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第百二十四話

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 今日はエリシアたちは稽古らしい、俺はパトロールに出ようとしたのだが、また美味い物を作ってくれと頼まれ商店街に行く事になった。

 邪神の子がいつ出るか判らないのに困ったもんだと思いながらもメニューを考えてしまう。

 ギンガに邪神の子の波動を感じたらすぐに言えと伝えて商店街へ向かう。

 さて、何を作ろう?肉を美味く食べる会に貢献するかな。となるととんかつソースと焼き肉のタレだな。この2つを再現しよう。

 賢者の叡智でレシピを引き出す。とんかつソースは野菜と果物とお酢がメインだ、この世界の物で作ってみよう。あとはスパイスが必要だが、これはアイテムボックスに眠っているもので補うか。

 焼き肉のタレは醤油があれば後の材料は簡単に手に入るだろう。やはり問題は醤油だな。醤油と味噌は是非この世界でも再現したい。大豆はあるのだから一度挑戦してみるか。

 しかし、焼き肉にとんかつとなると白飯が食いたくなるな。この世界にライスはあるらしいから探してみるか。

 商店街に着き、野菜や果物などを大量に購入して行く、ショウガとニンニクは特に重要だ。八百屋のおやっさんに、また何か作るのか?と聞かれたので出来たらおすそ分けしますよと答えて置いた。

 肉屋に寄ってオーク肉のロースと、バッファローの肉の脂身が多めの場所を買う。どうやらバラ肉はミンチにしてしまうらしい。カルビ美味いのに。と言う事でバラ肉を焼き肉にすると美味いと言う事をおやじに教えて置いた。

 さて、買い忘れは無いかなと商店街をぐるりと見まわすと小麦粉を買っている人を見かけた。ふと思いついて店に近づく。

「小麦粉を3キロくれ。あと雑穀は扱って無いか?」

「雑穀ですか?何種類かありますが、どの様な物をお探しで?」

「米とかライスとか呼ばれてる物を知らないか?」

「ライスウィードの実ならありますよ。」

「それを見せて貰えないか?」

 店主が袋に入ったライスウィードの実と言うのを持って来てくれた。袋を開けると既に精米してある。少し小さいが間違いなく米だ。

「これ、どの位ある?」

「ああ、今在庫は50キロ位だな。」

「もっと欲しいんだが取り寄せられるか?」

「どの位欲しいんだ?」

「とりあえず300キロ位。」

「2週間位あれば、その位集まるぞ。」

「解った。今ある分を全部くれ。幾らだ?」

「キロ銅貨2枚って所だな。50キロだから銀貨1枚だ。」

 50キロで1万円か、まあ質を考えればそんなもんか。

「また2週間後に来るので300キロ頼むぞ。」

「あんた竜砕きのリュートだよな?」

「知ってるのか?」

「この町であんたら夫婦を知らない者は居ないよ。」

「しかし、ライスウィードなんて粥くらいにしかならないぞ、何に使うんだ?」

「まだ、成功するか判らないが美味い喰い方があるんだ。成功したら教えるよ。」

「ほう?楽しみにしてるよ。」

 米と牛肉が手に入った玉ねぎも買ってある。牛丼が食えるな。

 帰り際に何時もの金物屋に寄る。焼き網とご飯を炊く為の蓋つきの鍋を購入する。

「七輪って何処で売ってるんだ?」

「シチリンってなんだ?」

「ああ、炭を燃やして上に網を乗せて肉を焼いたりする道具だ。」

「バーベキューコンロじゃ駄目なのか?」

「あるのか?」

 おやじさんが奥から2種類のコンロを持って来た。大きめと小さめの2種だ。

「大きめのを貰おう。炭は何処で買える。」

「炭もうちで扱ってるよ。何キロ欲しい?」

「じゃあ、10キロ程くれ。ついでにトングはあるか?」

「あるぞ。大小あるが、どっちが良い?」

「両方2本ずつくれ。」

 なんと金物屋でバーベキューセットが揃ってしまった。これで庭で焼き肉パーティーだな。

 家に帰るとミントとシーネがダウンしてたので回復魔法を掛けて置く。エリシアは通常運転だ。早速調理に取り掛かる。まずはとんかつソースから。野菜と果物を鍋に入る大きさに切りどんどんぶち込み火をつける。暫くはこのままだ。その間に焼き肉のタレも作って行く、こちらは基本火を通さない。醤油、酒、しょうがのしぼり汁、刻んだニンニク、レモン汁などをどんどん混ぜて行く。豆板醤が無いので味噌とごま、後、八百屋で買った謎果物の果汁なども味見しながら混ぜて行く。辛みとコクが足らないので唐辛子と胡椒、赤ワインを少し入れてみる。なかなか味が整って来た。

