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第百三十三話
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乾物屋のおばちゃんに町の名前と商会の名前を聞いたので小豆を仕入れに行こうと思って居る。なんでも海の近くにある町だそうで、そっち方面でも期待している。
エリシアに2日位留守にすると言ってフライで西へ飛ぶ。かなり遠いらしいので間に幾つか村や町がある。どこもまだ復興の途中の様で、邪神の子の爪痕がかなり深いのが判る。途中、王都を見て行くかとも考えたが、あそこは人が死に過ぎている。今は行っても出来る事が無いだろうと諦めた。
領都サームから既に500キロ以上飛んでいるが、なかなか海が見えてこない。どうやらこの国はかなり大きい様だ。それから30分程飛んでいるとようやく海が見える。飛んでる間中ずっと下は森林地帯だった。これだけ森が多ければ、魔物も出るし人は住みにくいだろう。旅商人は危険な旅をしながらも商売を続けている。俺には真似できないなとリュートは思った。
海を見つけてから街道を辿ると町が見えて来る。規模は領都の半分位だろうか?規模の割には活気のある町だ。町の手前で降りて歩いて町に入った。
町の名前はルーバ、塩が取れるので有名らしい。門番にこの町は邪神の子の影響はどうだったかと尋ねてみた。
「この町は2方を海に1方を山にと3方を囲まれているので防衛が楽だった。この門さえ守ってれば良いので。冒険者たちの力を借りて何とか生き残ったのさ。」
「なるほど、立地が味方してくれたんですね?で、復興も早かったと?」
「そう言う事だな。」
ギルドカードを見せて門を通して貰った。ちなみに冒険者を引退してもギルドカードは有効だ。身分証明書になるので常に持っている。
町に入ると潮の香りがする。
まず、商業ギルドへ行き、目的の商会の場所を聞いた。商会はギルドの近くらしい。歩いて5分程の距離だ。
商会を訪れて赤い小さい豆が欲しい事を伝えると。どの位欲しいのか聞かれる。小豆は森で採れるらしく値段は安かった。今在庫がどの位あるのか聞くと500キロと返事が返って来たので、全部くれと言って全部買い占めた。森ですぐに取れるらしいので買い占めても問題無いだろう。500キロで金貨5枚だった。他にも豆があるなら見せて欲しいと言い、色々見せて貰ったが、黒豆や珍しい豆は無かった。
商会を後にして、商店街へ向かう。はやり地の物は商店街を覗かないと判らないだろうと言う考えだ。しかし、色々見て回ったが、めぼしい物は無かった。
と言うか、魚屋が無いぞ。海の町だよな?近くの店で聞いてみる。
「この町に魚を売ってる店は無いのか?」
「魚は食わないからな。肉があれば魚を食う必要無いだろう?」
「魚は魚で肉とは違う美味さがあると思うが?貝やエビなんかも食べないのか?」
「ああ、食べる奴も居るが、大抵は自分で獲った物だな。屋台に行けば貝やエビの串焼きは食えるぞ。」
なんと言うか、この世界の魚介類の地位低すぎないか?
とりあえず海の方へ向かってみる。どうやらここの海も砂浜が無い様だ。砂浜があれば事情が違ったんだろうな。
食堂でも行ってみようかと引き返す途中で海鮮の屋台を見つけたので覗いてみる。エビや貝の串焼きが売っている。とりあえず1本ずつ買って味見をしてみるが、何と言うか処理が悪いのか生臭い。鮮度の問題かもしれない。屋台のおやじに聞いてみる。
「この辺では魚は食わないのか?」
「いや、海辺の住人は結構食べるぞ。山側の住人は食わないがな。」
「どんな魚が美味いんだ?」
「夕方になるとバーベキューをやってるから覗いてみると良い。大銅貨1枚で食べ放題だ。」
「ほう?そう言うのがあるのか?」
「ああ、その日獲れた新鮮な魚が出るから美味いぞ。」
「解った。参加してみるよ。」
それからカツオやサバの様な魚を知らないか聞いてみたが、知らないそうだ。どうやらこの世界の魚は独自の進化をしている様だ。
屋台を後にして食堂へ向かった。偵察の様な物だ。使えそうなメニューがあれば参考にしたい。
適当な食堂に入っておすすめを頼んでみる。何処でも食べれる様な豆と肉の煮込みだった。味も普通だ。
まだ夕方まで時間があるので宿を取って置こうと店員に聞いてみた。
「この近くに安い宿ってあるか?」
「ならうちの隣が良いですよ。海に近いのでこの季節なら涼しいですし。」
「ありがとう。助かるよ。」
そう言って店を出る。確かに隣が宿屋だ。入る時に気付かなかった。
宿に入るとおばちゃんがカウンターに座っていた。
「いらっしゃい。泊まりかい?」
「ああ、1泊頼む。食事は無しで。」
「だったら。大銅貨8枚だね。」
ほう?素泊まりで8000円か、確かに安いな。
銀貨を1枚出してお釣りをもらう。
「ちょっと色々見たいので部屋番号だけ教えてくれ。」
「7号室だよ。」
「解った。」
その後あちこち見て回り、町の住人の生活水準や特産物などを調べる。どうやら塩がメインの産業で、それ以外はあまり発展していない様だ。
こう言う時はアレだ、子供に話を聞くと庶民の暮らしのレベルが判るはずだ。周りを見渡すと結構子供の姿を見かける。
一人に声を掛けると犯罪者に間違われそうなので、3人で遊んでる子供たちに声を掛ける。
「ねえ、この辺で甘い物って売ってる?」
「甘い物?ハチミツなら乾物屋に売ってるよ。」
「ああ、そう言う甘い物じゃなくて、お菓子の事だよ。」
「お菓子はね貴族様しか食べないんだよ。」
「じゃあ、美味しい果物ってある?」
「今の季節はウリが美味しいよ。」
ウリ?スイカかメロンの事かな?
「ありがとう。これ、あげるからおうちの人に言ってから食べるんだよ。」
そう言って大福を2つずつ紙に包んで3人に渡した。サツマイモかさましバージョンだ。
日もだいぶ落ちて来たのでゆっくりと海辺の方に向かう。人だかりが出来ている場所がある。多分あそこがバーベキュー会場だろう。
「こんばんは」
声を掛けてみる。
「見ない顔だね。参加希望者かい?」
「ええ、大銅貨1枚で食べ放題と聞いたので。」
「兄さん冒険者かい?」
「はい、この町は初めて来ました。海辺の町なので魚が食べたくて。」
「珍しいね。魚はこの町でも食べる人はあまり多く無いんだよ。」
「そうなんですか?ちなみにどんな魚が獲れるんですか?」
「見てみるかい?今日の収穫だよ。」
そう言って大きめのタライを見せてくれる。中には大小様々な魚が泳いでいる。
「へぇ。これ全部食べられる魚なんですか?」
「そうだよ、他に貝やエビ、カニもあるよ。」
そう言って、もう一つのタライを指さす。
「炭も良い感じになって来たのでそろそろ始めるぞ。」
漁師っぽいおじさんが声をかける。
豪快に魚を丸ごと網に乗せて行く。後ろの方で料理人らしき人が大きい魚をさばいている。ん?小さめだけど、マグロじゃ?
炭火に焙られて魚や貝が良い香りを放っている。美味そうだが味付けは?
「ほら兄さん、見とれてないで食いな。こっちはもう焼けてるぞ。」
皿に魚を取ってくれるのは良いのだが味付けは?
「これは、このまま食べれば良いんですか?」
「そうだ、頭から噛り付け。」
いやいや、シシャモじゃないんだから、これは骨が刺さるでしょ?
フォークを取り出し、身をほじくりながら食べてみる。アジに近いかな。フライにしたら美味そうだ。
食べていると、ハマグリの様な貝をトングで皿に乗せてくれた。
いい匂いだが、これは醤油が欲しいでしょ?って事で、こっそり醤油を出して垂らして食べてみる。まさにハマグリ。
解った気がする。何故魚が人気が無いか、問題は味付けだよ。何も味付けしなければそれは飽きられて当たり前だね。
次にホッケの様な半身の魚が来たので、今度は堂々と醤油をかけて食べてみる。
「美味い。やはり新鮮な魚は美味いですね。」
「兄さん今のは?」
「これですか?魚に合う調味料ですよ。『醤油』と言います。使ってみます?」
「ああ、これにちょっとだけ掛けてみてくれ。」
そう言って網の上の魚をトングで指す。良いですよと言って、醤油を垂らすと、たちまち醤油の焦げる香ばしい香りが漂う。
「これは、美味いな。」
「でしょ?そっちの貝にも合いますよ。」
それから醤油の瓶があちこちに飛び回っていた。
エリシアに2日位留守にすると言ってフライで西へ飛ぶ。かなり遠いらしいので間に幾つか村や町がある。どこもまだ復興の途中の様で、邪神の子の爪痕がかなり深いのが判る。途中、王都を見て行くかとも考えたが、あそこは人が死に過ぎている。今は行っても出来る事が無いだろうと諦めた。
領都サームから既に500キロ以上飛んでいるが、なかなか海が見えてこない。どうやらこの国はかなり大きい様だ。それから30分程飛んでいるとようやく海が見える。飛んでる間中ずっと下は森林地帯だった。これだけ森が多ければ、魔物も出るし人は住みにくいだろう。旅商人は危険な旅をしながらも商売を続けている。俺には真似できないなとリュートは思った。
海を見つけてから街道を辿ると町が見えて来る。規模は領都の半分位だろうか?規模の割には活気のある町だ。町の手前で降りて歩いて町に入った。
町の名前はルーバ、塩が取れるので有名らしい。門番にこの町は邪神の子の影響はどうだったかと尋ねてみた。
「この町は2方を海に1方を山にと3方を囲まれているので防衛が楽だった。この門さえ守ってれば良いので。冒険者たちの力を借りて何とか生き残ったのさ。」
「なるほど、立地が味方してくれたんですね?で、復興も早かったと?」
「そう言う事だな。」
ギルドカードを見せて門を通して貰った。ちなみに冒険者を引退してもギルドカードは有効だ。身分証明書になるので常に持っている。
町に入ると潮の香りがする。
まず、商業ギルドへ行き、目的の商会の場所を聞いた。商会はギルドの近くらしい。歩いて5分程の距離だ。
商会を訪れて赤い小さい豆が欲しい事を伝えると。どの位欲しいのか聞かれる。小豆は森で採れるらしく値段は安かった。今在庫がどの位あるのか聞くと500キロと返事が返って来たので、全部くれと言って全部買い占めた。森ですぐに取れるらしいので買い占めても問題無いだろう。500キロで金貨5枚だった。他にも豆があるなら見せて欲しいと言い、色々見せて貰ったが、黒豆や珍しい豆は無かった。
商会を後にして、商店街へ向かう。はやり地の物は商店街を覗かないと判らないだろうと言う考えだ。しかし、色々見て回ったが、めぼしい物は無かった。
と言うか、魚屋が無いぞ。海の町だよな?近くの店で聞いてみる。
「この町に魚を売ってる店は無いのか?」
「魚は食わないからな。肉があれば魚を食う必要無いだろう?」
「魚は魚で肉とは違う美味さがあると思うが?貝やエビなんかも食べないのか?」
「ああ、食べる奴も居るが、大抵は自分で獲った物だな。屋台に行けば貝やエビの串焼きは食えるぞ。」
なんと言うか、この世界の魚介類の地位低すぎないか?
とりあえず海の方へ向かってみる。どうやらここの海も砂浜が無い様だ。砂浜があれば事情が違ったんだろうな。
食堂でも行ってみようかと引き返す途中で海鮮の屋台を見つけたので覗いてみる。エビや貝の串焼きが売っている。とりあえず1本ずつ買って味見をしてみるが、何と言うか処理が悪いのか生臭い。鮮度の問題かもしれない。屋台のおやじに聞いてみる。
「この辺では魚は食わないのか?」
「いや、海辺の住人は結構食べるぞ。山側の住人は食わないがな。」
「どんな魚が美味いんだ?」
「夕方になるとバーベキューをやってるから覗いてみると良い。大銅貨1枚で食べ放題だ。」
「ほう?そう言うのがあるのか?」
「ああ、その日獲れた新鮮な魚が出るから美味いぞ。」
「解った。参加してみるよ。」
それからカツオやサバの様な魚を知らないか聞いてみたが、知らないそうだ。どうやらこの世界の魚は独自の進化をしている様だ。
屋台を後にして食堂へ向かった。偵察の様な物だ。使えそうなメニューがあれば参考にしたい。
適当な食堂に入っておすすめを頼んでみる。何処でも食べれる様な豆と肉の煮込みだった。味も普通だ。
まだ夕方まで時間があるので宿を取って置こうと店員に聞いてみた。
「この近くに安い宿ってあるか?」
「ならうちの隣が良いですよ。海に近いのでこの季節なら涼しいですし。」
「ありがとう。助かるよ。」
そう言って店を出る。確かに隣が宿屋だ。入る時に気付かなかった。
宿に入るとおばちゃんがカウンターに座っていた。
「いらっしゃい。泊まりかい?」
「ああ、1泊頼む。食事は無しで。」
「だったら。大銅貨8枚だね。」
ほう?素泊まりで8000円か、確かに安いな。
銀貨を1枚出してお釣りをもらう。
「ちょっと色々見たいので部屋番号だけ教えてくれ。」
「7号室だよ。」
「解った。」
その後あちこち見て回り、町の住人の生活水準や特産物などを調べる。どうやら塩がメインの産業で、それ以外はあまり発展していない様だ。
こう言う時はアレだ、子供に話を聞くと庶民の暮らしのレベルが判るはずだ。周りを見渡すと結構子供の姿を見かける。
一人に声を掛けると犯罪者に間違われそうなので、3人で遊んでる子供たちに声を掛ける。
「ねえ、この辺で甘い物って売ってる?」
「甘い物?ハチミツなら乾物屋に売ってるよ。」
「ああ、そう言う甘い物じゃなくて、お菓子の事だよ。」
「お菓子はね貴族様しか食べないんだよ。」
「じゃあ、美味しい果物ってある?」
「今の季節はウリが美味しいよ。」
ウリ?スイカかメロンの事かな?
「ありがとう。これ、あげるからおうちの人に言ってから食べるんだよ。」
そう言って大福を2つずつ紙に包んで3人に渡した。サツマイモかさましバージョンだ。
日もだいぶ落ちて来たのでゆっくりと海辺の方に向かう。人だかりが出来ている場所がある。多分あそこがバーベキュー会場だろう。
「こんばんは」
声を掛けてみる。
「見ない顔だね。参加希望者かい?」
「ええ、大銅貨1枚で食べ放題と聞いたので。」
「兄さん冒険者かい?」
「はい、この町は初めて来ました。海辺の町なので魚が食べたくて。」
「珍しいね。魚はこの町でも食べる人はあまり多く無いんだよ。」
「そうなんですか?ちなみにどんな魚が獲れるんですか?」
「見てみるかい?今日の収穫だよ。」
そう言って大きめのタライを見せてくれる。中には大小様々な魚が泳いでいる。
「へぇ。これ全部食べられる魚なんですか?」
「そうだよ、他に貝やエビ、カニもあるよ。」
そう言って、もう一つのタライを指さす。
「炭も良い感じになって来たのでそろそろ始めるぞ。」
漁師っぽいおじさんが声をかける。
豪快に魚を丸ごと網に乗せて行く。後ろの方で料理人らしき人が大きい魚をさばいている。ん?小さめだけど、マグロじゃ?
炭火に焙られて魚や貝が良い香りを放っている。美味そうだが味付けは?
「ほら兄さん、見とれてないで食いな。こっちはもう焼けてるぞ。」
皿に魚を取ってくれるのは良いのだが味付けは?
「これは、このまま食べれば良いんですか?」
「そうだ、頭から噛り付け。」
いやいや、シシャモじゃないんだから、これは骨が刺さるでしょ?
フォークを取り出し、身をほじくりながら食べてみる。アジに近いかな。フライにしたら美味そうだ。
食べていると、ハマグリの様な貝をトングで皿に乗せてくれた。
いい匂いだが、これは醤油が欲しいでしょ?って事で、こっそり醤油を出して垂らして食べてみる。まさにハマグリ。
解った気がする。何故魚が人気が無いか、問題は味付けだよ。何も味付けしなければそれは飽きられて当たり前だね。
次にホッケの様な半身の魚が来たので、今度は堂々と醤油をかけて食べてみる。
「美味い。やはり新鮮な魚は美味いですね。」
「兄さん今のは?」
「これですか?魚に合う調味料ですよ。『醤油』と言います。使ってみます?」
「ああ、これにちょっとだけ掛けてみてくれ。」
そう言って網の上の魚をトングで指す。良いですよと言って、醤油を垂らすと、たちまち醤油の焦げる香ばしい香りが漂う。
「これは、美味いな。」
「でしょ?そっちの貝にも合いますよ。」
それから醤油の瓶があちこちに飛び回っていた。
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