇いでいる。
さて、こう言う話だと最適なのはイルミだな、うちの男性陣は頼りがい無いからなぁ。
「と言う事なんだけど、どう思う?」
場所は変わってイルミの商会の応接室を使わせてもらっている。ベンマックさんは来客で忙しそうだった。
「ユーリ次第なんじゃない?ユーカの父親もアトマス商会の事は知ってるはずだから、そこの創始者なら反対はしないと思うけど?」
「イルミはそれで良いの?」
「え?」
イルミは目に見えて動揺している。
「例えば、僕がこの商会に婿入りして、第2夫人としてユーカを迎え入れる事は可能かな?」
「それは出来ないわ。商会の店主は幾らお金を持っていても夫人は1人しか持てないわ。2人以上夫人を持てるのは貴族だけよ。って言うか、何気にプロポーズ?」
プロポーズと言う言葉は無視して話を続ける。
「貴族になれば夫人を2人持てるんだね?」
「そうね、下級貴族なら2人まで、上級貴族なら4人まで持てるわ。」
「手っ取り早く貴族になる方法ってあるかな?」
「ユーリ君って3男だよね?お兄さん2人を暗殺する?」
「いや、冗談じゃなくて。」
「一番確実なのは王宮魔術師になる事かな。ユーリ君の実力なら可能だし。」
「タイムリミットが1年しかないんだよ。」
王宮魔術師はユーリも考えたが、なるのに4年以上かかる。
「でも、確実になれる実力があるなら、ユーカの父親は説得出来るんじゃない?」
「ベンマックさんはどう説得するんだい?」
「やっぱプロポーズ?」
「ベンマックさんは嫁にくれるって言ってたよ。」
「人を犬や猫みたいに。」
ベンマックさんはユーリの事を商人だと思っている。貴族になったら態度が変わるのだろうか?
「真面目な話、1年以内に貴族になる方法って無いかな?」
「成人もしてないのに貴族になるなんて無茶な方法・・・あ、1つだけあるわ。」
「なになに?」
「武功を上げるの。」
「武功?」
イルミの話だと、冒険者が国の大事に繋がる様な事件や魔物を解決したり退治したりすると、年齢やランクに限らず、国が貴族に叙爵してくれるのだそうだ。
しかし、そう簡単にそんな事件や魔物は現れない。
「現れなかったら退治に向かったら?ユーリならドラゴン位退治できるでしょ?」
「まあ、ドラゴン程度ならなんとでもなるけど、何もしてない無害なドラゴンを倒して、爵位を貰えるの?」
「じゃあ、ドラゴンを王都まで連れて来て王都を襲って貰いましょう。そこでユーリの出番って言うのは?」
「自作自演かぁ。」
「美女2人が手に入るのよ。悪く無いと思わない?」
確かに作戦自体は悪く無い。ただ、本当にこんな事で爵位が貰えるのだろうか?だが、ユーリには他にこれと言ったアイデアが無い。まあ、時間もある事だしやってみよう。まずは、作戦を立案し、作戦に必要な魔法を作成して行く。久しぶりの魔法創造である。とりあえず、転移の魔法を作成した。これが無いと、ドラゴンを連れて来るのが大変だ。それからドラゴン退治のために氷魔法の上位魔法を改良して行く。炎魔法で消し飛ばしたら褒賞が貰えない。
魔法を作ったら慣れるまで練習だ。その間にドラゴンが居る場所をイルミに探して置いて貰う。ノリで作った冒険者カードが役に立つ。
転移の魔法もだいぶ慣れて来た。これで商会や店の移動も楽になりそうだ。ただ、1度行った事がある場所しか移動できないのが難点と言えば難点だ。それからユーリは『ブリザード』の魔法を改良して、『永久凍土』と言う魔法を作成した。これはこの世界には無い『絶対零度』と言う概念を氷魔法に付与した物だ。この魔法があれば、サラマンダーでも凍らせる事が出来るだろう。
一通り魔法を使ってみて感触をつかんだ頃。イルミがやって来た。手には何やら紙を丸めた物を持っている。
「これは?」
「ああ、地図よ。」
そう言って丸めた紙を広げる。結構大きく。A3位のサイズがある。
「この中央よりやや下にある赤い丸が王都ね。で、北東に180キロ程進んだ。この山が竜が住むと言う『竜の聖地』よ。」
竜の聖地って、そんな所からドラゴンを攫って来て問題にならないのだろうか?
