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第百三十四話
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海鮮を堪能して宿屋に帰る。食事は済ませて来たが喉が渇いたので食堂でエールを頼んだ。あまり客も居ないので情報収集をする。
「おばちゃん。この辺は小豆が沢山取れるって聞いたんだけど、どんな風に食べるの?」
「小豆は肉の煮込みに入れたり、雑穀粥にしたりするのが一般的だね。」
「甘味には使わないの?」
「小豆を甘味に?聞いた事無いね。」
そんな返事が返って来たので大福を1つ紙に包んで渡す。
「これ、小豆を使った甘味なんだけど、味見してみて下さい。」
「へぇ。他の町じゃこんな食べ方をするのかい?この白いもちもちしたのはなんだい?」
「外側の白いのはライスですよ。ライスもこの辺では食べないんですか?」
「ライスはやっぱり粥に入れる位だね。」
やはり雑穀扱いなんだな。おばちゃんが大福をじっくりと見てから口にした。
「これはもちもちに中の小豆が合うね。甘い小豆がこんなに美味しいなんて初めて知ったよ。」
「この町は塩は沢山取れる様ですが、砂糖は高いんですか?」
「そうだね、砂糖はやっぱり高いね。」
「じゃあ、あんまり甘味は普及してない?」
「そうだね。」
やはり、砂糖がネックらしい。砂糖大根から取れる砂糖をなるべく早めに普及させないとな。
その日は宿屋のベッドでゆっくりと寝た。
翌朝は7時前に起きて、町を散策した。小規模だが朝市もあった。見て回るがめぼしい物は無い。
結局はるばる来たが収穫は小豆だけだった。帰ろうかなと考え始めたら子供たちの声が聞こえる。
何だろう?この町やけに子供が多い気がする。そう言えば領都の子供たちはこの時間から教会で読み書き計算を教わっている。教会に行けば食事も食べられる。もしかしたら、この町にはそう言う施設が無いのだろうか?
こう言う時は本人に聞くのが早いだろう。子供たちに声を掛ける。
「なぁ、この町って教会無いのか?」
「うん。無いよ。」
「じゃあ、勉強は誰が教えてくれるんだ?」
「勉強?した事ないけど、面白いの?」
やはりこの町は見た目以上に貧しい様だ。めぼしい特産も無いし、塩だけでは町全体が潤う程は儲からないだろう。
「よし分かった。お腹減ってるか?」
「「「減ってるよ~」」」
「じゃあ、手伝え。美味い物食わせてやる。」
子供たちに手伝わせて簡単な屋台を作る。屋台と言ってもテーブルと椅子があるだけの青空屋台だ。その横にバーベキューコンロを出して炭をおこす。
子供たちに、無料で食事を振舞うから集まれと人を集めて来させる。その間に海に行って適当に食べれる魚を獲って来る。10分位でかなり獲れたこの海もすれて無い様だ。
人が徐々に集まって来たのでまずは焼き肉のタレに付け込んで置いた肉を焼く。かなり良い匂いがするので、皆が喉を鳴らす。続いて、ソースの掛かった海鮮ミックスフライや焼き魚、煮魚等を手際よく作って行く。出来たそばから子供たちに食わせて行く。子供たちは美味いうまいと美味しそうに食べるので人だかりが更に大きくなる。
子供たちがお腹いっぱいになったら大人の番だ。好きな物を好きなだけ食べてくれと言うと我先にと群がる。
やはり、焼き肉が一番人気だが、フライや魚も結構食べている人が居る。リュートは次々とフライを揚げ、魚を焼いたり煮たりしている。焼き肉は年長の子供に任せてある。かなり大量に仕込んであったアイテムボックス内の肉や魚が既に半分になっている。足りるかな?
子供たちのネットワークは思ったよりも強力な様だ。このままでは不味いので、おにぎりを投入する。これならば、腹持ちが良いので、大人の腹も満たせるだろう。
「こりゃあ、美味いな。兄ちゃんこの白いのなんだ?」
「それはライスウィードの実ですよ。そうやって食べるとパンの代わりになるでしょ?」
「あの雑穀がこんな美味くなるのか?」
「水加減を間違わなければなりますよ。」
みな、片手におにぎり、片手にフォークを持って、食事を堪能している。
3時間程で落ち着いて来たので、子供たちにおやつとして大福を配る。
「はい、これは頑張ってくれたお礼だよ。」
子供たちはお腹いっぱい食べたはずなのに、すぐに食べ始める。持って帰って食べて貰おうと思ったんだけどな。ま、いいか。
今回の無料食事配布でヒントは与えた。後はこの町の人々がそれを生かすかどうかだ。醤油や味噌は無理でも、魚料理に味付けが必要な事は解ったはずだ。それに、聡い者なら俺にコンタクトを取ってくるはずだ。
とりあえず、この町でやるべきことはやったはずだ、さて、帰ろうか。
帰りは転移で一瞬だ。我が家の目の前に飛んだ。やはり我が家は良いな。エリシアとルーイの寝顔を見てしみじみ思う。
さてと、早速餡子を仕込もう。
この日はミント達が遊びに来たので、白玉ぜんざいを振舞った。濃厚な甘さに皆感動していた。
小豆は確保したが、もち米がまだ安定供給出来ていないので、大福の量産、販売はまだ、行って居ない。もち米が安定して獲れる様になったら開始できるように準備だけはしてある。
砂糖はかなり安定して供給できるようになった。通常の砂糖の半値位で販売出来ているが、まだまだ需要はありそうだ。
今日はうなぎに挑戦してみようと思う。米は炊いてアイテムボックスにしまってある。タレも作って寝かせて置いた物がある。
問題は捌きだな。うなぎを1匹取り出してまな板にアイスニードルで目打ちする。布で滑らない様に抑え包丁を入れて行く。背開きで行ってみる。本当は素人ならカッターが良いらしいが、そんなものは無いので包丁を良く研いでおいた。一気に尻尾まで背骨に沿って引く。内臓を取り今度は背骨を外す。適当な幅に切り串を打ち、皮目に熱湯をかけぬめりを取る。炭火で白焼きにしてから、蒸す。そしてタレを付けて焼けばかば焼きの完成だ。
熱々のご飯にタレを回しかけ、かば焼きを乗せる。山椒は無いが、完成だ。
2つ作りエリシアと食べた。滅茶苦茶美味かった。成功だ。明日から店で出すためかば焼きの量産に入る。
4時間位かけて100枚程かば焼きを作ったら、手の感覚がおかしい。一応ヒールを掛けて置いた。
翌日の食堂のおすすめで、うなぎのかば焼き丼を出してみたが、どうもウナギと言う単語に拒否感があるようだ。20杯程度しか出なかったが、食べた人は全員絶賛していたので、その内定番メニューになるだろう。
しかし、この世界はスパイスが少なすぎる気がする。うなぎにはやはり山椒が欲しいし、山椒があれば麻婆豆腐が作れるのにな。ってあれ?豆腐作って無いぞ。つーか海に行ったのに海水取って来るの忘れた。海水があれば、にがりが作れるのに。でも、大豆は今の所醤油と味噌で全部使いきっているからな。豆腐は暫く無理かな?
話は若干ズレるが、この世界には日本の野菜に似た野菜が幾つかあるが、まったく無い物もある。その一つがもやしだ。そもそも、もやしは人工の野菜だ。大豆を日光に当てずに発芽させた物がもやしになる。なので、もやしが手に入らない。それからキャベツが無い。キャベツに似た野菜はあるのだが、生で食べるのに適していないのだ。なんと言うかエグみが強くて、青汁の原料のケールに似ている。そこで、味噌ラーメンの再現に苦労した。色々試した結果。ある食堂の野菜炒めが癖が無く美味かったのでレシピを教えて貰い。それを味噌ラーメンに乗せてみた。更に角煮と半熟煮卵を乗せた結果。美味い味噌ラーメンが完成した。
味噌ラーメンは今では、食堂でも1,2を争う人気メニューになっている。
「おばちゃん。この辺は小豆が沢山取れるって聞いたんだけど、どんな風に食べるの?」
「小豆は肉の煮込みに入れたり、雑穀粥にしたりするのが一般的だね。」
「甘味には使わないの?」
「小豆を甘味に?聞いた事無いね。」
そんな返事が返って来たので大福を1つ紙に包んで渡す。
「これ、小豆を使った甘味なんだけど、味見してみて下さい。」
「へぇ。他の町じゃこんな食べ方をするのかい?この白いもちもちしたのはなんだい?」
「外側の白いのはライスですよ。ライスもこの辺では食べないんですか?」
「ライスはやっぱり粥に入れる位だね。」
やはり雑穀扱いなんだな。おばちゃんが大福をじっくりと見てから口にした。
「これはもちもちに中の小豆が合うね。甘い小豆がこんなに美味しいなんて初めて知ったよ。」
「この町は塩は沢山取れる様ですが、砂糖は高いんですか?」
「そうだね、砂糖はやっぱり高いね。」
「じゃあ、あんまり甘味は普及してない?」
「そうだね。」
やはり、砂糖がネックらしい。砂糖大根から取れる砂糖をなるべく早めに普及させないとな。
その日は宿屋のベッドでゆっくりと寝た。
翌朝は7時前に起きて、町を散策した。小規模だが朝市もあった。見て回るがめぼしい物は無い。
結局はるばる来たが収穫は小豆だけだった。帰ろうかなと考え始めたら子供たちの声が聞こえる。
何だろう?この町やけに子供が多い気がする。そう言えば領都の子供たちはこの時間から教会で読み書き計算を教わっている。教会に行けば食事も食べられる。もしかしたら、この町にはそう言う施設が無いのだろうか?
こう言う時は本人に聞くのが早いだろう。子供たちに声を掛ける。
「なぁ、この町って教会無いのか?」
「うん。無いよ。」
「じゃあ、勉強は誰が教えてくれるんだ?」
「勉強?した事ないけど、面白いの?」
やはりこの町は見た目以上に貧しい様だ。めぼしい特産も無いし、塩だけでは町全体が潤う程は儲からないだろう。
「よし分かった。お腹減ってるか?」
「「「減ってるよ~」」」
「じゃあ、手伝え。美味い物食わせてやる。」
子供たちに手伝わせて簡単な屋台を作る。屋台と言ってもテーブルと椅子があるだけの青空屋台だ。その横にバーベキューコンロを出して炭をおこす。
子供たちに、無料で食事を振舞うから集まれと人を集めて来させる。その間に海に行って適当に食べれる魚を獲って来る。10分位でかなり獲れたこの海もすれて無い様だ。
人が徐々に集まって来たのでまずは焼き肉のタレに付け込んで置いた肉を焼く。かなり良い匂いがするので、皆が喉を鳴らす。続いて、ソースの掛かった海鮮ミックスフライや焼き魚、煮魚等を手際よく作って行く。出来たそばから子供たちに食わせて行く。子供たちは美味いうまいと美味しそうに食べるので人だかりが更に大きくなる。
子供たちがお腹いっぱいになったら大人の番だ。好きな物を好きなだけ食べてくれと言うと我先にと群がる。
やはり、焼き肉が一番人気だが、フライや魚も結構食べている人が居る。リュートは次々とフライを揚げ、魚を焼いたり煮たりしている。焼き肉は年長の子供に任せてある。かなり大量に仕込んであったアイテムボックス内の肉や魚が既に半分になっている。足りるかな?
子供たちのネットワークは思ったよりも強力な様だ。このままでは不味いので、おにぎりを投入する。これならば、腹持ちが良いので、大人の腹も満たせるだろう。
「こりゃあ、美味いな。兄ちゃんこの白いのなんだ?」
「それはライスウィードの実ですよ。そうやって食べるとパンの代わりになるでしょ?」
「あの雑穀がこんな美味くなるのか?」
「水加減を間違わなければなりますよ。」
みな、片手におにぎり、片手にフォークを持って、食事を堪能している。
3時間程で落ち着いて来たので、子供たちにおやつとして大福を配る。
「はい、これは頑張ってくれたお礼だよ。」
子供たちはお腹いっぱい食べたはずなのに、すぐに食べ始める。持って帰って食べて貰おうと思ったんだけどな。ま、いいか。
今回の無料食事配布でヒントは与えた。後はこの町の人々がそれを生かすかどうかだ。醤油や味噌は無理でも、魚料理に味付けが必要な事は解ったはずだ。それに、聡い者なら俺にコンタクトを取ってくるはずだ。
とりあえず、この町でやるべきことはやったはずだ、さて、帰ろうか。
帰りは転移で一瞬だ。我が家の目の前に飛んだ。やはり我が家は良いな。エリシアとルーイの寝顔を見てしみじみ思う。
さてと、早速餡子を仕込もう。
この日はミント達が遊びに来たので、白玉ぜんざいを振舞った。濃厚な甘さに皆感動していた。
小豆は確保したが、もち米がまだ安定供給出来ていないので、大福の量産、販売はまだ、行って居ない。もち米が安定して獲れる様になったら開始できるように準備だけはしてある。
砂糖はかなり安定して供給できるようになった。通常の砂糖の半値位で販売出来ているが、まだまだ需要はありそうだ。
今日はうなぎに挑戦してみようと思う。米は炊いてアイテムボックスにしまってある。タレも作って寝かせて置いた物がある。
問題は捌きだな。うなぎを1匹取り出してまな板にアイスニードルで目打ちする。布で滑らない様に抑え包丁を入れて行く。背開きで行ってみる。本当は素人ならカッターが良いらしいが、そんなものは無いので包丁を良く研いでおいた。一気に尻尾まで背骨に沿って引く。内臓を取り今度は背骨を外す。適当な幅に切り串を打ち、皮目に熱湯をかけぬめりを取る。炭火で白焼きにしてから、蒸す。そしてタレを付けて焼けばかば焼きの完成だ。
熱々のご飯にタレを回しかけ、かば焼きを乗せる。山椒は無いが、完成だ。
2つ作りエリシアと食べた。滅茶苦茶美味かった。成功だ。明日から店で出すためかば焼きの量産に入る。
4時間位かけて100枚程かば焼きを作ったら、手の感覚がおかしい。一応ヒールを掛けて置いた。
翌日の食堂のおすすめで、うなぎのかば焼き丼を出してみたが、どうもウナギと言う単語に拒否感があるようだ。20杯程度しか出なかったが、食べた人は全員絶賛していたので、その内定番メニューになるだろう。
しかし、この世界はスパイスが少なすぎる気がする。うなぎにはやはり山椒が欲しいし、山椒があれば麻婆豆腐が作れるのにな。ってあれ?豆腐作って無いぞ。つーか海に行ったのに海水取って来るの忘れた。海水があれば、にがりが作れるのに。でも、大豆は今の所醤油と味噌で全部使いきっているからな。豆腐は暫く無理かな?
話は若干ズレるが、この世界には日本の野菜に似た野菜が幾つかあるが、まったく無い物もある。その一つがもやしだ。そもそも、もやしは人工の野菜だ。大豆を日光に当てずに発芽させた物がもやしになる。なので、もやしが手に入らない。それからキャベツが無い。キャベツに似た野菜はあるのだが、生で食べるのに適していないのだ。なんと言うかエグみが強くて、青汁の原料のケールに似ている。そこで、味噌ラーメンの再現に苦労した。色々試した結果。ある食堂の野菜炒めが癖が無く美味かったのでレシピを教えて貰い。それを味噌ラーメンに乗せてみた。更に角煮と半熟煮卵を乗せた結果。美味い味噌ラーメンが完成した。
味噌ラーメンは今では、食堂でも1,2を争う人気メニューになっている。
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