【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第4章 竜は泉で静かに踊る

第2話 リョウの存在感

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 宿は2部屋取り、女子組の広い部屋とリョウの狭い個室を確保した。

 そんでもって、予定通りに食事にお風呂だ。
 宿の近くの食事処で席に着くと早速注文。
 宿もギリギリ取れたが、ここも混んでいるなあ。
 旅人や冒険者、商人風の人たちで混み合っていた。

「ファインダ王国とベルガー王国の国交が回復したからか、賑やかですね」

「いいことですが、まだ両国間には溝が深いです。10年間で色々ありましたから」

 フィーリアとヴィレッタが、お店の中を見渡して口にした。

「まあ、一触即発の雰囲気じゃないし大丈夫でしょ。サリウス叔父さんは国内で手一杯だし、ラインハルト王も英雄王って呼ばれるくらい人格は優れているっていうし」

 そんな私の楽観的な発言に、フィーリアは同意するように頷いてくれた。

 ベルガー現国王は私の叔父。ファインダ現国王の王妃は私の叔母である。
 私の母、ベルガー王国の先王妃ローラはファインダ先王の第一王女だったのだ。

 その関係で私はある程度、ファインダの内情にも詳しい。

「ローゼは王都リオーネで、ラインハルト王に会う気なのか?」

「う~ん。ヴィレッタがいるから、会おうと思えば会えると思うけど、特にはいいかな。ベルガーでもそうだったけど、権力が絡むと面倒だし」

 私はリョウに聞かれて、思っていることを返答した。

 ファインダ王国は、近年大陸の中でも最も平和で、民衆が暮らしやすい国と評判だ。
 治安も良好で貴族による横暴も少ない。

 ラインハルト王や王妃マーガレット、私の一つ年下の王女レオノールに悪い評判は皆無。
 ただ、レオノール姫は『脳筋姫』と呼ばれるじゃじゃ馬っぷりで、貴族を振り回しているらしいけど。
 従姉妹なのに、私と全然似てなさそう。

「ローゼさんを利用して、ラインハルト王に喧嘩を売る人はいないと思うっすけどね。ベルガー王国領と違って、ローゼさんを担ぎ上げようって考える人物は皆無と思うっすよ」

 フィーリアが料理を頬張りながら呟いた。

「ただ、英雄王と呼ばれていてもファインダの王です。自国のためにローゼを利用して、ベルガー王国との交渉を有利に進めるかもしれません」

 ヴィレッタが真剣な顔で私に視線を向けてくる。

「人間の世界ってめんどくさいわねえ。みんな、ローゼなら単純になるのにね♪」

 食後の満足感に浸りながらベレニスが言うけど、おにょれどういう意味じゃ?

「ま、まあ、なるようになるかな? みんなと一緒だし大丈夫だって♪」

 私はそう言って、デザートであるケーキをパクリと一口頬張る。

「邪教を追い、シャルロッテ様の行方を探る旅路です。目立つ戦いをすれば、この国も私たちの存在に奇異の目を向けるでしょう。その点は、念頭に置いて下さいませ」

 ヴィレッタは全員を見つめてそう告げる。

 シャルロッテ・ルインズベリー。
 私たちが探している人物で、私とヴィレッタの幼馴染の公爵令嬢。

 今からひと月以上前に起きた邪教との戦いで、ベルガー王国4大公爵家の一つルインズベリー家の王都邸宅は、人を魔獣に変える実験台の舞台にされ全滅した。

 教会に潜伏していた邪教の魔女、ジーニア・クレッセントによって引き起こされた惨劇。
 この戦いで、リョウは同じアラン傭兵団の先輩と戦って喪い、ヴィレッタはメイド兼姉のような存在だったエマさんを喪った。
 そして、その戦いによって連れ去られたシャルロッテを探す決意を胸に秘め、旅をしているのだ。

 ファインダ王国に来た理由は、リョウが追う復讐相手が邪教と関係している可能性があり、情報を集めていた人物から、その人物がファインダ王国にいるという情報を得たため。

 正直、雲を掴むような話だし、当てもなく手掛かりもない。
 他にわかっているのは、邪教は6人の魔女に統括されていて『真実の眼』と名乗っていることだけ。

 今は、一つ一つ手掛かりや情報を集め、シャルロッテの行方を捜索している。

 うん、なかなかに無茶な旅路だ。
 でも向こうも、リョウを英雄の器と見て命を狙っているし、私を魔王の器として欲している。
 旅路を続けていれば、向こうから仕掛けてもくるだろう。
 その発端を見逃さないように注意しないといけない。

 食事とお風呂にも入って、ショッピングでラフィーネの街を散策する私たち。

 服屋に魔導具店にアクセサリーショップと、興味を惹かれた所にどんどん入る。

 服屋では、ヴィレッタが私、フィーリア、ベレニスをコーディネートして目を光らせて。

 魔導具店では、色とりどりの魔石が並ぶ棚の前でフィーリアが目を輝かせ、専門的な質問を店主に投げかけて。

 ベレニスはアクセサリーショップで、エルフの耳に似合う繊細な細工のイヤリングを熱心に品定めして。

 女子が4人もいれば、当然お喋りが盛り上がるわけで会話も途切れない。

 そんなこんなで日が暮れ始め、冷えた空気が肌を刺すようになり、行き交う人々の吐く息が白く霞んでいる中で、最後に下着屋さんに寄った時だ。

 街はランプの灯りでオレンジ色に染まり、下着屋さんの店主は早く帰ってくれないかなあという雰囲気を出している中。

「やっぱりお買い物は楽しいわね♪ 傭兵も来ればよかったのに♪」

 ベレニスがちょっとHな下着を物色しつつ呟いて。

「まあリョウ様は、いても自分らの女子トークについていけないっすからねえ。少しは会話スキルを磨いてほしいっすがねえ」

 フィーリアが苦笑しながら応えて。

「リョウ様は、お洒落にも興味なさそうなのがマイナスです。殿方のセンスは理解できません」

 ヴィレッタが心底呆れながらそう呟いた。

 そんな3人の会話を聞いた私は、リョウに視線を移す。

 リョウは、自分がいない扱いをされていたのにはショックを受けたらしく、コホンと咳払いをしたのだった。

「うわっ! リョウ様いつからいたんすか?」

「キモッ……さすがムッツリね。女の子の下着コーナーに聞き耳を立てていたの? 信じられないわ」

「……心臓が止まるかと思いました。リョウ様、驚かさないでくださいまし」

 なんて言う3人の反応に私がきょとんとして。

「いや……ずっといたんだが?」

 やや怒り気味でリョウが言い、みんなの頭の中は⁉ な状態になった。

 しょうがないなあ。
 リョウをフォローするのは私の役目だしね♪

「うん、最初からいたよ。服屋では男性用の冬服コーナーを見てたら、睨んでいる客がいると店員さんに囲まれて慌てていたよ。魔導具店では使い方がわからんとか呟いて、なんかイジっていたら爆発させて店員に奥の部屋に連れて行かれていたし。それからアクセサリーショップに行く途中で強風が吹いたでしょ? あの時、スカートを抑えた私たちを見て慌てて首を捻ったら、強面の冒険者風のおっさんに何ガンくれてんだと絡まれて連れて行かれていたし。ここの下着屋さんでは、普段ただの布切れだろ? とか言っているくせに、顔を赤らめていたのはさすがに私もどうかな? とは思ったけど」

 私はリョウの行動を指折り数えながら教えてあげた。

「な? 最初からいたよな俺?」

 リョウはうんうん頷いているが、あれ? ヴィレッタは目を丸くして、ベレニスは口を半開きにしたまま固まり、フィーリアは額に手を当てて深いため息をついたんですけど⁉

「ローゼ……今度はさりげなくリョウ様を会話に誘導するようにお願いします」

「ローゼがよく観察しているというか、なんて言うか……まあ傭兵が悪いでいいわ」

「……そっすねえ。リョウ様、ドンマイっす」

 あれ? 私、なんか間違った?
 なんでみんなドン引きしているの?

 まあ、そんな一幕もありつつ私たちは宿へと戻ろうとしたんだが……

「魔獣だ! 魔獣の群れがこっちに向かっているぞ‼」

 という外からの叫び声と、街の住民の悲鳴が聞こえてきた。
 私たちは顔を見合わせ、頷き合って走り出したのであった。
 
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