創造魔法で想像以上に騒々しい異世界ライフ

埼玉ポテチ

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第八十六話

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 ユーリから通信機で連絡を受けたバートは、翌朝商業ギルドで商会立ち上げの申請を行った。およそ1時間くらいで許可が下りるので、椅子に座って待っている。この時間のギルドは結構混んでいるので、バートは椅子に座ったまま人の流れを見ている。人の流れを見ているとギルドへ何をしに来ているのかがだいたい判る。一番多いのは人材の斡旋だ。次が商品の販売許可、卸業者の紹介、特許の申請と続く時間帯もあるだろうが、立ち話をしている商人も多い、ギルドを情報交換の場所に使っているのだろう。何が売れて、何処で仕入れられるか。情報を制した者が商人として成功する。

 バートは改めてユーリの凄さを知った。あの人は情報収集の場を自分で作り出し人材も確実に確保している。自分より幼いと侮ったりはしない。ポケットの中の通信機を握りしめ。自分に何が出来るかと思考を巡らす。

 その頃ユーリは日課の商会巡りをしていた。各商会の商品補充と情報収集だ。時間通りなら10時には『バート商会』が誕生しているだろう。これは今日も学院には行けないな。ここの所まともに学院へ行って無いな。ユーカとイルミから苦情が来そうだ。そう言えばまだ伯爵邸も見せてないし。って言うかユーカには子爵邸も見せてないや。

 10時半を回った頃、ユーリがバート商会を訪れると、既に他の2人は来ていた。あちこち見て回って、ここに何を置くとか話し合ってる様だ。ユーリは新婚さんの家を訪ねた客の様な気分だった。

「あ、おはようございます。商会の申請無事に終わりました。今日から正式に活動できますね。」

 バートが元気よく報告してくる。

「まあ、今日はこれからどう活動するかを軽くね。チェスカさんは体調大丈夫?」

「はい、私にこんな日が来るなんて、信じられません。本当に薬の代金は支払わなくて良いんですか?」

「それは気にしなくて大丈夫です。まあ、元気になったからって無茶はしないでね。」

 2人は商会の中を全部見た様なので、応接室へ集まる。朝食は済んでいるだろうから飲み物だけ出す。今日はコーラにしてみた。飲み物だけ出したらチェスカさんが落胆した顔をしたのでシュークリームも出してみた。途端に目つきが変わるチェスカさん。食いしん坊キャラなのか?

「今まで、体の調子が悪い日が続いていたので、こう言う甘い物って殆ど食べた事が無いんですよ。」

 チェスカが空気を呼んだのか語り出した。

「じゃあ、バートさんの商会の焼き菓子は?」

「バートがたまに持って来てくれるんですが、喉を通らなくて。でも元気になったのでこれからは食べられますね。」

 嬉しそうに微笑むチェスカさん。バートさんは何故か照れてる。

「さて、時間に限りもありますので本題に入りましょう。まず、人材なんですが、この商会の規模からするとあと数名は欲しいですね。バートさんもチェスカさんも心に留めて置いて下さい。すぐにとは言いませんので、これはと言う人材を見つけたら教えて下さい。」

 2人は頷いて、頭の中で心当たりを探っている。

「次にお風呂ですが、これは自由に使って貰って構いません。リラックスすると良いアイデアが浮かんだりするので、なるべく使って下さい。それにお風呂やトイレ等は新商品のネタが沢山転がってると思います。またキッチンもネタの宝庫です。ですので、普段生活する様に自由に使って下さい。会議をするだけが商品開発ではありません。むしろ、会議をするのは商品のアイデアが固まってからですね。特に何もする事が無い時は他の商会を覗きに行くのもお勧めします。」

「それは普段の生活の中で不便な事を見つけて、それを解決する商品を作るって言う事ですか?」

「お、バートさん鋭いですね。その通りです。不便こそが新製品のアイデアを生みます。ただ、男性と女性、貴族と庶民、大人と子供、立場によって必要な商品は変わってきます。雑貨屋イルミは学生をターゲットにして成功しました。この商会は10代後半から20代をターゲットにしようと考えています。ですので、自分の視点だけでなく他人の視点も意識してみて下さい。」

「意外と難しいんですね。」

 チェスカさんがシュークリームと格闘しながら答える。

「実際にやってみると、そんなに難しくはありませんよ。まずは自分が欲しい物から始めるとわかり易いでしょう。」

「なるほど、僕もチェスカも10代後半。その2人が欲しい物なら他に欲しい人が居るかもしれませんね。」

 相変わらずバートさんは仕事の話だと鋭い。

「と言う事で、暫くはこの商会を家だと思って自由に使って下さい。欲しい物があったら持ち込んでも構いませんし、僕に言って貰えれば用意します。」

「解りました。やってみます。で、ユーリさんは?」

「僕もなるべく毎日顔を出すようにしますので、1日に1時間位は話し合う時間を作りましょう。」

「「はい!」」



 バート商会を後にし、一旦自宅へ転移で戻る。執事のフロッシュさんに引っ越しの状況を尋ねると、まだ半分位だそうだ。友達を連れて来ても構わないか聞くと応接室なら大丈夫との事。ユーカとイルミを招待するつもりだ。

 まだ、時間が早いのでベッドに寝転がりながら、考え事をする。領地のグラストフの事も気がかりだし、新しい商会や通信機の事も考えなければならない。我ながら手を広げすぎだと思いながらも、思いつくと止まらない性分は治りそうにない。

 気が付くと寝てたらしい。時間を見るともう2時を回っている。着替えて馬車を出して貰う。行先は学院だ。

 学院の門で待っているとユーカとイルミとキルケが話をしながら歩いて来た。声を掛けると3人共驚いていた。ユーカとイルミに用事がある事を伝えキルケには帰って貰った。ちょっと離れた位置に止めてある馬車に2人を乗せ家に向かう事を伝える。

 貴族街へ向かい馬車が進むとまず、イルミが道が違う事に気が付く。続いて実家の伯爵家に近づくと、ユーカが気が付く。

「ユーリ君、家に行くんじゃないの?」

「そうだよ。新しい家を買ったんだ。」

 そう言えば前回学院へ行ったときはまだ陞爵していなかったので伯爵になった事は伝えてないが、二人の父親には伝えてある。

「伯爵に陞爵したんだけど、2人共お父さんから聞いてない?」

 2人共横に首をぶんぶんと振る。

「ま、そう言う事で、ここが新しい家です。」

 新しい伯爵家の前で場所を降りた2人はあまりの大きさに唖然としている。

「まだ、庭とか手入れしていないのでむさ苦しいけど我慢してね。」

「いや、問題はそこじゃないって。何この家の大きさは?」

「ああ、父上に言われてね。お金をなるべく使えってさ。使用人も50人雇わないとイケないらしい。伯爵って面倒だよね。」

「子爵邸はどうしたの?」

「子爵邸?」

「あ、ユーカは知らなかったんだっけ?」

「ユーカは病気で休んでたからね。子爵邸は賃貸だったので一応今月いっぱいで返す事になるね。」

「私が折角選んだ家具や調度品は?」

「ちゃんと、こっちへ持って来たよ。」

 ユーカは話に付いていけない。

「とりあえず、中へ入ろうよ。立ち話もなんだしね。」
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