 1時間ほどするとソースの鍋の野菜や果物が形を無くすので粗目のざるで濾す。さらにスパイス類と赤ワインを加えて煮込む。トロリとして来たら食塩、砂糖、酢、香辛料を加えて調整する。この世界に米酢は無いのでリンゴ酢で代用したが、悪く無い味だ。一旦火を止めて蓋をして馴染ませる。

 次は米だ。これがどこまで日本のコメに近い味を出せるか楽しみだ。軽量カップが無いのでコップで代用する。とりあえず5合位炊いてみよう。カップ5杯を鍋に入れて良く研ぐ。精米してあるが精米が甘いので結構糠が残っているので丁寧に研ぐ。カップ5杯の水を入れ。30分程水を吸わせてから火にかける。薪なので火加減が難しい。四苦八苦しながら炊き上げる。暫く蒸らせば完成だ。

 そうこうしているとミントとシーネが2度目のダウン。またまた回復魔法をかける。俺が居ない時はどうしてるんだ?

「今日はその辺にしておけ、無駄に体をいじめても成長はしないぞ。」

 3人がはーいと言って上がって来るので冷たい果実水を出してあげる。

「何やら美味しそうな匂いがするが何をしてたんだ?」

「ちょっと色々研究をね。」

「まだ夕食には時間が早いだろ?風呂でも行ってこい。その間に出来るから。」

「解ったギンガを貸してほしいのだが。」

「ギンガを風呂に入れる訳には行かないだろう?」

「むむ、確かに。」

 エリシアたちが風呂に行ったのを見送ってから、ご飯の味見をする。

「お、意外に美味いな。そのまま食べるには若干粒が小さい気がするが、粘り気は結構あるし、味も良い。」

 今日は庭で焼き肉をする予定なので塩むすびを作って行くリュート。多分ギンガも食べるだろうから小さめにして15個程握る。

 次は庭にバーベキューコンロを出し炭をおこす。焼き肉のタレは沢山作ったので漬け込んでも良かったかな。

 そう言えばこの世界に腸詰ってあるのだろうか?今度肉屋に聞いてみよう。

 1時間程で3人が帰って来た。肉は厚めにカットしてある。庭に椅子を持ち出し。皆にトングとフォークを渡す。次に焼き肉のタレの入った小皿を渡し。焼けたらこれに付けて食べてねと言うと、既に網の上に大量の肉が乗っている。俺はピーマンの様な物と玉ねぎを端っこに並べた。

 3人は物凄い勢いで肉を減らして行く。俺は見てるだけでお腹が一杯だ。

「慌てなくても肉は逃げないよ。」

「いや、目を離すと焦げるからな。」

「それは乗せすぎなんだよ。」

「パンは無いのか?」

「今日はパンの代わりにこれだ。」

 そう言っておにぎりを出す。

「ほう?なんだこれは?」

「ライスと言う食べ物だ。」

 俺はギンガに肉とおにぎりを与えながら答える。

「これは肉と合うな。」

「だろう?」

「エールがあればもっと最高だ。」

 はいはい、そう言うと思ってましたよ。リュートは3人に冷えたエールを出すのであった。

 その後も3人と1匹は早いペースで肉を消化して行く。俺はおにぎりでお腹いっぱいです。あ、野菜は食べました。だって誰も食べないんだもん。

「明日は狩りに出るのか?」

「その予定だ。」

「じゃあ、俺はパトロールに出るから、また夕方にギルドで待ち合わせだな。」

「うむ、明日は負けないのだ。」

 エリシアさんは何と勝負してるのかな?

「意気込むのは良いが怪我はするなよ。」

「解っている。リュートこそ無茶はするな。」

「大丈夫だ。ギンガも居るしな。」

「なんでそこでギンガが出て来る?」

「あれ?言って無かったか?こう見えてもギンガは神獣フェンリルだぞ。」

「「「え~~~~~!!」」」

 3人の叫び声が夜空に響いた。
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