「良い?狙うのは一番大きいブラックドラゴンよ。レッドドラゴン程度だと騎士隊や魔法師団に倒されてしまう可能性がゼロとは言い切れないわ。まあ、王都の部隊は戦争の経験も無いから逃げ出すのが落ちだと思うけど、念には念を入れてね。」
「了解、お姫様!!」
こうして、ユーリのドラゴン退治が始まるのであった。
珍しくユーカがハッキリと物を言う。
「ふむ、時間的にそれが許される状況では無いと?」
「いや、その、出来れば・・・」
「何?協力できる事なら手助けするよ。」
「ユーリ君が貰ってくれないかと・・・」
「え?僕?」
「ユーリ君やイルミたちと離れたくないです。」
どうやらユーカは僕と結婚すれば他のメンバーとも一緒に居られると思っているらしい。
「僕と結婚しても皆と一緒に居られるとは限らないよ。他のメンバーも自分の将来設計があるだろうからね。」
「それでも知らない人に嫁ぐよりは可能性は高いですよね?それにユーリ君とは一緒に居られるし。」
「まあ、確かに。」
「別に正妻じゃなくても良いですよ。側室でも愛人でも構いません。」
あやうく飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。ユーカの口から愛人と言う言葉がでるとは。
「冗談では無さそうだね。タイムリミットは?」
「ギリギリ粘って1年かな。」
「ん~、なんとかユーカの納得できる答えを探してみるよ。」
「それって私を貰ってくれるって事?」
「まだ、約束は出来ないけど、そう言う事になるかな。」
ユーカが顔を真っ赤にして暑い暑いと顔を手で扇いでいる。
さて、こう言う話だと最適なのはイルミだな、うちの男性陣は頼りがい無いからなぁ。
「と言う事なんだけど、どう思う?」
場所は変わってイルミの商会の応接室を使わせてもらっている。ベンマックさんは来客で忙しそうだった。
「ユーリ次第なんじゃない?ユーカの父親もアトマス商会の事は知ってるはずだから、そこの創始者なら反対はしないと思うけど?」
「イルミはそれで良いの?」
「え?」
イルミは目に見えて動揺している。
「例えば、僕がこの商会に婿入りして、第2夫人としてユーカを迎え入れる事は可能かな?」
「それは出来ないわ。商会の店主は幾らお金を持っていても夫人は1人しか持てないわ。2人以上夫人を持てるのは貴族だけよ。って言うか、何気にプロポーズ?」
プロポーズと言う言葉は無視して話を続ける。
「貴族になれば夫人を2人持てるんだね?」
「そうね、下級貴族なら2人まで、上級貴族なら4人まで持てるわ。」
「手っ取り早く貴族になる方法ってあるかな?」
「ユーリ君って3男だよね?お兄さん2人を暗殺する?」
「いや、冗談じゃなくて。」
「一番確実なのは王宮魔術師になる事かな。ユーリ君の実力なら可能だし。」
「タイムリミットが1年しかないんだよ。」
王宮魔術師はユーリも考えたが、なるのに4年以上かかる。
「でも、確実になれる実力があるなら、ユーカの父親は説得出来るんじゃない?」
「ベンマックさんはどう説得するんだい?」
「やっぱプロポーズ?」
「ベンマックさんは嫁にくれるって言ってたよ。」
「人を犬や猫みたいに。」
ベンマックさんはユーリの事を商人だと思っている。貴族になったら態度が変わるのだろうか?
「真面目な話、1年以内に貴族になる方法って無いかな?」
「成人もしてないのに貴族になるなんて無茶な方法・・・あ、1つだけあるわ。」
「なになに?」
「武功を上げるの。」
「武功?」
イルミの話だと、冒険者が国の大事に繋がる様な事件や魔物を解決したり退治したりすると、年齢やランクに限らず、国が貴族に叙爵してくれるのだそうだ。
しかし、そう簡単にそんな事件や魔物は現れない。
「現れなかったら退治に向かったら?ユーリならドラゴン位退治できるでしょ?」
「まあ、ドラゴン程度ならなんとでもなるけど、何もしてない無害なドラゴンを倒して、爵位を貰えるの?」
「じゃあ、ドラゴンを王都まで連れて来て王都を襲って貰いましょう。そこでユーリの出番って言うのは?」
「自作自演かぁ。」
「美女2人が手に入るのよ。悪く無いと思わない?」
確かに作戦自体は悪く無い。ただ、本当にこんな事で爵位が貰えるのだろうか?だが、ユーリには他にこれと言ったアイデアが無い。まあ、時間もある事だしやってみよう。まずは、作戦を立案し、作戦に必要な魔法を作成して行く。久しぶりの魔法創造である。とりあえず、転移の魔法を作成した。これが無いと、ドラゴンを連れて来るのが大変だ。それからドラゴン退治のために氷魔法の上位魔法を改良して行く。炎魔法で消し飛ばしたら褒賞が貰えない。
魔法を作ったら慣れるまで練習だ。その間にドラゴンが居る場所をイルミに探して置いて貰う。ノリで作った冒険者カードが役に立つ。
転移の魔法もだいぶ慣れて来た。これで商会や店の移動も楽になりそうだ。ただ、1度行った事がある場所しか移動できないのが難点と言えば難点だ。それからユーリは『ブリザード』の魔法を改良して、『永久凍土』と言う魔法を作成した。これはこの世界には無い『絶対零度』と言う概念を氷魔法に付与した物だ。この魔法があれば、サラマンダーでも凍らせる事が出来るだろう。
一通り魔法を使ってみて感触をつかんだ頃。イルミがやって来た。手には何やら紙を丸めた物を持っている。
「これは?」
「ああ、地図よ。」
そう言って丸めた紙を広げる。結構大きく。A3位のサイズがある。
「この中央よりやや下にある赤い丸が王都ね。で、北東に180キロ程進んだ。この山が竜が住むと言う『竜の聖地』よ。」
竜の聖地って、そんな所からドラゴンを攫って来て問題にならないのだろうか?
「良い?狙うのは一番大きいブラックドラゴンよ。レッドドラゴン程度だと騎士隊や魔法師団に倒されてしまう可能性がゼロとは言い切れないわ。まあ、王都の部隊は戦争の経験も無いから逃げ出すのが落ちだと思うけど、念には念を入れてね。」
「了解、お姫様!!」
こうして、ユーリのドラゴン退治が始まるのであった。
12
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる