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第百四十六話

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 忙しくも充実した日々を送っていたリュートであるが、突然、冒険者ギルドから呼び出しがかかった。

 ギルドへ着くとギルマスの部屋へと通される。

「久しぶりだな。月に一度は素材を持ち込んでいると聞いて居る。腕は落ちて無いだろうな?」

「どうかな?俺は冒険者は引退しているからな。」

「引退してもギルドの所属を抹消した訳では無いんだろう?」

「まあ、ギルドカードは色々と便利だからな。」

「相談と言うか、頼みがある。西へ5キロ程行った場所からやや南に降りた場所にダンジョンが生まれた。今ならまだ深く無いだろう。ダンジョンの核を壊してその存在を消して欲しい。」

「ほう?新しいダンジョンか、上手く利用すれば町の発展に繋がるのでは無いか?」

「それは我々も考えたのだが、出て来る魔物が悪い。アンデット系がメインだ。」

「なるほど、それは厄介だな。」

「うむ、アンデット系の魔物は大した素材が取れない上に光り魔法が無いと苦戦するからな。あそこに挑もうとするものは少ないはずだ。」

「報酬は?」

「今、ギルドは潤って居る。白金貨20枚出そう。」

 正直リュートにとっては白金貨20枚は大した額では無い。だがギルマスに恩を売って置くのは悪く無いだろうと考えている。

「解った。なるべく早く行ってみるよ。」

「そうか?助かる。すまんな他に頼れる者が思いつかなくて。」

 ギルドを出るとすぐにリュートはダンジョンへと向かう。特に準備は必要ない。大抵の物はアイテムボックスに入っている。

 西へ向かって歩き、人気が少なくなったところでフライで飛ぶ。上空からサーチを掛けているとすぐにダンジョンは見つかった。ダンジョンの入り口には2名の兵士が経っているので少し手前で降りる。

 ダンジョンに近づくと兵士が身構える。

「あー、冒険者ギルドの依頼で調査に来たんだが、立ち入り禁止なのか?」

「いや、そうでは無い。この中にはアンデットが多い。興味本位ならやめて置けと言おうとしただけだ。」

「ちなみに何階層まで確認されているんだ?」

「3階層までだな。それ以降は何も分からない。」

「若いダンジョンなんだろう?」

「そうだ、発見されて、まだ2週間と言った所だ。」

「解った。とりあえず調査が目的なので無理はしないつもりだ入れてくれ。」

「名前は?」

「リュート。」

「竜砕きのリュートか?」

「まあな。」

 そう言ってダンジョンに踏み込んだ。

 ダンジョン内は薄暗い。若干ではあるが壁が発光しているが、これでは相手に有利過ぎるだろう。リュートはライトの魔法で周囲を明るくする。

 そう言えばダンジョンに潜るのは初めてだな。そんな事を思いながら進んで行くと、ゾンビが現れる。何故かスライムも一緒だ。アンデットと通常の魔物が共存しているのは珍しいと言えるだろう。

 ここは剣で対処していく。ゾンビは動きが遅いのでそれほど難しくはない。スライムは無理に倒さなくても蹴飛ばせば何処かへ飛んで行く。

 出来たばかりのダンジョンでは宝箱は期待できない。宝箱は多くの冒険者が訪れるダンジョンで見つかるものだ。基本、亡くなった冒険者の遺品が宝箱の中身になると言うのが通説である。

 出来たばかりと言う割には1階層目から結構広い。広いがマップは単純だ。何処を通っても行き止まりにはならず、2階層目の階段に続いている様だ。1階層にはゾンビとスライム、そしてたまにスケルトンが現れるくらいだ。これなら、Bランクの冒険者でもパーティーを組めば問題無いだろう。

 1階層には階層ボスが居ないらしい。2階層への階段を見つけたので降りて行く。

 2階層はスケルトンがメインだ。ここにも相変わらずスライムがいる。スケルトンはゾンビより若干動きが早い、そして武器を使う。厄介ではあるが、勝てない程早くも強くも無い。スライムが邪魔なだけだ。

 リュートはスライムを蹴飛ばしながら、スケルトンを屠って行く。ちなみにアンデットが出るダンジョンは臭いと言われるがここはそれ程でもない。多分スライムが空気を浄化しているのでないかと推測する。

 時々グールが混じって出て来る。多分3階層の魔物だろう。

 2階層にもボス部屋は無かった。リュートは3階層へと向かう。3階層は思った通り、グールがメインだ、この辺からBランクではキツくなりそうだ。Aランクパーティーなら行けるかどうかと言った感じだな。相変わらず、スライムが邪魔だ。この階層ではレイスが出た。なるほど、こいつが出るなら光魔法が必要だな。

だが、このレベルなら回復魔法でもダメージを与えられるんじゃないか?試しにヒールを掛けるとレイスが苦しむ。4回ヒールを掛けたらレイスが消えた。レイス1匹にヒール4回か、並の魔力量では確かにキツいかもしれん。

 4階層はレイスがメインになる。ある程度まとめてから、光魔法で倒して行く。スライムは無視だ。しかし、ここの階層ではレイス以外の魔物が出て来ない。もしかしたらと思いつつ進むとボス部屋があった。

 ボス部屋は入ったら最後、倒すか倒されるまで出て来れない。倒される=死なので、気を引き締める。

 ボス部屋の扉を開く、中には何も無い。ボス部屋の扉が勝手に閉まり。リッチとレイス2体が現れる。

 リッチがこんなに低い階層で出るのか?確かにこれは危ないな。リッチは魔法を使うゾンビの様な物だが知性が高いと言う話もある。

 リュートは光属性の浄化魔法を放つ。レイスは1瞬で消し飛んだが、リッチは耐えている。耐えながら何か魔法を撃つ気配がしたので魔力をぶつけて打ち消したら諦めたのか大人しく消えてくれた。

 ボスを倒すとボス部屋の奥に扉が開き下へ降りる階段が現れる。

 5階層へと降りた。5階層の敵はヴァンパイアだった。ある意味リッチより厄介な敵だ。しかし、ここでヴァンパイアが出ると言う事は、ここが最下層なのかもしれない。そして、この階層にもスライムが居る。これは何を意味しているのだろうか?

 ヴァンパイアは手ごわいが弱点の多い魔物でもある。銀の針を飛ばしながら、浄化を掛けて先へと進む。無理に倒す必要は無い一時的に動きを止めてくれれば構わない。やがて、ボス部屋が見えて来る。多分、あいつだろうなと思いつつ扉を開ける。思った通りボスはノーライフキングだ。不死の王と呼ばれる魔物だ。こいつは厄介だなと思いつつも対策は幾つか考えてある。

 まず、浄化魔法を通常の倍の魔力量でぶつけてみるが、ノーライフキングは耐えきった。しかも、ノーライフキングはデスと言う確率は低いが1発死の魔法をかけてくる。まあ、俺は半神なのでその魔法は無効なんだけどね。

 アイテムボックスから取り出して置いた。青い液体の入った小瓶を握りしめ転移でノーライフキングの真後ろを取る。頼む効いてくれと願いつつエリクサーをノーライフキングにぶつけた。小瓶は割れ中の液体がノーライフキングの体にかかる。

 ノーライフキングは苦しみながら消えて行った。

 終わりか?と思った時6階層への階段が見えた。

 あれ?ここが最下層じゃないの?

 下へ降りると敵が居ない。しかも1本道だ。まっすぐな道を進むとボス部屋の扉。ん?ここには何が居るんだ?

 扉を開けると中央に何やら玉座の様な物があり、そこに水晶玉の様な物が置かれている。どうやらあれがダンジョン核らしい、あれを壊せば任務完了だ。そう思って進むと後ろで扉の閉まる音がした。

 現れたのはスライムだった。え?ラスボスがスライムなの?ってただのスライムじゃ無いよな?

 スライムは以上にスピードが速い。剣を抜き、突進してくるスライムに合わせて剣を置くとスライムが突っ込んで真っ二つになる。が、スライムが2匹になっただけでダメージが無い。あら?これは不味いぞ。確かスライムは核を壊さない限り死なないんだっけ?って核見えないし。魔法で色々と攻撃を試すが、スライムが増えるばかりだ。半透明のスライムを観察するがやはり核は見つからない。どう言う事だ?

 重力魔法でスライム達を押しつぶし一時的に動きを封じる。その間に対処法を考える。

 って言うか、これって倒さなくても良いのでは?ダンジョン核目の前にあるし、これを持って転移すれば良いのでは?

 瞬時に動きダンジョン核に触れて地上に転移する。入り口を見張っていた兵士達が驚いている。

「調査は終わったので帰りますね。」

 挨拶をして帰る。少し離れた所まで行き、冒険者ギルド前に転移する。

 ギルドに入りギルマスに取り次いで貰う。

「どうした?何か忘れ物か?」

「いや、これを届けに来ただけだ。」

 そう言ってギルマスの手にダンジョン核を握らせる。

「これって、まさか?」

「ダンジョン核だよ、抜いて来たからあのダンジョンはもうすぐ死ぬだろう。」

「おいおい、無傷のダンジョン核ってどれだけのお宝か知ってるのか?」

「知らんが、高いのか?」

「最低でも白金貨1000枚はするぞ。オークションに出せば、自分の町をダンジョンで潤したい町がこぞって競って、白金貨2000枚位に上がる事もある。」

「ほう?俺は金に困って無いから、それはギルドで有効に使ってくれ。」

「良いのか?」

「構わん。久しぶりに良い運動になったしな。」
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